WOWOW:トニー賞コンサート in TOKYO「東京でブロードウェイの風が吹いた」
ミュージカルの魅力に酔いしれる“春の夜の夢”
3月18日(土)、東京国際フォーラム、ホールAにて行われ、WOWOWで生中継された「トニー賞コンサート in TOKYO」。5000人程入る会場は、びっしりと埋め尽くされ、満席。世界最高峰の演劇賞、トニー賞が70年の歴史の中で初めて日本で“公認”したコンサートであり、ブロードウェイから来日したゲストも本気度が違う。
渡辺謙と共演したミュージカル「王様と私」でトニー賞ミュージカル主演女優賞に輝いた、ブロードウェイの歌姫ケリー・オハラと、「glee/グリー」のウィル・シュースター役で一躍世界的スターになったマシュー・モリソンが初来日。主演をすればチケットが完売する人気、実力共にトップクラスのスターがそろう貴重な機会だ。日本からは、日本ミュージカル界のプリンス井上芳雄と、数々の名作ミュージカルでヒロインを演じる濱田めぐみが出演。日米のトップスターが夢のコラボレーションで、一夜限りの“春の夜の夢”を見せてくれたコンサートが、4月27日(木)にも再びご覧いただける。
■ミュージカルへの愛が花咲く〜名作の魅力が詰まった前半
夢の舞台の幕が開くと、まず、井上芳雄が登場。「キャバレー」の “Willkommen”で観客を出迎える。このナンバーは、同作品のMC役が客を夢の世界へ誘う曲として有名で、井上はMC役さながらの軽快なトークと「ようこそ、悩みなんてどこかに捨てちゃえ」という歌で、観客をミュージカルの世界へと引き込んでいく。
そこからマシューとケリーが一気にブロードウェイの風を吹き込む。まず、2人が歌うのは「南太平洋」からのナンバーだ。ケリーとマシューは、過去2回共演している。その1作が、1950年にトニー賞を受賞した名作「南太平洋」だ。ちなみに、もう1作は、「ライト・イン・ザ・ピアッツァ」。こちらは、2人は初めてこの作品でトニー賞にノミネートされた思い出の作品。いわば彼らの出世作だ。もちろん、後半で思い出の曲を披露してくれる。
ケリーは、美しいソプラノとエレガントな佇まいで、古典作品を得意とする歌姫。この「南太平洋」を始め、「回転木馬」「サウンド・オブ・ミュージック」、そして「王様と私」など名作ミュージカルを世に送り出した作詞作曲コンビ、ロジャース&ハマースタイン作品の曲は彼女の十八番だと言える。初来日ということもあり、彼女は自己紹介をかねて名作古典「回転木馬」より“If I Loved You”、そして「サウンド・オブ・ミュージック」より“Sound of Music”を惜しみなく披露。その美しい歌声は、5000人の観客を包み込む。大舞台で主演を張り続けているブロードウェイ・トップの実力で、会場を完全に魅了する。
一方、マシューは軽快なダンス・パフォーマンスと歌で会場を盛り上げる。「マイ・フェア・レディ」「ファニー・ガール」と名作ミュージカルからのナンバーを披露すると、前半から早くも濱田めぐみと「グリース」から” You're the One that I Want/愛のデュエット」を熱唱!映画版ではオリビア・ニュートン・ジョンとジョン・トラボルタが歌った有名なナンバーだ。そしてポップなナンバーを得意とするマシューが、ミュージカル映画ファンに贈ってくれた特別なナンバーが「雨に唄えば」。土砂降りの雨の中、タップダンスを踊りながら恋の喜びを歌う名シーンを再現してくれる。
そのほか、濱田が全身全霊で切なさを歌いあげた「レ・ミゼラブル」の“On My Own”や、井上と濱田が歌で演じる「ミス・サイゴン」の“Last Night of the World”などの日本語版ナンバーでも会場を熱くする。ブロードウェイの空気に触れながら、日本語版のミュージカルも楽しめる何とも贅沢な時間だ。それだけでも、心はかなり興奮状態なのに、前半最後はなんと「glee/グリー」から2曲も!しかも、同作のある意味、テーマ・ソングとも言える”Don’t Stop Believing“を4人で熱唱し、会場の熱気も最高潮に!あまりの盛り上がりに「あれ、これで終わりかしら?」と思うほど。それぐらい前半の内容が濃かったのだ。前半だけで、普通のコンサートの内容と同等の濃さ。4人の出演者が、愛おしそうに、大切に名作ミュージカルの名曲を歌う姿に、ミュージカルの素晴らしさと愛が伝わってきた。
■ミュージカルの魅力が咲き乱れる!〜4人の演じる力を味わう後半
ミュージカルの素晴らしさを存分に堪能した前半。さらに後半は、名作ミュージカルの歌に加え、出演者たちが最近、出演したミュージカルからのナンバーを披露してくれる。前半で感じたミュージカルへの愛を深めるかのように、よりそれぞれの演技が楽しめる流れになっている。
まず、「王様と私」よりケリーが2曲。ケリーは、この作品でトニー賞6回目のノミネートにして、念願の受賞を果たした。渡辺謙との共演が賞賛され、授賞式のスピーチでは、彼に「唯一無二の王様。あなたは私の王様よ」と感動的な言葉を送っている。そんな2人の絆を感じる心温まる一幕もあった。渡辺謙からビデオ・メッセージが届いたのだ。「王様と私」の初日のエピソードなど、2人がお互いをとてもリスペクトし合っていることが伝わってきて、続いて歌った“Shall We Dance?”と“Getting to Know You”が、さらに胸にじんわり響く。初めて日本で歌うケリーは、どんな感じのステージになるのか想像もできなかったと告白。彼女は、そんな自分を日本の観客が温かく迎えてくれたと、感謝の言葉を送ってくれた。その気持ちを“Getting to Know You”の歌詞を一部日本語にして伝えてくれる。この曲は、異なる文化の子供たちに「あなたたちを知れば知るほど好きになる」と歌う曲。日本の観客にこの歌を、心を込めて歌ってくれたケリー。本当にブロードウェイのトップスターはイキなことをしてくれる!
