ガザとヨルダン川西岸地区の今 5度目の訪問を終え、ユニセフ事務局次長が報告 「停戦第2段階に期待」 【プレスリリース】

【2026年1月26日 ニューヨーク発】
2023年10月以降、5度目となるパレスチナへの訪問を終えたユニセフ(国連児童基金)事務局次長のテッド・チャイバンは、帰国後の記者会見で現地の状況を以下の通り報告しました。
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私は、パレスチナのガザ地区と東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区から戻ったばかりです。先週一杯現地に滞在した今回の訪問を経て、今、私の胸には、希望と懸念の両方の気持ちが混在しています。
戦争が始まって以来、私がパレスチナを訪れたのは5度目になります。不完全でいつ崩れても不思議ではない形ながら、重要な停戦が、100万人を超える子どもたちの生活に変化をもたらしている兆しを何カ月かぶりに見ることができました。
停戦合意が発効して以来、子どもたちの生活に影響を与える改善が見られています。ガザ地区には、命をつなぐ物資を運ぶトラックが、以前より多く入れるようになりました。しかし、必要とされる量や規模を満たすには、まだ十分とは言えません。
街の市場にも商品が再び並び始めています。野菜や果物、鶏肉、卵が売られていました。食料状況は改善し、飢きんは解消されました。子どもたちのストレスやトラウマに対処するためのレクリエーションキットが、2年以上自由に遊べなかった子どもたちにようやく届き始めています。食料の流通も複数の地域で大幅に増加しています。

ユニセフはパートナーと協力し、160万人以上に清潔な飲料水を提供し、70万人に毛布と防寒着を配布して厳しい冬の寒さへの対応を支援しました。また直近では、ガザ市内のアル・シファ病院で、小児集中治療室での診療を再開させることに成功しました。まだ許可された範囲に限られていますが、人々は元々住んでいた場所に向かい始めています。そのような中で家屋がほぼ完全に破壊されてしまった地域では、水と衛生キットや尊厳キット、子ども用の防寒着の配布に加え、保健と栄養分野での支援を展開しています。戦争中に、命を守るワクチン接種を受けられなかった多くの子どもたちを対象にした予防接種キャンペーンの第2弾が、ガザ全域で進行中です。昨年10月の停戦発効以降、ユニセフの支援で栄養施設が新たに72カ所新設され、ガザ地区全体の施設数は196カ所に達しています。
これらの前進には大きな意味があります。戦闘が一時停止し、政治的コミットメントが持続し、人道支援へのアクセスが確保された時にどんなことが可能になるのかを示しているのです。しかし、多くの子どもたちにとって、現地の状況は依然として極めて不安定で危険なままであることも事実です。
10月初旬の停戦発効以降も、ガザ地区では、100人を超える数の子どもたちの命が奪われたと報告されています。食料状況が改善されたにもかかわらず、10万人の子どもたちが依然として急性栄養不良の状態にあり、長期的なケアを必要としています。
130万人が、適切な避難所を緊急に必要としており、その多くを子どもたちが占めています。家族はテントや爆撃で破壊された建物での生活を強いられ、激しい雨や強風、凍えるような気温にさらされています。テントでの生活は本当に悲惨な状況です。子どもを暖めるためにプラスチックや木の切れ端を燃やしている親にも会いました。悲劇的なことに、冬が始まって以来、少なくとも10人の子どもが低体温症で死亡したという報告も受けています。

多くの人々が依然として生存の瀬戸際に置かれている、極めて不安定な状況です。そのような中で、パレスチナにおける国際NGOの活動停止の決定がもたらす影響について、深い懸念を表明したいと思います。この決定は、人道支援活動を損なうリスクがあり、ガザ地区とヨルダン川西岸全域で、人々の命を支える支援の提供と拡大を著しく制限する恐れがあります。私たちの活動は、現地の様々な団体にも大きく依存しています。しかし、(活動が禁止された団体には、私たちや地元の団体が持たない特別な能力や機能を持つ、人道支援活動に)真に不可欠な主要な関係者が存在します。
このように、現地の状況は未だに脆弱なままで、破壊の中に置かれています。しかし、希望もあります。ユニセフは教育分野での現地のパートナーと協力し、25万人以上の子どもたちが学びを再開できるよう支援しています。私は、デルバラハにあるユニセフの支援で運営される仮設学習センターで、勉強に没頭していたアヤさんという女の子から話を聞く機会を得ました。
彼女は、再び学び、友人たちと過ごせることをとても嬉しく思っている、そして戦争で病気になったり負傷したりした人々を助ける看護師になることを夢見ていると、私に話してくれました。彼女は、家々が再建され、学校が機能し、買い物ができる場所や散歩できる公園がある、平和なガザを思い描いていました。

