「想像を絶する悲惨な事態」ユニセフ広報官、ガザの惨状報告 【プレスリリース】

【2025年9月4日 マワシ(ガザ)発】
ユニセフ(国連児童基金)広報官のテス・イングラムは国連の定例記者会見において、ガザの惨状についてオンラインで報告し、以下のとおり発言しました。
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ガザ地区北部の家族にとって最後の避難所であるガザ市は、急速に子どもが生き延びられない場所となりつつあります。ここは恐怖と逃亡、葬送の街です。
ガザ市への軍事攻撃の激化は、その場所に留まっている約100万人の人々に大惨事をもたらすと、世界が警鐘を鳴らしています。これは想像を絶する悲劇です。私たちは、あらゆる手段を尽くして防がねばなりません。しかし、その事態が起きるまで待つことはできません。
私はガザ市に9日間滞在し、恐怖から家を追われた家族に会いました。すでに避難していた人々が、再び避難を余儀なくされ、着の身着のままでガザ市に到着したのです。混乱の中で、親と離ればなれになった子どもたちにも会いました。飢えにより子どもを失った母親たち。次は、我が子が犠牲になるのではないかと恐れる母親たち。破片により小さな体を傷つけられ、病院のベッドで過ごす子どもたちとも話しました。
この、想像を絶する事態は、今迫りつつあるのではありません。すでに存在し、激化している最中です。
不可欠なサービスが崩壊し、最も幼く、最も弱い立場にあり、生き延びるために必死の闘いを強いられている子どもたちが取り残されています。ガザ市内でユニセフが支援する92の外来栄養治療センターのうち、現在機能しているのはわずか44カ所です。何千人もの栄養不良の子どもにとって、飢えと闘うために頼りにしてきた命綱の半数以上が失われているのです。

栄養不良と飢きんが子どもたちの身体を衰弱させ、避難が彼らから住まいとケアを奪い、爆撃が彼らのあらゆる行動を脅かしています。これが戦地における飢きんの実態であり、ガザ市のどこを見渡してもこの光景が広がっていました。
栄養治療クリニックで1時間過ごせば、飢きんが起きているかどうかという疑問はすぐに消え去ります。人であふれる待合室、涙を流す親たち、病気と栄養不良の二重の打撃と闘う子どもたち、母乳をあげられない母親たち、視力や髪の毛、歩く力を失っていく幼児たち―。
状況は常に同じです。地域の炊き出しで提供される1日1皿の食事は、ほとんどがレンズ豆か米ですが、それを家族みんなで分け合い、親は子どもに食べさせるため自分の食事は抜きます。栄養は摂れません。それ以外の選択肢もありません。支援は乏しく、市場で売られる食料は高すぎるのですから。

私は先週、重度の栄養不良の子どもが治療を受けるガザ市内の病院にある安定化センターを訪れました。そこで、ネズマと娘のヤナがそこにいるのを見つけ、衝撃を受けました。私が初めて2人に会ったのは2024年4月、ヤナが初めて栄養不良状態に陥った時でした。私たちの任務は、救急車でヤナをガザ北部から南部へ移送し、治療ケアを受けさせることでした。当時、ガザ北部は南部とほぼ分断されており、ヤナのような子どもたちが十分な食料を得られずに苦しんでいました。
ネズマは私に、その後のことを話してくれました。南部での治療ケアによってヤナは回復し、今年初めの停戦によりネズマたちは北部に戻ることができ、残りの家族と再会しました。しかしその後、支援物資の遮断と飢餓が再び襲い、ネズマの二人の子どもの状態が悪化しました。2歳のジューリは栄養不良によって先月亡くなり、ヤナはかろうじて命をつないでいます。
ガザ地区での惨状が長引き、食料や安全な水、その他の必要不可欠な物資が依然として不足していることから、ヤナのような子どもたちは、栄養不良の治療ケアを終えてからわずか数週間後に、再び救急治療室に戻ったり、症状が再発したりしています。
食料と栄養治療ケアの提供が、即時に、かつ拡大されなければ、この繰り返される悪夢はさらに深刻化し、より多くの子どもが飢えに苦しむことになります。この運命は、完全に防げるものなのです。
ネズマは私にこう話しました。『ジューリを失った痛みを再び味わいたくありません。これは、どんな母親にとっても耐えがたい痛みです。育て上げた我が子を腕の中で失う経験に、打ちのめされました。どうか、ヤナまで失わせないでください。それだけは耐えられないのです』
ユニセフはガザで支援を継続しています。北から南まで支援物資を届け、サービスを提供しています。
私たちは飢きんと闘っています。過去2週間だけで、栄養不良の子ども3,000人以上に6週間の治療を行うのに十分な、すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)をパートナー団体に供給しました。
また、今後2週間分として、1,400人以上の乳児への補完食と、4,600人の妊婦および授乳中の女性への高エネルギービスケットを提供しました。

