地域と人がつながり海の食文化のこれからを考える “海×食の課題に向き合うミーティング”を開催
【日時】2025年3月11日(火) 【場所】KDCコワーキングスペース4F
一般社団法人海と食文化フォーラムは3月11日(火)、「地域」「海」「食」に関わる活動をするプレイヤーの交流を目的として「海×食の課題に向き合うミーティング」を東京都新宿区にて開催いたしました。
「難しい“海の課題”はどうすればみんなに伝わる?」をテーマに、青森県大間町、福島県いわき市、鹿児島県肝付町からお越しいただいたゲストスピーカーの事例紹介や、海と食に関わるイベント参加者全員でのワーキング交流会を実施し、計25名が参加しました。このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

イベント概要

名称 |
海×食の課題に向き合うミーティング 〜「地域」「海」「食」の活動をする人たちの交流会〜 |
日時 |
2025年3月11日(火)14時~17時 |
会場 |
KDC コワーキングスペース (東京都新宿区百人町1丁目10−15 JR新大久保駅ビル 4F) |
参加人数 |
25名 |
主催・共催 |
【主催】一般社団法人 海と食文化フォーラム 【共催】日本財団 海と日本プロジェクト |
事例紹介(1) 難しい”海の課題”を楽しく伝えて地域に根付かせた「大間アゲ魚っ子キャンペーン」
(一社)海と大間の未来つくり隊 島康子氏より、青森県大間町における『まちおこしゲリラ』という独自の活動スタイルで、地域の海の課題解決に取り組んできた事例をお話しいただきました。

島氏は「これまで町民スター化計画と称して、町民をポスター登場させて人目に付くように工夫したり、さらに『マグロ一筋』と名入れをしたTシャツやパンツ等のグッズを作り“面白さ”を伝播することでまちおこしゲリラ活動を行ってきました。
海と食の活動のきっかけは、海の町・大間におけるマグロの資源管理やイカの不漁という漁業の問題と、子どもたちの魚離れ・海離れという2つの課題があったから。子どもが主役となって町民全体に広げていく『大間アゲ魚(さがな)っ子キャンペーン』は、海の課題を解決していく活動となり、町おこしの原動力となりました。大間町の子どもたちは学校給食がないため食育の機会も乏しく、海の町に住んでいるのに魚を食べなくなっていました。どのようにしたら魚を食べて海に興味を持ってもらえるか。大間と言えば赤身のマグロですが、地域でとれる注目されてこなかった白身魚をミンチにして油で揚げて、食べやすいフライドフィッシュとして子どもたちに提供をしました。地元の魚を使っての魚っ子メニュー開発、学校と連携して学校教育に“楽しさ”を波及、飲食店と連携して魚っ子メニューの普及と活動を広げていきました。
頭にキャンペーンキャラクター『アゲごんべ』の被り物をつけ、“アゲアゲポーズ”にて“海の課題”を楽しく面白く伝え、食を通じて豊かな海を守る心をもった『海の子』を育てる活動を展開してきました。今では、みんなが『アゲっ子』と親んでくれるようになり、学校長や教育長が頼んでもいないのに“アゲアゲポーズ”をするくらい活動が浸透してきています。」と語りました。
事例紹介(2) 観光資源から“未利用魚”を出さないブランディング「いわき常磐もの」
次に、福島県いわき市水産振興課 阿部翔馬氏より「いわき常磐もの」のブランディング成功事例についてお話しいただきました。

阿部氏は「いわき市の海は、親潮(寒流)と黒潮(暖流)出会う“潮目の海”で豊かな漁場となっており、“宝の海”とも呼ばれております。『いわき常磐もの』という古くからの言葉を用いて地域ブランド化を推進し、市内の水産関係者の意識向上の醸成をしてきました。地域ブランド化をより魅力的に情報発信することでいわき市産の水産物の流通量拡大につながりました。今は豊洲に移転をした築地市場の関係者の99%が「常磐ものは美味しい」とアンケートで回答するほどの高評価となっています。いわき市内外でのプロモーション事業を展開し、ブランド力および認知度向上にさらに努めています」と語りました。
「いわき常磐もの」のブランディングのポイントは2点あると説明する阿部氏。「まずは、いわき市で水揚げされた水産物、いわき市で加工された水産加工商品、それに関わった人々すべてが「いわき常磐もの」として捉えていることです。そしてもうひとつは、未利用魚も含めたいわき市で獲れるすべての魚が「いわき常磐もの」としてブランディングを推進していることです。」
また「いわき市では『いわき七浜さかなの日』をはじめとした魚食普及推進事業をおこなっています。全国でも珍しい「魚食条例(いわき市魚食の推進に関する条例)」を制定して魚食を推進、市内の協力店数は90事業者を超え、『毎月7日は、いわき七浜さかなの日!』というキャッチフレーズのもと、毎年3月7日には魚食イベントも開催をして魚食の推進を図っています」と紹介しました。
事例紹介(3) “未開の海の資源”を面白がる・美味しくする・楽しむことを実践「昌徳丸 U‐Loco project」
最後に、有限会社昌徳丸から、U‐Loco projectと名付けて活動している福留慶 氏にお話しいただきました。

