灯台を活用した地域活性化に取り組む15地域の関係者らが集う「海と灯台プロジェクト2024 成果報告会」を開催しました
2025年2月20日(木)日本財団ビル(東京都港区)
⽇本財団「海と灯台プロジェクト」を推進する⼀般社団法⼈海洋⽂化創造フォーラムは、2025年2月20日(木)に、灯台利活用に取り組む全国15地域の関係者らが一堂に会し、今年度の取り組みや今後の展望を発表する「海と灯台プロジェクト2024 成果報告会」を開催しました。このイベントは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として、灯台を中心に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、異分野と異業種、⽇本と世界をつなぎ、新たな海洋体験を創造していく「海と灯台プロジェクト」の助成を受けて実施したものです。
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<イベント概要>
開催趣旨
当法人は今年度、灯台の存在価値を高め、灯台を起点とする海洋文化を次世代へと継承していくことを目的に、灯台の調査や施設整備などを取り組む団体に対して資金面および企画運営の助言等のサポートを行う「新たな灯台利活用モデル事業」を行いました。これにより全国15地域で自治体やまちづくり団体、地元企業などが中心となり、灯台に関する調査研究や灯台を利活用したイベント・地域活性化事業などが展開されました。
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「海と灯台プロジェクト2024 成果報告会」は、その成果を振り返り、得られた知見を共有するために開いたもので、各地域の事業担当者・関係者が⼀堂に会し、今年度の取り組み概要と得られた成果、今後の課題や展望などを発表しました。
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イベント名 |
海と灯台プロジェクト2024 成果報告会 |
日時 |
2025年2⽉20⽇(木)13:00~17:00 |
会場 |
⽇本財団ビル2階⼤会議室(東京都港区⾚坂1-2-2) |
登壇者 |
○調査・利活用の成果報告 「新たな灯台利活用モデル事業」採択15事業者 (※団体名は枠外最下部に記載) ○コメンテーター 山本 徹(一般社団法人海洋文化創造フォーラム 代表理事) 池ノ上 真一 氏(北海商科大学 教授) 亀山 淳史郎 氏(株式会社SIGNING 経営補佐) ○総括 海野 光行氏(日本財団 海洋事業部 常務理事) |
参加者 |
灯台利活用に取り組む各地域の代表者と灯台の利活⽤に関⼼をもつ⾃治体・企業・団体関係者など100名 |
日程 |
12:30~ 開場 13:00~ 開会、「海と灯台プロジェクト」概要説明 13:10~16:30 全国15地域で行った調査・利活用の成果報告、総括 |
主催 |
⼀般社団法⼈海洋⽂化創造フォーラム |
全国15地域の灯台に関する調査・利活⽤の成果発表
日本財団「海と灯台プロジェクト」の助成金を活用して「新たな灯台利活用モデル事業」に取り組んだ全国15地域の代表者が登壇し、今年度の取り組みと成果について発表しました。
青森県大間町の「大間埼灯台利活用コンソーシアム」は、本州最北端の地として知られている大間崎からさらに北、沖合600mに浮かぶ無人島「弁天島」に立つ大間埼灯台の事例を発表しました。弁天島と大間埼灯台は、距離的には陸から近いにもかかわらず、激しい潮流や暗礁に阻まれ、漁船でさえ近付くのが容易でないことから、これまでは「岬から眺めるだけ」に留まっていたといいます。
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そこで同団体は、船でしか行けないことを逆手に取った「漁船での灯台クルーズ」や、灯台の白黒配色をモチーフにしたオリジナル商品の開発など複数の実証事業を展開し、弁天島と大間埼灯台の観光活用を検証。一定の知見が得られたことから、今後は「日本一おもしろい灯台クルーズ」の実現と事業化を目指していくと話しました。
