母親への親密なパートナーによる暴力 ユニセフ新データ、4人に1人の子どもに影響 【プレスリリース】

オセアニア、サハラ以南、中央・南アジアが最もリスク高く

公益財団法人日本ユニセフ協会

中部ジャワ州クラテンにある自宅で、顔を寄せ合う母親のハニさん(仮名、左)と8歳の娘クスマさん(仮名)。母親は家庭内で性暴力を受けていた(インドネシア、2025年5月6日撮影) © UNICEF/UNI790515/Chair

【2025年11月26日 ニューヨーク発】

 ユニセフ(国連児童基金)の新たなデータによると、オセアニア、サハラ以南のアフリカ、中央アジアおよび南アジアの子どもたちは、過去1年間にパートナーから身体的・心理的・性的な虐待を受けた母親と暮らしているケースが最も多く見られることが明らかになりました。これは女性に対する、まん延する不平等と虐待の世界的傾向を反映しています。

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このデータ概要は、国連女性に対する暴力に関する機関間推計・データ作業部会(UN Violence Against Women Inter-Agency Working Group on Estimation and Data)を代表して世界保健機関(WHO)が発表した女性に対する暴力に関する最新の世界推計値を受けて公表されました。同作業部会の推計によれば、15歳以上の女の子と女性のうち10人に1人が、過去12カ月間に親密なパートナーから身体的または性的な暴力を受けています。

「家庭内における子どもへの暴力に関するデータ概要(Data Brief on Violence Against Children in the Home)」

ユニセフの調査結果は、このような暴力が世界中の子どもにも及んでいることを浮き彫りにしています。4人に1人に当たる約6億1,000万人の子どもが、親密なパートナーからの暴力(Intimate Partner Violence: IPV)を経験している母親と共に生活しています。

 

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べています。「今日、非常に多くの女性と子どもが、暴力が日常の一部となっている家庭で生活しています。女性の安全と自律性は、子どものウェルビーイングにとって何よりも重要です」

 

今回初めて、地域別データにより、女性と子どもへのリスクが最も高い地域が明らかになりました。子どもが暴力にさらされる地域別の状況は、女の子や女性がパートナーから受ける暴力の地理的分布とほぼ一致しています。

 

分析によると、オーストラリアとニュージーランドを除くオセアニア地域では子どもの半数強、51%の約300万人が、ここ1年以内にIPVを受けた母親と暮らしており、地域別で最も高い割合を示しています。サハラ以南のアフリカは2番目に高い割合の32%で、1億8,700万人の子どもが影響を受けています。中央・南アジアでは、子どもの29%がこうした状況にあり、総数としては世界全体で最も多い2億100万人に上ります。

 

IPVの影響を受けている子どもに関する、他の地域別調査結果は以下の通りです。

• 北アフリカ・西アジア:                    26%       (5,200万人)

• ラテンアメリカ・カリブ海諸国:      19%       (3,500万人)

• 東アジア・東南アジア:                    21%       (1億500万人)

• 欧州・北米:                                   13%       (2,800万人)

• オーストラリア・ニュージーランド:     5%      (約40万人)

 

調査によれば、暴力は女性自身の健康とウェルビーイングを損なうだけでなく、その子どもの安心感、健康、学びにも重大な影響を及ぼします。今回の分析には暴力的なしつけに関するデータも含まれており、女性が暴力を受けている家庭で育つ子どもは、身体的・心理的な攻撃を受ける可能性が著しく高いことが示されています。こうした環境は、子どもがおとなになっても、被害者または加害者として暴力の連鎖に巻き込まれるリスクを高めます。

父親から暴力を受けていた4歳のファブリオナちゃん。現在は法的保護と心理的支援のもと、母親と共に安全な場所で暮らしている(アルバニア、2018年撮影)© UNICEF/UN0220685/Babajanyan VII Photo

ユニセフは、各国政府およびパートナーに対し、女性に対する暴力と子どもに対する暴力を撲滅するための実証済みの解決策への投資を呼び掛けています。その主な取り組みは以下の通りです。

 

  • 女性および子どもに対する暴力を同時に減らすための戦略を調整・拡大すること。これには女性や女の子が主導する組織・団体への支援も含まれる。

  • 暴力の被害を受けた人(サバイバー)を重視したサービスを拡充し、女性と子どもが安全に過ごせ、ケアを受けられるようにすること。

  • 子育て支援や、ジェンダー平等と非暴力を促進する学校教育プログラムなどを含む、予防のための取り組みに投資すること。

  • 不平等と暴力の根底にある有害な社会規範に対処するとともに、サバイバーと若者の声を社会に広く届けること。

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■    注記

 

ユニセフが新たに発表した「家庭内における子どもへの暴力に関するデータ概要(Data Brief on Violence Against Children in the Home)」(英語)には、最新の世界統計と初の地域別内訳が含まれています。

https://data.unicef.org/resources/violence-against-children-home-2025/ 

 

国連機関間報告書「女性に対する暴力 2023年推計(Violence Against Women, 2023 estimates)」(英語)は、親密なパートナーによる暴力および非パートナーによる性暴力に関する最も包括的かつ最新のデータを提供しています。

https://www.who.int/publications/i/item/9789240116962 

 

女性と子どもに対する暴力への協調した対応に関するユニセフのガイダンス(英語)は、以下をご覧ください。

https://www.unicef.org/innocenti/reports/working-intersections-violence-against-children-and-violence-against-women 

 

女性に対する親密なパートナーによる暴力と子どもに対する暴力のとの関連性を示すインフォグラフィック(英語)は、以下をご覧ください。

https://www.unicef.org/innocenti/media/10556/file/UNICEF-Innocenti-violence-against-children-women-infographic.pdf 

 

子どもに対する暴力に関するユニセフのグローバルデータベースおよびデータ刊行物(英語)はこちらからご覧いただけます。

https://data.unicef.org/topic/child-protection/violence/ 

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )

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会社概要

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URL
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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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