2030年、美容サロンのインバウンド市場規模は445億円へと拡大する見込み。成長のカギは?
美容サロンのインバウンド市場規模と未来展望
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:北村 吉弘)が運営する美容に関する調査研究機関『ホットペッパービューティーアカデミー』では、国内の美容サロン(※1)におけるインバウンド需要の動向を継続的に調査・研究しています。このたび、全国1,373の美容サロンを対象としたアンケート調査(2024年12月実施)、政府統計等を基に、2030年の美容サロンにおけるインバウンド市場規模の予測と需要拡大の可能性を分析した結果をご報告します。
(※1) 美容室、理容室、ネイルサロン、エステサロン、リラクゼーションサロン、アイビューティーサロン
■2030年の美容サロンのインバウンド市場規模予測
現在の美容サロンにおけるインバウンド市場規模を算出すると197億円となります。さらに今後の成長を考慮すると2030年には約2.3倍の445億円に拡大すると見込まれます。
美容サロンにおけるインバウンド市場規模

■研究員からのコメント
2030年の美容サロンにおけるインバウンド市場規模は445億円へ拡大する見込みです。今回の調査やサロンへのヒアリングからは、インバウンドの集客はサロンの立地や施術メニュー、価格設定によって大きな影響を受けることが分かりました。都市部や観光地では訪日客の来店機会が多く、オンラインでの情報発信もカギとなるでしょう。今後は、コストを抑えつつ効果を見極める段階的な施策が有効と考えられます。

『ホットペッパービューティーアカデミー』研究員 田中 公子
~サロンアンケートから見るインバウンド利用の現状~
全国1,373の美容サロンを対象に行ったアンケートから、インバウンド利用の傾向を分析しました。
■美容サロンにおけるインバウンド客の利用状況
直近1年以内に来店したインバウンド客の出身国・性年代(回答数274、複数回答)

<研究員からのコメント>
美容サロンを訪れるインバウンド客の出身国としては、中国、アメリカ、韓国、台湾の割合が特に高い傾向にあります。また、性年代別では、30~50代女性の来店割合が突出して高く、この層が現在のインバウンド利用の中心となっていることが分かりました。
(『ホットペッパービューティーアカデミー』研究員 田中 公子)
■地域別のインバウンド集客
1サロンあたりの来店頻度
(観光庁「訪日外国人消費動向調査2023年」を基に、都道府県をインバウンド訪問率で4つに区分)


(都道府県区分)
都市圏中心地:東京都、大阪府、千葉県、京都府、福岡県
都市圏観光地:神奈川県、奈良県、山梨県、北海道、兵庫県、愛知県
地方観光地:大分県、広島県、沖縄県、岐阜県、静岡県、長野県、熊本県、石川県、宮城県、栃木県、和歌山県、長崎県、埼玉県、岡山県
地方:富山県、青森県、香川県、三重県、滋賀県、鹿児島県、茨城県、佐賀県、山口県、群馬県、岩手県、山形県、福島県、新潟県、秋田県、宮崎県、愛媛県、高知県、鳥取県、徳島県、福井県、島根県
※インバウンド訪問率の高い順
<研究員からのコメント>
インバウンド需要の高い地域ほど、美容サロンの来店客数も多い傾向が見られます。年間の平均客数は地方のサロンで0.56人であるのに対し、都市圏中心地では3.97人に上り、約7倍となりました。このことから、都市部に店舗があること自体がインバウンド集客に好影響を及ぼしていることが分かります。
(『ホットペッパービューティーアカデミー』研究員 田中 公子)
■来店のきっかけ
サロンを見つけた情報源(TOP6)(複数回答)

<研究員からのコメント>
ヘアサロンにおける来店のきっかけは、「たまたま通りかかって」という偶然の発見が最も高い割合(32.3%)を占めており、立地が集客に与える影響の大きさが分かります。一方、リラクゼーション・エステサロン等では「HOT PEPPER Beauty」を通じた来店の割合が最も高く(41.0%)、サロン探しにおいてオンライン予約・検索サービスが重要な役割を果たしていることがうかがえます。「地図アプリ/Google検索」の影響も大きく(ヘアサロン29.2%、リラクゼーション・エステサロン等29.8%)、Web上での検索性や露出の強化が来店機会の創出につながっていると考えられるでしょう。
(『ホットペッパービューティーアカデミー』研究員 田中 公子)
~インバウンド対応に成功しているサロンのインタビュー~
BLIMEY(ブライミー:ヘアサロン/神奈川県横浜市中区伊勢佐木町)
「パーマをやりたい」と、アジア・欧米から来店

オーナー:Taketoさん「うちのサロンでは、日本人のお客さまを含めて【パーマ】の施術が多く、全体の40%以上を占めています。インバウンドのお客さまも、パーマを希望される方が多いですね。特にアジアや欧米からの方が目立ちます。
完全予約制のため、インバウンドのお客さまも来日前からサロンに行くことを決めていらっしゃるようです。おそらく、日本の技術や価格に魅力を感じているのではないでしょうか。
施術の際は、お客さまに写真や動画を見せてもらいながら、仕上がりのイメージをしっかり共有します。パーマはカラーよりも髪の造形において自宅での再現性が高いですが、ウェーブの幅や位置など、細かいニュアンスを調整する必要があるので、最低限の英会話は不可欠ですね。
また、HOT PEPPER Beautyのメニューを英語表記にしたことで、予約につながりやすくなった実感があります。こういった工夫が、インバウンドのお客さまの来店促進に役立っているのかもしれませんね」