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ビジネスを通して社会課題の解決に取り組む亀山淳史郎さんは「灯台があるおかげで有名な大間のマグロがあることが伝わるので、ストーリーはバッチリ。白黒のファッションもキマっていて、クリエイティブもバッチリ」と評価。「灯台クルーズにコンテンツを増やすための投資をして、行った先の魅力をさらに磨いてほしい」と応援の言葉を述べました。
北海道積丹町の「積丹町地域活性化協議会」は、年間で数十万人が訪れる観光地「神威(かむい)岬」に立つ神威岬灯台を、新たな「学ぶ観光」の軸として活用するための取り組みについて発表。知的好奇心を満たす旅として、普段は立ち入りできない夜の灯台を訪ねるナイトツアーを実施したほか、神威岬灯台に刻まれた歴史を伝える教科書式の普及用パンフレットや、灯台を訪れた観光客に地域の伝説や灯台守の話などを伝える「探求マップ」の制作などを行ったことを説明しました。
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また、かつて同灯台で使われていた、国内に唯一現存する第一等不動レンズの展示室を改修するとともに説明パネルを追加し、訪れた人がこれまで以上に灯台への理解を深めることができるようになったことも紹介されました。発表の結びには、「神威岬灯台を学びの拠点として活用していくためには長期的な計画が必要であることが分かった」として、積丹町内に神威岬灯台を活用するための株式会社を設立すると表明。会場から拍手が起こりました。
都市・地域計画やまちづくり、観光などを専門とする池ノ上真一さんは、徒歩でなければたどり着けず、風が強い日は道が閉鎖されて近付けないという神威岬灯台の特徴を踏まえ、「到達が困難であるのもおもしろさのひとつなので、それが活かされることを期待したい」とコメント。「積丹半島は北海道の歴史の中で重要な場所。現地を訪れただけでは伝わりにくい歴史やエピソードを伝えるには語り部が必要で、積丹町地域活性化協議会の取り組みや体制はとても大切。若い皆さんの活躍に期待したい」とエールを送りました。
長崎県平戸市の「灯台からのメッセージ運営委員会」は、長崎県の陸路で行ける最北端、平戸市生月町(生月島)にある2つの灯台「大バエ鼻灯台」と「生月長瀬鼻灯台」を軸に、風景・歴史・文化・人々をつなぎ、未来に希望をつなげるための取り組みについて発表しました。
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同委員会は、2022年に大バエ鼻灯台を舞台にした灯台マルシェを初めて開き、翌年には島の南北にある2つの灯台で同時にイベントを開き、灯台間を行き来できる手段を提供することで一体感を醸成することに成功したといいます。そして3年目となる今年度は、灯台の灯りとともに、キッチンカーでの食事や灯台から見る夕日と星空、ナイトシアターなどを楽しむイベント「灯台ナイトカフェ」の開催や、2つの灯台をつなぐ乗り物の導入、灯台周辺の安全柵の修繕や整備などを行ったことが報告されました。
この事業はもともと、長崎県出身で東京在住のデザイナー、中尾和美さんが「地元を何とか盛り上げたい」と始めたものでしたが、今年度からは生月島でキャンプ場を運営する地元の若手経営者、久保清悟さんと川本幸平さんの2人が中心となって引き継ぐこととなり、「灯台デモクラシー」をキーワードに灯台を起点に過疎化対策や空き家問題など幅広く地域の問題に取り組む構想を描いています。発表の最後に久保さんと川本さんは「この事業の一番の成果は、私たち自身です。皆さんの素晴らしい成果報告をどんどん取り入れて、生月を盛り上げていきたい」と力強く宣言しました。
当法人の代表理事を務める山本徹は、生月町(生月島)が平戸市と合併する前に同町の活性化事業に携わったことがある経験を踏まえ、「生月は島の東西で地形も景色もまったく異なるので、これをつなげることができたらと当時考えていた。ここまで過疎化するとは予想していなかったが、今皆さんがそれを実現していると聞き、素晴らしいことだと感じた。観光客に島の東西両方を見てもらえるよう、がんばってほしい」と激励しました。
2024年度の「海と灯台プロジェクト」総括と今後の課題
