ロヒンギャ難民の子どもと若者 資金難による深刻な影響 徴用・早婚・搾取・栄養不良のリスク 【プレスリリース】

公益財団法人日本ユニセフ協会

コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプにある学習センター。児童婚や、武装集団による徴用から子どもたちを守るため、学校に戻れるように支援している(バングラデシュ、2025年8月20日撮影) © UNICEF/UNI866953/

【2025年10 月14日 ジュネーブ発】

バングラデシュのコックスバザールにあるロヒンギャ難民キャンプで暮らす子どもたちの状況について、現地を訪れたユニセフ(国連児童基金)民間支援企画調整局長のカーラ・ハダッド・マルディニが本日、ジュネーブで行われた国連の定例記者会見にて、以下の発言を行いました。

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バングラデシュのコックスバザールにある難民キャンプでは今、資金難がロヒンギャの子どもたちのために積み上げてきた長年の進歩を消し去ろうとしています。私は先週現地に行きましたが、教室が閉鎖され、支援サービスが縮小され、何十万人もの子どもの未来が風前のともしびの状態にあるのを見て胸が痛みました。

世界的な支援資金不足が子どもたちにどれほど深刻な影響を与えているかを目の当たりにしました。ユニセフはパートナーとともに、1ドルたりとも無駄にせず最大限に活用しようと、あらゆる努力を行っていますが、もはやもう打つ手が限られてきています。教育や水と衛生に関する支援が特に大きな打撃を受けています。

コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプで、学習センターを訪問するユニセフのマルディニ民間支援企画調整局長(バングラデシュ、2025年10月8日撮影) © UNICEF/UNI878449/Mukut

この非常に大規模な難民キャンプでは、女性や子どもの保護サービスが中断されています。最近のデータによると、武装グループによる子どもの徴用が今年685件報告され、2024年全体の5倍以上となっています。そして、今年はまだ終わりを迎えていません。

 

来年はさらに悲惨な状況になることが予想されます。ロヒンギャ難民支援全体は、2026年初頭にいわゆる“資金の崖”に直面する見込みです。私たちはこの崖に向かって猛スピードで進んでおり、最悪の場合、すでに不足している拠出金がさらに半減する可能性があると予測しています。支援の効率化、プログラムの統合、現地化などのコストカットによって数千万ドルを節約しても、このように急激な資金減は補いきれないのです。

 

難民キャンプ内の幼稚園や小学1年生の学習施設は閉鎖されたままで、幼い子どもたちは学校に通えず、教育の機会を奪われています。若者向けの職業訓練センターは次々と閉鎖され、10代の子ども・若者は徴用、搾取、虐待、そして治安悪化のリスクにさらされています。

 

これらは単なる数字ではありません。警鐘なのです。より簡素で効率的な対応だけでは、命を守る支援を維持するのに必要な資源を補うことはできません。

 

難民キャンプで私は14歳のサルマさんに会いました。彼女は18人のクラスの中でたった3人しかいない女子生徒の1人です。ミャンマーの教育課程で学べるようになったことを誇りに思っていると話してくれました。彼女の両親や友人はそんなことは不可能だと思っていました。この進展は、地域社会との長年にわたる対話と信頼構築の末にようやく得られたものですが、今それが失われる危機に瀕しています。

 

ユニセフだけでなく現地のすべてのパートナーが非常に困難な選択を迫られる中、私たちはサルマさんのような10代の子ども・若者の教育のため、そして彼らの保護のために、授業を再開することを優先してきました。安全な居場所がないとき、10代の子ども・若者はより高いリスクに直面します。私は子どもたち自身から、児童労働、早婚、搾取のリスクについて直接聞きました。

コックスバザールにあるロヒンギャ難民キャンプ。50万人以上の子どもを含む100万人以上が暮らしている(バングラデシュ、2024年7月16日撮影) © UNICEF/UNI622233/Njiokiktjien

 先週、低学年の子どもの授業を再開することができ、希望の瞬間が訪れました。しかし、幼稚園と小学1年生の教室は閉鎖されたままで、来年も既存のプログラムを継続できるかどうかは不透明です。すでに家も、友だちも、日常も失った子どもたちにとって、この不確実な状況は耐えがたいものです。

 

15歳のモハマドさんは、学校が閉鎖されたとき、もう再開されることはないと思ったと語りました。彼は年老いた両親を助け、きょうだいの世話をするために家にいるようになりました。「毎朝、ほかの子どもたちが学校へ向かうのを見て、自分の子ども時代が終わったように感じます」と彼は言いました。

 

難民キャンプ内で、家族は同じような絶望を感じています。ユニセフが支援する栄養センターにいた母親たちが口にしたのは、食料支援が減少し、せっけんや清潔な水が足りないことでした。子どもの病気や栄養不良が増加の一途をたどっています。重度の急性栄養不良は、危機の最盛期であった2017年以来、最も高い水準に達しています。

 

これは教育の緊急事態にとどまりません。子どもの保護と生存の危機です。国際社会の意思が試されているのです。私たちは、公共・民間セクターのあらゆる場面で、この状況を繰り返し訴えています。予測可能で柔軟な資金がなければ、学校に通えない子ども、栄養不良の子ども、早婚を強いられる女の子、そして未来への希望を失う若者がさらに増えることになるでしょう。

 

ユニセフは、ロヒンギャ難民キャンプにとどまり、支援を届けます。しかし、それを続けられるかどうかは、すべて任意の資金提供にかかっています。私はバングラデシュの訪問を終えて、たとえこの問題が報道されないとしても、子どもたちの状況を伝える責任が私たちにはある、という思いをさらに強くしました。

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(https://www.unicef.or.jp )

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会社概要

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業種
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本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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