これに加え、安全な飲料水の供給、仮設学習センターの建設、保護者のいない子どもなど弱い立場にある子どもたちに対する子どもの保護ケースマネジメント、家族への現金給付、病院における乳児用救命機器の支援、メンタルヘルス支援セッション、ゴミ収集などの支援を提供しています。
ユニセフのチームは、子どもを守るために全力を尽くしていますが、もし現地での支援を拡大させ、十分な活動資金を得ることができれば、今よりもはるかに多くのことを成し遂げ、この地にいるすべての子どもたちに手を差し伸べることができるのでしょう。
パレスチナの生活が着実に、しかし確実に崩されつつあります。ガザの子どもたちの苦しみは偶然ではありません。これまでの選択の直接的な結果として、ガザ市、ひいては地区全体は、人々の暮らしが毎日、あらゆる方向から脅かされる場所に変わってしまったのです。
例えば、ガザ市の病院は限界に達しています。部分的に機能している11の病院のうち、新生児集中治療室を稼働しているのはわずか5施設です。これらの施設に設置された40台の保育器は最大200%の稼働率、つまり80人もの乳児が過密状態の保育器内で、発電機と、いつ尽きてもおかしくない医療物資に完全に依存し、命をつないでいます。避難命令下で、彼らはどうやって生き延びるというのでしょうか。
この情報は全く新しいものですが、私は、まるで皆さんが既に知っていることを伝えているように感じます。なぜなら私たちは以前にもラファで、ハンユニスで、北部で、同じ光景を目にしてきたからです。いわゆる“安全地帯”であるマワシが安全ではないことは、ずっと以前から知られていました。子どもたちが眠りについている間に殺されたり、傷つけられたりしているのです。それも、ほぼ毎晩のように。
月曜の夜に傷つけられたのは、ムナでした。ムナは、母親と2歳の弟、8歳の姉を亡くした空爆から生き延びました。私は翌日に、ガザ市の病院で彼女に会いました。爆発による負傷で腹部手術を受け、左脚を切断した直後でした。13歳のムナは、私にこう言いました。『すごく痛かった。でも自分の脚のことは悲しくない。ママを失ったことが悲しいの』
ユニセフは引き続き、イスラエルに対し、国際人道法に基づいて子どもを保護するため、交戦規則の見直しを求めています。ハマスやその他の武装勢力には、残るすべての人質の解放を求めています。加えてイスラエルに対し、ガザへの十分な支援物資の搬入を許可し、人道支援関係者が、たとえ家族がどこにいようとも命を守る支援を届けられるよう、安全かつ継続的なアクセスを許可するよう求めています。
そして双方に、避難命令下にある人々を含む民間人を保護することを求めています。人々は、安全な場所へと移動する自由が保障されており、移動を強制されることは決してあってはなりません。さらに、病院、避難所、学校、水道システムなど必要不可欠なインフラの攻撃からの保護と、停戦の再開を求めています。
そして最後に、国際社会、特に影響力を持つ国や関係者に、この事態を終わらせるためにその力を行使することを求めます。もし今でなければ、一体いつ行動するのでしょうか。
なぜなら、何もしないことの代償は、がれきに埋もれた子ども、飢餓で亡くなった子ども、声を上げる機会すら与えられずに沈黙させられた子どもの命で計られることになるからです。
ガザ市では、想像を絶する事態がすでに始まっているのです。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )
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