スーダンの一部地域で「飢きん」 紛争で物資供給が途絶えた2地域 【プレスリリース】

戦闘が沈静化した地域では食料状況の改善傾向も ユニセフら、暴力終結と人道アクセスを訴え

中央ダルフール州ザリンギにある避難民キャンプで、上腕計測メジャーによる栄養不良の検査を受ける子どもたち。メジャーの赤色は、重度の栄養不良状態を示す。北ダルフール州エル・ファーシルから逃れてきた家族も多い(スーダン、2025年10月21日撮影) © UNICEF/UNI882511/Khalil

【2025年11月4日 ローマ/ニューヨーク/ジュネーブ発】

ユニセフ(国連児童基金)および国連食糧農業機関(FAO)と世界食糧計画(WFP)は本日、スーダンにおける食料不安と栄養不良の最新分析を発表。紛争の前線に沿って状況に著しい地域差が生じていることが明らかとなり、警鐘を鳴らしました。暴力行為が沈静化し人道支援のアクセスと市場の回復が可能となった地域では、食料安全保障の状況が改善し始めていますが、紛争の影響を強く受けて、人道支援がほとんど届かない地域あるいは包囲状態にある地域では、すでに飢きんが発生しています。

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各機関は、敵対行為の停止と、安全かつ妨げのない、継続的な人道支援のアクセスを求めています。これは、さらなる人命の損失を防ぎ、人々の生活手段を守るために緊急に必要とされています。

 

今回発表された、最新の総合的食料安全保障レベル分類(IPC)特別概報によると、2025年9月までに深刻な食料不安はわずかに改善しており、深刻な急性食料不安(IPCフェーズ3以上)に直面しているのは推定2,120万人(人口の45%)です。前回の分析(2024年12月から2025年5月)と比較して、推定340万人が危機的な飢餓状態(IPCフェーズ3以上)から脱しました。

北ダルフール州エル・ファーシルから、3人の子どもを連れて、タウィラの避難民キャンプまで逃れてきた母親のナイーマさん(スーダン、2025年11月4日撮影) © UNICEF/UNI892693/Jamal

こうした改善は、紛争が緩和したハルツーム州、アルジャジーラ州、センナール州で2025年5月以降、徐々に状況が落ち着いてきたことに伴うものです。家族が帰還し、市場が再開し、商業物資や人道支援物資もより安定的に供給されるようになりました。しかし、こうした進展は限定的です。広範な危機によって経済と重要なサービスは崩壊し、人々が頼るインフラの多くが損壊しています。

 

危機的な飢餓状態にある人は、2025年10月から2026年1月の期間で1,930万人にまで減少すると予測されています。これは、収穫後から2026年にかけて農業に適した条件が見込まれているためです。

 

しかし、こうした改善は不安定でごく限られた地域にとどまっています。ハルツーム州やアルジャジーラ州に戻ってきた多くの家族は、全てを失っており、収穫の成果を十分に得ることはできない状況です。一方、スーダン西部の地域、特に北ダルフール州、南ダルフール州、西コルドファン州、南コルドファン州では、紛争が続き、人道支援の提供が極めて制限されているため、飢餓と栄養不良が急速に深刻化しています。

 

2026年2月以降は、食料備蓄が尽き、戦闘が続くことで、飢餓は再び悪化すると予測されています。IPCの数値は大きくは変わっていませんが、それは、エル・ファーシル、カドグリ、ディリングおよび南コルドファン州の一部などの最も深刻な被害を受けている地域の約84万1,000人については、状況があまりにも不安定で、今後の見通しを立てることが困難なためです。

 

飢きん調査委員会(FRC)によれば、北ダルフール州エル・ファーシルおよび南コルドファン州カドグリにおいて、飢きんの状態(IPCフェーズ5-合理的な証拠あり)が発生しています。これらの地域は紛争により商業物資や人道支援がほぼ途絶えています。これらの地域は2024年にはIPCフェーズ4(緊急事態)に分類されていましたが、現在では飢きんの3つの指標である食料消費、急性栄養不良、死亡率について閾値(しきい値)を超えています。

中央ダルフール州ザリンギの国内避難民キャンプで、ユニセフ支援物資の栄養治療食を口にする子ども(スーダン、2025年10月21日撮影) © UNICEF/UNI882519/Khalil

南コルドファン州のディリングの状況はカドグリと同様であると考えられますが、人道支援が制限され、敵対行為が続いており、信頼できるデータが不足しているため、分類することができません。

 

西ヌバ山地では状況がわずかに改善し、「飢きんのリスク」からIPCフェーズ4(緊急事態)へと分類が変更されました。しかし、人道支援へのアクセスが改善されなければ、飢きんへと陥るリスクは依然として高いままです。

 

飢きん調査委員会は、ダルフール地方およびコルドファン地方で、新たに農村部や国内避難民キャンプを含む20地域に飢きんのリスクがあると予測しています。東ダルフール州および南コルドファン州の複数の新しい地点もリスクの対象となっています。

 

栄養状態の検査結果に基づく全急性栄養不良(GAM)率は極めて高く、エル・ファーシルでは38%から75%に達し、カドグリでは29%に上っています。

 

一方、保健・水・衛生システムが崩壊した地域では、コレラ、マラリア、はしかの集団発生が拡大し続けており、栄養不良状態にある子どもたちの死亡リスクをさらに高めています。

 

北ダルフール州タウィラにある避難民キャンプで、ユニセフの支援物資を受け取るエル・ファーシルからの避難民家族(スーダン、2025年10月30日撮影) © UNICEF/UNI887336/UNICEF

ユニセフ緊急支援局局長のルシア・エルミは次のように述べています。「飢餓、疾病そして避難という致命的な組み合わせが、何百万人もの子どもを危険にさらしています。その中でも女の子たちは、特に深刻な影響を受けやすく、栄養不良に陥る、ジェンダーに基づく暴力に遭う、そして学校から引き離されるリスクが高まる状況にあります。栄養治療食、安全な水、必須の医薬品や保健サービスで命を守ることはできますが、それは子どもたちに迅速に届けられた場合に限られます。私たちは当事者が、国際法上の義務を遵守し、人道支援活動を行う人々に子どもたちへの安全で迅速かつ妨げのないアクセスを確保することを強く求めます」

飢餓が起きているすべての地域で、その要因は明らかです。紛争、避難、そして人道支援の遮断です。エル・ファーシルやカドグリでは、人々は食料や医療ケアを十分に得られないまま何カ月も過ごしています。市場は崩壊し、必需品の価格は急騰しています。

 

ユニセフと国連2機関は、最も深刻な状況の地域を優先し、食料、栄養、保健、水と衛生、保護サービス、および農業・畜産支援を統合的に進めています。しかし、アクセスは依然として不安定で、人道支援従事者や支援物資が頻繁に攻撃の対象となり、物資の輸送車列は遅延や拒否、さらには安全上の脅威に直面しています。

 

安全かつ持続的なアクセス、十分な資金、そして暴力の終結がなければ、スーダンでは飢きんによる犠牲が続くことになります。

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■    注記

IPCと飢きん調査委員会は、ユニセフなどの支援を受けて、証拠に基づく技術的なプロセスを踏み独立して機能します。飢きんを一つの機関が単独で宣言することはありません。

 

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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