~美容サロンでインバウンド集客に取り組むための考察~
インバウンド集客に影響を与えるサロンの特性

<研究員からのコメント>
調査やサロンへのインタビューによりインバウンド対応のしやすさは、「立地」「施術内容」「客単価」といったサロンの特性によって大きく異なることが分かりました。特に、立地の影響が大きく、都市圏や観光地に位置するサロンほどインバウンド客を獲得しやすい傾向が見られます。
また、インバウンド集客実績のある美容サロンへのヒアリングから、施術内容によってもインバウンド対応のしやすさは変わり、施術がシンプルで説明が容易なサロンほど、言語の壁を越えたスムーズな対応が可能となることが確認されました。
こうした背景を踏まえると、まずはコスト・負担が小さな施策から始め、効果を見極めながら段階的に投資を行う戦略も有効だと考えます。例えば、HOT PEPPER Beauty上に英語クーポンを掲載することによって追加の費用をかけずにインバウンド客を対象とした集客・接客の試行が可能となります。このような取り組みは、今後の本格的な対応の可否を判断する一助となるでしょう。
(『ホットペッパービューティーアカデミー』研究員 田中 公子)
■調査概要
調査名 :「美容サロンにおけるインバウンド実態調査(2024年12月)」
調査手法:サロンボードアンケート
調査期間:2024年12月25日~2025年1月8日
調査対象:美容室、理容室、ネイルサロン、エステサロン、リラクゼーションサロン、アイビューティーサロンのサロンオーナーおよび施術者
有効回答数:1,373
※図表内の%の値は小数第2位を四捨五入しているため、差分や合計値において、単純計算した数値と合致しない場合がある。
※年間平均客数は、単一回答の各選択肢を以下の通り「年あたり」の人数として数値化し、その平均値を求めた。

<美容サロンにおけるインバウンド市場規模>
2024年:美容サロンジャンル別の1店舗あたり年間平均インバウンド来客数(※2)×サロン店舗数(※3)×平均客単価(※4)で算出
2030年:店舗数を2024年と同一とし、1店舗あたり年間平均インバウンド来客数※5・平均客単価※6を変数として試算
(※2) 美容サロンジャンル別の1店舗あたり年間平均インバウンド来客数(2024年)
(サロンボードアンケートより試算)ヘアサロン2.93人、リラクゼーションサロン2.66人、エステサロン0.96人、ネイルサロン2.76人、アイビューティーサロン3.74人
(※3) サロン店舗数(2024年)
ヘアサロン:美容室+理容室の全国38.4万店舗(厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例」より)
リラクゼーション・エステサロン等:2025年2月17日時点で、HOT PEPPER Beautyに掲載されている「リラクゼーション、エステ、ネイル、アイの美容サロン」(99,861店舗)を、ヘアサロンと同等のHOT PEPPER Beauty掲載率(16.5%)と仮定し、サロン種別HOT PEPPER Beauty掲載店舗数÷掲載率で算出
(※4) 平均客単価(2024年)

※アンケート結果:「美容サロンにおけるインバウンド実態調査(2024年9月)」より
※案分値:1人あたりメニュー選択数を1.5と仮定し、「シャンプー&ブロー」「セット・スタイリング」以外の選択率合計が150%になるように案分
※平均価格:総務省「小売物価統計調査(2023年)」の東京都区部の年平均価格を使用。「トリートメント・ヘッドスパ」「エクステンション」はホットペッパービューティーアカデミーが設定したもの
リラクゼーション・エステサロン等:

ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2024年上期」より各ジャンルの加重平均を算出し平均客単価として設定
(※5) 1店舗あたり年間平均インバウンド来客数(2030年)
ヘアサロン:
2030年の国別インバウンド来客数(予測値)×国別の美容室訪問率(本調査の各国ごとの美容室訪問率と2024年と同値と仮定)÷美容室店舗数(2024年と一定と仮定)により、6.39人と試算
リラクゼーション・エステサロン等:
日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」の2016年から2019年のCAGR(年平均成長率)を活用し試算
リラクゼーションサロン4.74人、エステサロン1.72人、ネイルサロン4.94人、アイビューティーサロン6.68人
(※6) 平均客単価(2030年)
ヘアサロン:
総務省「小売物価統計調査(2018年および2023年)」より、2018年から2023年の「カット」「カラー」「パーマ」のCAGR(1.8%)を活用し11,800円と試算
リラクゼーション・エステサロン等:
ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2018年上期」~「美容センサス2024年上期」より各ジャンルの加重平均を算出し平均客単価のCAGRを活用して試算

■『ホットペッパービューティーアカデミー』とは
美容に関する調査研究機関。「美容の未来のために、学びと調査・研究を」をビジョンに2014年に開校しました。美容サロンのマネジメントやマーケティングを学ぶ「経営セミナー」、美容センサスなどの「調査研究」、訪問美容・女性活躍・SDGsなどの情報提供・イベント開催などをはじめとした「サステナビリティ活動」を柱に、全て無料で美容業界へ情報発信しています。これらの活動により、美容業界の成長に寄与する場の提供を目指しています。
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