小児・AYA世代の骨肉腫患者さんに対する適正な標準治療を証明術前化学療法の効果が乏しい方にも4剤併用療法(MAPIF)ではなく、3剤併用療法(MAP)を推奨~JCOGによる研究成果~
〔国立研究開発法人国立がん研究センター, 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター, 国立大学法人岡山大学病院, 日本臨床腫瘍研究グループ〕

国立研究開発法人国立がん研究センターと独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター、国立大学法人岡山大学病院、日本臨床腫瘍研究グループの共同プレスリリースです。
<発表のポイント>
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転移がない小児・AYA世代の高悪性度骨肉腫患者さんの手術前後の化学療法として、3つの抗がん剤を合わせたMAP療法が標準治療となっていますが、術前MAP療法の効果が乏しい患者さんに対しては、抗がん剤イホスファミド(IF)を追加した4剤でのMAPIF療法が術後の化学療法として広く行われています。
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しかし、このMAPIF療法でのIFの上乗せ効果は必ずしも明らかではなく、またIFを追加することによる治療期間の延長や新たな副作用の発症も懸念されていました。
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そこで、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は、術前のMAP療法の効果が乏しい患者さんに対する術後のMAP療法とMAPIF療法の生存期間と副作用を比較するランダム化比較試験を行いました。
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本試験の結果、術後のMAP療法へのIFの上乗せ効果は認められず、かえって副作用が強くなることが示唆されました。このため、転移のない高悪性度骨肉腫の患者さんに対する術後化学療法は、術前MAP療法の効果が乏しくても、MAP療法の継続が推奨されることを示しました。
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本試験の成果は、小児・AYA世代の骨肉腫患者さんにおける標準治療を示したことが世界的に評価され、医学雑誌「Journal of Clinical Oncology」に掲載されました。
◆概 要
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院(所在地:東京都中央区、病院長:瀬戸泰之)が、中央支援機構(データセンター/運営事務局)を担い支援する日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOGジェイコグ)では、科学的証拠に基づいて患者さんに第一選択として推奨すべき最善の治療である標準治療や診断方法等を確立するため、専門別研究グループで全国規模の多施設共同臨床試験を実施しています。
この度、JCOG骨軟部腫瘍グループは、全国34施設の協力により、転移のない小児・AYA世代に発生した高悪性度骨肉腫注2の患者さんを対象として、術前化学療法の効果が乏しいと判断された際に、術後化学療法の変更が適正かどうかを検証するランダム化比較試験(JCOG0905)を行いました。
転移のない小児・AYA世代に発生した高悪性度骨肉腫の患者さんに対しては、腫瘍の切除術に加え手術前後にメトトレキサート(M)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)(A)、シスプラチン(P)の3剤を併用する抗がん剤治療(MAP療法)が標準治療の一つとして確立しています。しかし、顕微鏡で切除した腫瘍の観察を行い効果が乏しいと判断された場合は、手術後にイホスファミド(IF)を追加した4剤でのMAPIF療法が広く行われています。しかし、このMAPIF療法の上乗せ効果は必ずしも明らかではなく、IFを追加することにより治療期間が延び、新たな副作用の発症も懸念されるため、MAPIF療法の上乗せ効果を検証するランダム化比較試験を行いました。
本試験の結果、MAP療法に対するMAPIF療法の上乗せ効果は認められず、IFを追加することでかえって副作用が強くなることが示唆されました。このため、転移のない小児・AYA世代に発生した高悪性度骨肉腫の患者さんに対する抗がん剤治療は、術前化学療法としてMAP療法の効果が乏しい場合でも術後にMAP療法の継続が推奨されることが示されました。
本試験の成果は、小児・AYA世代の骨肉腫患者さんにおける標準治療を示したことが世界的に評価され、医学雑誌「Journal of Clinical Oncology」に2025年3月26日付(日本時間3月27日)に掲載されました。
JCOGでは、がん患者さんにとっての最善の医療を確立するための臨床試験を今後も行ってまいります。

◆論文情報
雑誌名: Journal of Clinical Oncology
タイトル: Methotrexate, Doxorubicin, and Cisplatin Versus Methotrexate, Doxorubicin, and Cisplatin + Ifosfamide in Poor Responders to Preoperative Chemotherapy for Newly Diagnosed High-Grade Osteosarcoma (JCOG0905): A Multicenter, Open-Label, Randomized Trial
著者: Hiroaki Hiraga, Ryunosuke Machida, Akira Kawai, Toshiyuki Kunisada, Tsukasa Yonemoto, Makoto Endo, Yoshihiro Nishida, Akihito Nagano, Keisuke Ae, Shinichirou Yoshida, Kunihiro Asanuma, Junya Toguchida, Taisuke Furuta, Robert Nakayama, Toshihiro Akisue, Toru Hiruma, Takeshi Morii, Hideki Nishimura, Koji Hiraoka, Masanobu Takeyama, Makoto Emori, Satoshi Tsukushi, Hiroshi Hatano, Hiroyuki Kawashima, Kazuo Isu, Kazuhiro Tanaka, Tomoko Kataoka, Haruhiko Fukuda, Yukihide Iwamoto, Toshifumi Ozaki
掲載日: 2025年3月26日付(日本時間3月27日)
DOI : 10.1200/JCO-24-01281
URL : https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO-24-01281
◆研究資金
研究費名(支援先):厚生労働科学研究費補助金
研究事業名:疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究課題名:高悪性度骨軟部腫瘍に対する標準治療確立のための研究
研究代表者名:岩本幸英
研究費名(支援先):日本医療研究開発機構委託研究開発費
研究事業名:革新的がん医療実用化研究事業
研究課題名:高悪性度骨軟部腫瘍に対する標準治療確立のための研究
研究代表者名:尾﨑敏文
研究費名(支援先):国立がん研究センター研究開発費
研究事業名:革新的がん医療実用化研究事業
研究課題名:成人固形がんに対する標準治療確立のための基盤研究
研究代表者名:大江裕一郎
◆詳しい研究内容について
小児・AYA世代の骨肉腫患者さんに対する適正な標準治療を証明術前化学療法の効果が乏しい方にも4剤併用療法(MAPIF)ではなく、3剤併用療法(MAP)を推奨~JCOGによる研究成果~
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r6/press20250407-1.pdf

◆本件お問い合わせ先
<研究に関するお問い合わせ>
国立病院機構北海道がんセンター 骨軟部腫瘍科 平賀博明
電話番号:011-811-9111(代表)
<日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)に関するお問い合わせ>
国立がん研究センター中央病院 臨床研究支援部門 研究企画推進部 多施設研究支援室
<広報窓口>
国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表)
国立大学法人岡山大学 総務部 広報課
電話番号:086-251-7292
独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター 管理課
電話番号:011-811-9111(代表)
<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
岡山大学病院 新医療研究開発センター
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/
<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
TEL:086-235-7983
E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8463
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
<岡山大学の研究機器共用(コアファシリティ)などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 機器共用推進本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8745、086-251-8746
FAX:086-251-8748
E-mail:cfp◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://fspp.kikibun.okayama-u.ac.jp/
<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
E-mail:start-up1◎adm.okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://venture.okayama-u.ac.jp/
岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
岡山大学統合報告書2024:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002801.000072793.html
岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):https://youtu.be/Qdqjy4mw4ik
岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw
産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2025年4月期共創活動パートナー募集中:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003002.000072793.html


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