ガザ地区で9日より集団予防接種実施 停戦遵守が不可欠 7割を下回る接種率、ユニセフら回復を目指す 【プレスリリース】

【2025年11月5日 ガザ地区(パレスチナ)発】
ユニセフ(国連児童基金)、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、世界保健機関(WHO)およびパートナー団体は、パレスチナ保健省と協力し、ガザ地区において定期予防接種、栄養支援、発育モニタリングを統合した「キャッチアップキャンペーン」(遅れを取り戻すための集団予防接種)を開始します。これは、2年間にわたる紛争により命を守るための不可欠なサービスから遮断されてしまった4万4,000人の子どもを対象に行われます。
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本キャンペーンは3回に分けて実施され、子どもたちに5種混合ワクチン、ポリオワクチン、ロタウイルスワクチン、肺炎球菌結合型ワクチンを3回、はしか・おたふくかぜ・風しん混合ワクチンを2回ずつ接種します。第1回接種は11月9日から18日にかけて行われます。
推定によると、3歳未満の子どものうち5人に1人は、紛争の影響で一度も予防接種を受けていないか、必要な接種回数を満たしておらず、ワクチンで防げる感染症の集団発生の危険にさらされています。今回のキャッチアップキャンペーンは、こうした子どもたちに、はしか、おたふくかぜ、風しん、ジフテリア、破傷風、百日せき、B型肝炎、結核、ポリオ、ロタウイルス、肺炎から守る定期予防接種を行うことを目的としています。

紛争が子どもたちの健康と栄養状態に及ぼした深刻な影響に対処するため、ユニセフとパートナーは、これらの子どもたちの栄養不良の検査を行い、栄養不良と判定された子どもたちが治療を受け、継続的な支援を受けられるようにします。中度や重度の急性栄養不良による合併症を抱える子どもたちは、国連諸機関が支援する入院型安定化センターで治療を受けます。
ユニセフのパレスチナ特別代表ジョナサン・ヴィーチは次のように述べています。「2年間にわたる容赦ない暴力によりガザ地区で2万人以上の子どもの命が奪われた後、ようやく、生き延びた子どもたちを守る機会が訪れたのです。すべての子どもに予防接種を行い、健康と栄養を支援することは、単なる人道的介入ではありません。それは道義的な責務です。惨事の中に生まれた子どもたちの未来を守り、荒廃のただ中で希望を再び築くための行動なのです」

3回にわたるキャンペーンに向け、ユニセフはガザ地区に、11の感染症に対するワクチン(混合ワクチンを含む)、注射器、コールドチェーン(低温物流システム)機材、栄養補給物資を搬入しました。ユニセフは他国連機関やパレスチナ保健省と共に、ガザ地区全域の子どもに予防接種を実施するため、接種担当者や現地で啓発活動を行う人々を支援する詳細な計画を策定しています。予防接種は、ガザ地区全域で149カ所の保健医療施設と10台の巡回車両を通じて行います。さらにはパートナーなどと共に予防接種の実施を担う450人以上の保健員とスタッフの研修を行い、15カ所の保健医療拠点の復旧にも取り組んでいます。
紛争前、ガザ地区には54カ所の予防接種施設があり、子どもの予防接種率は全体で98%と世界でもトップクラスでした。現在、そのうち31施設は無差別攻撃で一部または全てが壊され機能しておらず、定期予防接種率は70%を下回っています。さらに、厳しい冬の到来により、ガザ地区全域で命を奪う恐れのある予防可能な小児疾患が広がっており、このキャンペーンの緊急性は一層高まっています。第2回および第3回のキャンペーンは、それぞれ2025年12月と2026年1月に予定されており、子どもたちに2回目と3回目のワクチンを接種することを目指します。
本キャンペーンは、Gaviワクチンアライアンスから資金面での支援を受け、パレスチナ保健省および現地の保健パートナーと緊密に連携して実施されます。
本キャンペーンの成功は、停戦の完全な遵守にかかっています。でなければ家族、保健医療従事者、人道支援従事者が、予防接種会場へ自由かつ安全に到達することができないからです。今回のキャッチアップキャンペーンは緊急対応であり、最終的な目標は紛争前の予防接種率の水準に戻すことにあります。これを達成するためには、保健システムの早急な復旧と、ユニセフなど関係する国連機関への継続的なドナーからの資金提供が不可欠です。
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■ 2024年夏にガザ地区で行われたポリオ予防接種活動を追った、ユニセフのドキュメンタリー映画『Gaza's Silent Threat(ガザの静かな脅威)』(日本語字幕付き)はこちらからご覧いただけます。
https://www.unicef.or.jp/news/2025/0165.html
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )
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