資生堂 女性研究者サイエンスグラント 第18回授賞式を開催 ~女性活躍推進企業として、次世代の指導的役割を担う女性研究者を多様な視点でサポート~

資生堂は、「資生堂女性研究者サイエンスグラント」(以下本グラント)の第18回受賞者10名(総応募数108名)を選出し、2025年6 月20日(金)に資生堂グローバルイノベーションセンターにて授賞式を開催しました。
本グラントは、「次世代の指導的役割を担う女性研究者を支援することは科学技術の発展につながる」という考えのもと、自然科学分野の幅広い研究テーマ(理工科学系・生命科学系全般)を対象に、2007年度の設立以来、毎年最大10名の女性研究者へ研究助成を実施しています。本グラントの特徴として、受賞者に贈られる各100万円の助成金は、出産・育児等のライフイベントと研究活動を両立するための環境整備(学会参加の際の託児費用や研究補助員の雇用等)にも柔軟に活用できることが挙げられます。また、本グラントを通じた受賞者同士の交流が、その後の研究活動やキャリア形成のサポートにもなっています。
日本のSTEM※1領域におけるジェンダー・ギャップ解消への課題認識が高まる中、当社は女性活躍推進を積極的に推進する企業として、女性研究者の支援を通じた科学技術の発展による、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。
※1 Science, Technology, Engineering and Mathematics
授賞式・研究報告会概要
<名称>第18回資生堂女性研究者サイエンスグラント授賞式
テーマ「女性研究者のネットワークの活用」
<日時>2025年6 月20日(金)10 :30~18:30
<会場>資生堂グローバルイノベーションセンター3F (神奈川県横浜市西区高島1-2-11)
<第18回授賞式>
◆挨拶
株式会社資生堂 取締役 代表執行役 エグゼクティブオフィサー
チーフファイナンシャルオフィサー、チーフ DE&I オフィサー 廣藤綾子
◆審査委委員長挨拶、受賞楯贈呈
株式会社資生堂 エグゼクティブオフィサー
チーフテクノロジーオフィサー 東條洋介
◆第18回受賞者 受賞コメント
<受賞者OGによるスピーチ>
これまでに開催した本グラントの受賞者3名によるスピーチ「助成期間終了後の研究成果の進捗、自身のステップアップの経験を踏まえたアドバイス」
<第17回研究報告会>
◆研究発表及び討論 第17回本グラント受賞者10名
◆懇親会
《女性研究者の現状と本グラント》
日本において研究者全体に占める女性の割合は18.5%で※2、増加傾向にあるものの諸外国に比べ依然として低い水準です。女性研究者の悩みとしては、仕事と家庭の両立に関するものが多く、その他「女性研究者が少なく立場が理解されにくい」、「周囲に相談・情報交換できる人がいない」など、プライベートに限らず研究活動の場においても、活動環境が十分に整備されていない女性研究者も少なくありません※3。
資生堂はこうした状況を踏まえ、指導的立場を目指す意欲がある女性研究者を支援することを目的に、2007 年に本グラントを設立し、活動を継続してきました。女性研究者がさらに活躍できる環境を整えていくことで、研究領域のダイバーシティを加速させ、日本の科学技術の発展への貢献を目指 します。
※2 総務省2024年(令和6年)科学技術研究調査結果(https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/youyaku/pdf/2024youyak.pdf)
※3 資生堂アンケート 調査期間:2022/11/16~30、資生堂女性研究者サイエンスグラント受賞者のうち回答者数:74名(送付者数:119名)
《第18回受賞者受賞コメント》
式典当日、受賞者が一人ずつ今後の抱負などについてコメントを述べました。「私の研究領域は世界的に見ても研究者が少ない領域であるが、今後私が指導的立場に立ち、この分野を盛り上げていきたい」「所属している大学でも女性研究者の割合が少ないことが課題となっているが、私自身が指導的立場を担えるよう、本グラントを励みに努力していきたい」など、一人一人が今後の目標に向けて、決意を新たにしていました。
《【株式会社資生堂 取締役 代表執行役 エグゼクティブオフィサー》
《チーフファイナンシャルオフィサー チーフDE&Iオフィサー 廣藤綾子のコメント】》
世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数※4によると、日本は148 か国中 118 位と、依然として大きな男女格差が残っています。社内研究機関「資生堂DE&Iラボ」の知見※5 から、女性は男性に比べてジェンダー平等を意識している一方で、内面では「女性らしさ」に縛られやすく板挟みの状況にあることが示唆されました。また、多様なリーダーが活躍できる環境を作ることの重要性も同研究で示されています。私自身も、これまでの挑戦と学びから、「多様な声に耳を傾け、誰もがのびのびと力を発揮できる空気を作ること」を大切にしています。
挑戦には勇気を要しますが、挑戦したからこそ見えてくる世界があります。不完全でも、飛び込んだ先にある景色が未来を変える力になると信じています。日本の女性研究者を取り巻く研究環境は依然として厳しいですが、自分らしいリーダーシップを発揮することで道を切り開いていただきたいと願っています。
※4 世界経済フォーラム Gender Gap Report 2025 | World Economic Forum
※5 資生堂DE&Iラボ:ジェンダーバイアスの評価手法と資生堂での研究・検証結果 | RESEARCH | 資生堂DE&I ラボ
《【株式会社資生堂 エグゼクティブオフィサー チーフテクノロジーオフィサー、審査委員長 東條洋介のコメント】》
今年の受賞式では、過去の受賞研究者から、助成期間終了後の研究の進捗とご自身の研究やステップアップの中で乗り越えてきた経験などを共有いただきました。本グラントを通じて多様なロールモデルと直接交流しアドバイスが得られる機会は、今後更なる活躍を目指す上で有意義だという受賞者のお声を頂きました。
近年はジェンダードイノベーションという考え方も注目されていますが、化粧品領域では以前からジェンダーの違いに着目した研究アプローチを取っており、親和性が高い分野です。当社でも、女性、男性の研究員それぞれが、技術者であると同時に消費者でもあることを活かし、活躍しています。指導的立場に立つ女性の割合が未だ高い水準とは言えない大学・研究機関においてダイバーシティが広がることは、日本での科学の発展に欠かせない要素であると考えています。受賞者の更なるご成功とご発展をお祈りしています。
《今後の展望》
日本の女性研究者の厳しい研究環境が改善され、女性研究者が活躍していくためには、研究組織の意思決定の場に女性が増えることは重要です。資生堂は今後も日本の科学技術の発展に貢献するため、本グラントを通じて、指導的役割を担う女性研究者の育成を支援していきます。
《第18回受賞者一覧》
研究助成期間:2025年6月~2026年5月
<氏名>荒木 球沙(あらきたまさ)
<所属>国立感染症研究所 安全管理研究センター 寄生動物部
<職位>主任研究員
<研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)
【寄生虫学】
マラリア原虫の増殖制御を解明するオルガネラ3Dロードマップの構築
(寄生虫であるマラリア原虫が増殖する際、オルガネラがどのように増え、分配されるかを3Dモデルで観察します)

