50歳以上のITエンジニアの転職が5年で4.3倍に 背景には「2025年の崖」問題 老朽化したシステムの維持・刷新に不可欠な人材の需要が高まる

株式会社リクルート

株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:北村 吉弘、以下リクルート)は、50歳以上のITエンジニアの転職動向について、転職支援サービス『リクルートエージェント』のデータをまとめましたのでご報告いたします。

■50歳以上のITエンジニアの転職者数は2019年の4.3倍

50歳以上のITエンジニアの転職が加速している。『リクルートエージェント』における50歳以上のITエンジニア職(SE、インターネット専門職、組込・制御ソフトウエア開発エンジニア)の転職者数は2019年を1とすると2024年は4.3倍に増えている。

『リクルートエージェント』における50歳以上のITエンジニア転職者の推移(2019年を1とする)

背景の一つとして挙げられるのは「2025年の崖」と呼ばれる問題。2018年に経済産業省が提示した「DXレポート」で指摘されたもので、日本企業のIT基幹システムの老朽化や複雑化が進行し、DXが進まないことにより2025年までに43万人のIT人材不足に直面する可能性や、2025年以降最大12兆円/年の経済損失が発生する可能性があるといわれている。また、稼働開始から21年以上経過する基幹系システムが2025年には6割に上ることも指摘されている。年月をかけて開発を重ねたシステムは複雑化しやすく、同レポートでは「ドキュメントが整備されていないため調査に時間を要する」、「(他システムとのデータ)連携が困難」といった問題が挙げられている。

老朽化・複雑化したシステム(以下、「レガシーシステム」と呼ぶ)をそのまま使用し続けることは、維持管理費の増大やシステム内にあるデータ活用の妨げの要因となる。また、老朽化が進むことで保守運用の担い手の確保が難しくなると、サーバーセキュリティーや事故・災害によるシステムトラブル、データ消失などのリスクが高まるといわれている。

このような事態を回避するためにはレガシーシステムの中から今後も必要なものを見極め、必要なものについてはクラウド化するなどの刷新が求められる。近年さまざまな企業がこのようなレガシーシステムの刷新に取り組んでいる。また、刷新するまでの間は引き続き同じシステムを使用するため、維持運用や改修対応を継続することもある。このとき、レガシーシステムで使用されていることが多いCOBOLなどのプログラミング言語に関するスキルを持つ人材が必要となる。

リクルートの求職活動支援サービス(『リクナビNEXT』、『リクルートダイレクトスカウト』等)には、各サービス共通で「レジュメ」という求職者自身が登録する職務経歴書機能がある。下表は2024年1月~12月の対象期間に、ITエンジニア職のレジュメにスキルとして登録されているプログラミング言語を年代ごとの割合で順位付けしたものである。

(リクルート レジュメの分析 ※各年代の上位10言語を表示 集計期間:2024年1月~12月)

COBOLが上位10言語にランクインしたのは50歳以上のみであった。レガシーシステムの維持・刷新を行いたい企業にとって、50歳以上のITエンジニアはニーズにマッチする可能性が高いと言える。なおCOBOLが日本で使われ始めたのは1960年代で、大規模システムを中心に広く使われていたが、JavaやC++など新たな言語が登場すると、ITエンジニアの学習対象も新しい言語へと移っていった。そのため若手の中でCOBOLを扱える人の割合は低い。また、50歳以上のエンジニアにはCOBOLのスキルだけでなく、豊富なトラブルシューティングの経験や若手の育成などの経験にも期待が寄せられている。

■50歳以上のITエンジニアで転職時に1割以上賃金が上昇した転職者の割合は20.8%

50歳以上のITエンジニアで、転職時に賃金が1割以上アップした転職者の割合は2019年には12.9%だったのに対し、2024年には20.8%まで増加している。労働市場全体でIT人材が不足している中でIT人材の賃金は上昇傾向にあるが、50歳以上でも同様の傾向が見られることが分かった。

■【50代ITエンジニアの転職事例】プログラミングスキルに加えて人柄が採用の決め手に

ある企業では汎用機からクラウドへのオープン化に伴い、汎用機の開発の仕方を理解していて、新たな仕組みへの移行経験がある人材を求めていた。そこにマッチしたのがIT企業に勤めていたCOBOLエンジニア(マネジャー)だったAさん(50代)。Aさんは役職定年を控え、業務の広がりや待遇向上を望んで転職活動をしていた。面接ではCOBOLのスキルに加えて幅広い年齢層の方々と関係を構築できるコミュニケーション力や人柄も評価され、年収アップで役職定年のない事業会社への転職を果たした。

■【解説】個人と企業のスキルマッチングが重要。ITエンジニアは資格など新しい技術の習得がカギ

(解説者:コンサルタント 丹野 俊彦)

汎用機など古い基幹システムを持つ企業では、汎用機の開発の仕方が分かっていたりクラウドなどへのオープン化の経験を持っていたりする人材を求めています。COBOLを現役で使っているエンジニアだけでなく、過去に使っていた経験がある方まで採用候補を広げるケースもあります。若年層ではCOBOLを扱った経験がある方は少ないため、希少価値が高いスキルとも言えます。

また、創業したばかりで事業を広げたい企業では、マネジメントができてエンジニアとしての技術もあるシニア層を採用するケースもあり、活躍の場が広がっています。

これまでは年齢が上がると転職には不利になると思われてきましたが、企業が求めるスキルを持っていれば年齢に関係なく転職が決まるケースが生まれており、企業と個人のスキルマッチングがより重要性を増していると言えます。

IT人材を必要としている企業は、自社が候補者に求めるスキルや経験を明確にし、年齢などの属性に関係なくニーズとマッチする人材を見つけ出すことが必要でしょう。一方、働く個人にとっては年齢が上がっても転職するチャンスが増えている状況と言えます。

とはいえレガシーシステムの維持・刷新の流れはいずれ収まることが見込まれるため、他のスキルも持っておくとよいでしょう。例えばクラウド系の資格を取るなど新しい技術の習得を積極的に行っていると、学ぶ姿勢があるため入社後早期にキャッチアップできると判断され、未経験業務でも採用に至るケースがあります。今後どのような技術が必要とされるかを考え、興味を持って学習を続けることでキャリアの可能性は広がるでしょう。


■調査概要

調査方法:リクルートエージェントの転職者分析、リクルートの求職活動支援サービス共通機能「レジュメ」の分析

調査対象:リクルートエージェントを利用して転職したITエンジニアの方、レジュメを登録しているITエンジニア職の方

有効回答数:非公開

調査実施期間:2025年2月

調査機関:リクルート

▼リクルートについて

https://www.recruit.co.jp/

▼本件に関するお問い合わせ先

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本社所在地
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代表者名
北村吉弘
上場
未上場
資本金
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設立
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