過去数カ月の間、私たちは、子どもたちを学びの場に戻す取り組みを進めてきました。ガザの教育当局による正規教育はまだ再開されていませんが、仮設の学習スペースで非正規の授業を受けながら満面の笑みを浮かべる数十人の子どもたちの姿を見て、私は心から嬉しく思っています。ガザの子どもたちにとって、教室に戻ることは、単なる学習の再開だけには留まりません。メンタルヘルスと心理社会的支援においても、重要な要素であるのです。ガザ地区全域で70万人以上の学齢期の子どもたちが、2023年10月以降、正規教育の機会を奪われたままです。今週、私たちは「学びへ戻ろう(Back to Learning)」と題した大規模な教育支援キャンペーンを発表する予定です。
進展は見られます。でも、まだやるべきことは山積みです。ユニセフは、ガザの子どもたちへの支援を主導する主要機関の一つです。
停戦発効以降、ユニセフは国連世界食糧計画(WFP)とともに、延べ1万台以上のトラックで、ガザに支援物資を搬入しました。これは、この間にガザに搬入された全人道支援物資の80%を占める量です。両機関は連携して栄養支援の加速化を主導しています。WFPが(ユニセフの支援で運営されている)仮設の学習スペースに通う子どもたちに栄養バーを提供するなど、学習支援活動でも協力しています。またデジタル手段による現金給付支援の面でも連携し、これまで100万人以上に届けています。
ガザの子どもたちのために、先に紹介したアヤさんの夢に近づく支援環境を真剣に整えるなら、三つのことが不可欠です。
第一に、停戦が維持され、進展すること。停戦の第2段階への移行は、単なる政治的な節目ではありません。人道的に必要なことです。(最後の人質)ラン・グヴィリさんの遺体の収容がされたこと、またそれに向けた尽力に感謝します。これにより第2段階への移行が可能になりました。これまでの脆弱な改善を持続可能なものへと転換する機会です。大規模な復興や、子どもたちにとってより安全な環境の構築に取り組むことができます。
私たちは今回、イスラエル当局との面会で、人道支援物資と商業物資の輸送ルートの拡大を要請しました。医療支援や家族の再会、その他、人々の生活に必須の社会サービスを再開させるため、人々の安全な往来が保障される必要があります。ラファ回廊の双方向通行の再開を公約通り実施し、継続的に開放するよう求めます。これが実現できれば、ガザ域外への緊急医療搬送を必要とする子どもたちが治療を受ける機会も得られるでしょう。
ケレム・シャロム、ジキム、キスフィム、東エレス、西エレスの各検問所についても同様です。利用可能なすべての検問所が同時に稼働し、ヨルダンとエジプトを経由する安全な回廊が確保されなければなりません。ガザ地区内では、サラアルディン道路の再開通で、輸送効率が劇的に改善することが期待されます。
防寒対策を施したテントの提供や、より耐久性のある仮設住宅の建設など、避難所の大規模な改善が急務です。子どもたちが何らかの形で教育を再開できるよう、仮設の学習スペースが必要です。基本的な社会サービスを回復するため、水道網や電力網の緊急の修復が必要です。
第二に、ガザ行政国家委員会(NCAG)が必要な支援を受け完全に機能するようになれば、人道支援へのアクセス改善と早期の復旧や復興に向けた前進を実現する真の機会にもなります。そしてそれは、今後の道のりにおいてパレスチナの人々の主体性を確保することにもつながります。

第三に、人道支援活動には「次に何が起こるか」を予測できる状況が確保される必要があり、またその支援は早期復旧や復興を本格的に動かし始めるための足がかりにもなります。飲料水と衛生環境の確保に必要な基本的な物資は、いわゆる「デュアルユース(軍民両用)品」と呼ばれるものであっても、完全な透明性を担保できれば、その搬入は学習・教育関連物資と併せて許可されるべきです。今日の段階で、一部の学習教材が必要な承認を得始めている兆候が確認されています。現地で活動する国連の人道支援関係者は、現在機能不全に陥っている社会システムの状況や、修復に必要な措置を把握している現地の人々とのネットワークを持っています。国際的な規範や基準に沿った復興を支援する上で、最適な立場にあることも事実です。
これらすべての活動を拡大する準備は整っています。物資も搬入ができる場所に配置済みです。現地では、優秀なスタッフが活動を続けています。アクセスが許可され、停戦が確実に第2段階に移行すれば、直ちに展開することができる支援計画も用意しています。
ガザ地区と、暴力の波に見舞われているヨルダン川西岸地区で暮らすパレスチナの子どもたちが求めているのは、同情ではありません。今、必要なのは、温もりと安心・安全、食料、教育、そして未来をもたらす国際社会の決断です。
私たちの目の前には、これらの子どもたちの運命を変える機会、窓が開かれています。これを無駄にしてはなりません。
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■ ユニセフ「ガザ人道危機 緊急募金」ご協力のお願い
(公財)日本ユニセフ協会は、ユニセフ「ガザ人道危機 緊急募金」を受け付けています。最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。
https://www.unicef.or.jp/kinkyu/gaza/
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。https://www.unicef.org
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。https://www.unicef.or.jp
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