<氏名>井ノ口 繭(いのくちまゆ)
<所属>東京大学 大学院 農学生命科学研究科
<職位>助教
<研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)>
【魚類生理学】
広塩性魚の上皮細胞をモデルとしたイオン輸送制御機構の解明
(川や海など、異なる塩分濃度の環境で生きる魚のしくみを調べることで、私たち人間にも共通する「塩分を調節する仕組み」の解明を目指しています)

<氏名>大内 梨江(おおうちりえ)
<所属>東京科学大学
<職位>プロジェクト助教
<研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)>
【細胞生物学/老年医学】
交感神経を基点とした老化のメカニズム解明
(交感神経がどのように老化に寄与するのか、その仕組みを明らかにする研究)

<氏名>奥舎 有加(おくしゃゆか)
<所属>岡山大学学術研究院医歯薬学域薬理学分野
<職位>研究准教授
<研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)>
【腫瘍分子生物学】
PTEN過誤腫症候群新規モデルの確立と変異型PTENの結合タンパクを標的とする新規治療薬開発-
(遺伝性腫瘍に関わるPTEN過誤腫症候群の新規モデルを世界で初めて作出し、発症・病態メカニズムの解明を通じて新たな治療薬開発を目指します)

<氏名>鹿毛(かげ) あずさ
<所属>室蘭工業大学大学院工学研究科しくみ解明系領域
<職位>助教
<研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)>
【重力生物学/生物物理学】
微生物の重力応答の生態的意義の検証
(小さな単細胞生物が重力に応答する意味は何か?)

<氏名>唐木 文霞(からきふみか)
<所属>北里大学薬学部生命薬化学研究室
<職位>助教
<研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)>
【創薬化学】
紫外線の吸収で「薬らしさ」を予測する
(「薬になる分子」と「薬にならない分子」を紫外線を使って区別します)

<氏名>近澤 未歩(ちかざわみほ)
<所属>名城大学 農学部
<職位>助教
<研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)>
【農学/食品科学】
腸管に存在する免疫活性化分子の探索
(腸管の健康維持のメカニズム、食事との関連性を明らかにする)

<氏名>中島 沙恵子(なかじまさえこ)
<所属>京都大学大学院医学研究科 炎症性皮膚疾患創薬講座
<職位>特定准教授
<研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)>
【皮膚免疫/マイクロバイオーム】
慢性炎症性皮膚疾患の免疫プロファイリングと治療ターゲット探索
(病態のよくわかっていない皮膚疾患の病態を分子レベルで解明し、治療ターゲットを探索し、診断や治療の最適化を目指します)

<氏名>永嶌 鮎美(ながしまあゆみ)
<所属>東京科学大学生命理工学院
<職位>助教
<研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)>
【化学感覚生理学/比較進化生理学】
軟骨魚類の比較生理学から拓くアクアグリセロポリンの基質選択機構
(サメの膜輸送体タンパク質の配列や活性を比較して、皮膚の保湿などにも関わる膜輸送体の基質選択メカニズムを解明します)

<氏名>LEE JI HA (りじは)
<所属>信州大学 繊維科学研究所
<職位>准教授
<研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)>
【化学/ソフトマター】
ハイドロゲルを利用した水耕栽培:食糧不足問題への革新的な解決策提案
(光で水と栄養を供給!ハイドロゲルによる次世代型水耕栽培システム)

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https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000004022&rt_pr=trs77
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