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15地域の成果発表に続き、「海と灯台プロジェクト」の総指揮を執る日本財団の海野光行常務理事が登壇し、今年度の取り組みについて総括しました。海野常務は「皆さんの灯台利活用の取り組みを聞いて、『多様性』と『繋がり』というキーワードを感じた」とコメント。民家の近くにある灯台と人里離れた僻地にある灯台では活用の手法が異なることを指摘し、「その灯台の個性を発見するために、一つ一つの灯台の価値を掘り下げることが、灯台の利活用を進めるうえで大切な要素になる」と提言しました。
続けて、実際の灯台が近隣の灯台と「チーム」を組んで海上の安全を守っていることを引き合いに出し、「皆さんの個々の活動を点から線に繋げ、一体感ができた時に灯台の魅力は最大化され、灯台自体の価値も上がる」とプロジェクトの未来像を描きました。
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さらに、「自然」「文化」「食」「気候」の4つが観光立国になるための要素とされていることに触れ、灯台の魅力やおもしろさにまだ気付いていない人たちを惹きつけるため、それぞれの要素と「灯台」を掛け合わせ、さらに「旅」を掛け合わせることで、人々の心と足を灯台に向かわせることを提言。「人を動かすのは、遊び心やワクワクする気持ち。『楽しい』『おもしろい』と感じる瞬間こそが人を惹きつけ、行動を生み出す」と話し、「灯台の魅力をより多くの人に届けるために、『意義』と『楽しさ』の両方を大切にしていきましょう」と呼びかけました。
調査・利活用の成果報告 発表団体名/活動対象の灯台名
青森県大間町「大間埼灯台利活用コンソーシアム」/大間埼灯台
青森県東通村「尻屋埼灯台活用協議会」/尻屋埼灯台
北海道網走市「能取岬灯台コンソーシアム」/能取岬灯台
千葉県南房総市「野島埼灯台利活用プロジェクト委員会」/野島埼灯台
静岡県伊東市「門脇埼灯台観光推進コンソーシアム」/門脇埼灯台
秋田県男鹿市「入道埼灯台利活用事業実行委員会」/入道埼灯台
高知県室戸市「室戸岬灯台・旧官舎及び周辺敷地利活用共同体」/室戸岬灯台
北海道積丹町「積丹町地域活性化協議会」/神威岬灯台
宮崎県日向市「細島灯台灯りの輪」/細島灯台
三重県志摩市「安乗埼灯台観光活性化推進コンソーシアム」/安乗埼灯台
愛知県美浜町「野間埼灯台ポータル化実行委員会」/野間埼灯台
富山県黒部市「生地地区灯台利活用プロジェクト実行委員会」/生地鼻灯台
愛媛県伊方町「佐田岬灯台利活用推進コンソーアム」/佐田岬灯台
島根県出雲市「日御碕・鷺浦灯台利活用プロジェクトコンソーシアム」/出雲日御碕灯台
長崎県平戸市「灯台からのメッセージ運営委員会」/大バエ鼻灯台・生月長瀬鼻灯台
※成果発表会の動画および報告書は、3月末までに、公式Webページで公開します。
https://toudai.uminohi.jp/model-2024/
<団体概要>
団体名称:一般社団法人海洋文化創造フォーラム
URL:https://toudai.uminohi.jp/
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日本財団「海と灯台プロジェクト」
人と海は、時間的にも空間的な意味においても「灯台」を境に関わってきました。航路標識として、従来の船舶交通の安全を担うという重要な役割から広がりつつある灯台。その存在意義について考え、灯台を中⼼に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、異分野と異業種、⽇本と世界をつなぎ、新たな海洋体験を創造していくプロジェクトです。海と灯台プロジェクトは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
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日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
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