前職の行政では変えられなかったことを「浜」から変えていきたいという強い意志を持ち、現在はコーディネーターという立場で、漁師さんが普段手の届かない販売促進や環境保全などの仕事をコーディネートしていきたいと話す福留氏。
「有限会社昌徳丸は、鹿児島県肝付町の東部に位置する内之浦漁港にて約200年続く定置網漁を営む小さな会社です。内之浦地区おける定置網1つあたりでイカ類をはじめとした大衆魚の漁獲量は年々減少の一途をたどっています。そこで、未利用魚や低利用魚など認知度の低い魚を活用するサービス展開を検討する中で、加工品を検討していたが、船長の『魚丸ごとの姿を見てもらいたい』という声を耳にし、“鮮魚BOX”のサービスをスタートさせました。鮮魚BOXは開けてみるまで何が入っているかわからないサービスですが、思っていたよりも購入していただける人が多く、リピーターも多く毎週購入していただける方もいます。鮮魚BOXの“非日常感”が受けているとのことで、最初は捌きやすい魚をリクエストしていたお客さんも、だんだんと扱いが難しい魚を欲しがるようになっています。魚の扱いに関して“消費者が育つ!”という実感があります。今では月に1トン近くの鮮魚ボックスを発送できるまでになりました。未利用魚・低利用魚・大衆魚を分け隔てなく地魚=ロコフィッシュ(Local Fish)と呼び、鮮度の良い状態で美味しい食べ方と一緒に食卓へ届けることをモットーとして活動を今後も推進していきます」と語りました。
3つの事例に関わる食材を使った試食メニューを提供
会場では、事例紹介をした3つの地域の食材を使用した、料理家・本多まゆみ先生のオリジナルレシピが提供されました。

◯メヒカリと菜の花のマリネ(手前 / 福島・いわき産)
◯2種類のソースで味う魚っ子ボール 〜春キャベツのタルタル ・クリームディップ〜
(右奥 / 青森・大間産)
◯アカエイのソテー(左奥 / 鹿児島・内之浦産)
ワーキング交流会:テーマ「難しい“海の課題”はどうしたらみんなに伝わる?」
ワーキング交流会は、3つの事例をテーマにテーブルごとに分かれて、参加者も交えたディスカッションを行いました。参加者からはゲストスピーカーへの質問やそれぞれの立場からの意見など、今後の連携につながる活発な議論が行われました。

・子どもたちへの教育効果を定量的に明らかにできそうだと思った(大間アゲ魚っ子)
・巻き込む・巻き込まれるという形ではなく「みんなで一緒にやる」という関係性が良い(大間アゲ魚っ子)
・関わる人たちもブランドを構成する一つとして位置付けている点が発見(いわき常磐もの)
・ある一つの魚種をブランディングするのではなく、地域全体のブランディングであるため持続可能的(いわき常磐もの)
・単に未利用魚を活用することだけが重要なのではなく、しっかりと価値をつけ魚価をあげるところまで意識している点が本質的だと思った(U‐Loco project)
・未利用魚として売るのではなく「獲れた魚で食卓を考える」という豊かな食文化を発信したいという想いに共感(U‐Loco project)
参加者の感想など
・海と魚食について、本気で考え、本気で行動している人がいる。3人の方の活動、事例はとても参考になりました。やはり「人」がみんなを動かすのだなと。とにかく「行動すること」が大事だと学びました。
・それぞれの取り組み内容を当事者から詳しく聞くことができた。ワーキング交流会でも質問が活発に飛び交っていてとても学びがあり、良い交流会でした!
・産地の方、海と関わる取り組みをされている方々とつながることができ、今後の企画に広がりが生まれると思います。
・海の環境変化、世の中の変化に対してできる事はごまんとある。自分も事業として継続できるような取り組みを考えたいと思いました。
<団体概要>
団体名称:一般社団法人 海と食文化フォーラム
活動内容:海の問題解決に向けたアクションの輪を広げることを目的として、食文化を切り口にした海洋教育を中心に、海と人とのかかわりについて学び、海洋がもたらす恩恵や未来、さらに海洋の課題について理解を深めるために様々な事業を行います。

日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
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