さらに後半では、マシューと井上のデュエットによる熱い演技対決や「オペラ座の怪人」より井上とケリーがデュエットなど、次々と名シーンが展開。特にマシューがブロードウェイで一躍注目された「ヘアスプレー」は、なんと彼が一人芝居!メドレーでミュージカルの内容を紹介してくれる。この圧巻のメドレーは、特別なコンサートならではの最高のご褒美だ。
トニー賞に輝く名作ミュージカルから全30曲を演じ切ってくれた4人。その歌の演技から伝わるのは、ミュージカルは言語を超えるということ。だからこそ、ブロードウェイには世界中から人々が感動を求めて足を運ぶのだと改めて教えてくれる。
悲しみや喜び、幸せや人生の大切なことを歌にのせ、1曲ワンシーンを演じ、世界を作り出してくれる4人のスターたち。それは童話集のように大切な寓話が詰まったようなひと時であり、彼らが語り部となってミュージカルの魅力を全身全霊で伝えてくれる夢の舞台だ。もっとミュージカルの魅力を知ってほしい、そんな熱い思いがこもった春の夜の夢。ミュージカル・ファンはもちろん、今までミュージカルにあまり馴染みがなかった人にもぜひ、観てほしい。「この歌、ミュージカルの歌だったんだ!」という発見があるはず!
トニー賞コンサート in TOKYO
4月27日(木)夜8:00 WOWOWライブ
出演:ケリー・オハラ、マシュー・モリソン、井上芳雄、濱田めぐみ
http://www.wowow.co.jp/stage/tonyconcert/
<セットリスト>
1.「キャバレー」より “Willkommen” 井上芳雄
2.「南太平洋」より “You've Got to be Carefully Taught/Some EnchanTed Evening”
マシュー・モリソン
3.「南太平洋」より “Wonderful Guy” ケリー・オハラ
4.「マイ・フェア・レディ」より “On the Street Where You Live” マシュー・モリソン
5.「回転木馬」より “If I Loved You” ケリー・オハラ
6.「ファニー・ガール」より “Don't Rain on My Parade” マシュー・モリソン
7.「ライオンキング」より “Circle of Life” 井上芳雄
8.「レ・ミゼラブル」より “On My Own” 濱田めぐみ
9.「グリース」より “You're the One that I Want” マシュー・モリソン&濱田めぐみ
10.「サウンド・オブ・ミュージック」より “Sound of Music” ケリー・オハラ
11.「雨に唄えば」より “Singin’ in the Rain” マシュー・モリソン
12.「ミス・サイゴン」より “Last Night of the World” 井上芳雄&濱田めぐみ
13.「レ・ミゼラブル」より “Stars ” 井上芳雄
14.「glee/グリー」より “Sway” マシュー・モリソン
15. 「glee/グリー」より “Don't Stop Believing” 全員
16.「王様と私」より “Shall We Dance?” ケリー・オハラ
17.「王様と私」より“Getting to Know You” ケリー・オハラ
18.「シティ・オブ・エンジェルス」より“You're Nothing Without Me” マシュー・モリソン&井上芳雄
19.「シー・ラヴズ・ミー」より“She Loves Me” 井上芳雄
20.「マディソン郡の橋」より“To Build a home” ケリー・オハラ
21.「ヘアースプレー」より “HAIRSPRAY medley” マシューモリソン
WELCOME TO THE 60’S/GOOD MORNING BALTIMORE/NICEST KIDS IN TOWN
BIG, BLONDE AND BEAUTIFUL/WITHOUT LOVE/YOU CAN’T STOP THE BEAT
22.「エビータ」より“Buenos Aires” 濱田めぐみ
23.「グレート・ギャツビー」より“A New Life -Dawn Promises-(「夜明けの約束」)” 井上芳雄
24.「ライト・イン・ザ・ピアッツァ」より “Say It Somehow” ケリー・オハラ&マシュー・モリソン
25.「ファインディング・ネバーランド」より“ Neverland/Stronger” マシュー・モリソン
26.「ファインディング・ネバーランド」より“When Your Feet Don’t Touch the Ground”
マシュー・モリソン&井上芳雄
27.「マイ・フェア・レディ」より“I Could Have Danced All Night” ケリー・オハラMusic:
アンコール===============================
「オペラ座の怪人」より“All I Ask of You” ケリー・オハラ&井上芳雄
“Over the Rainbow” ケリー・オハラ&マシュー・モリソン
「ウエスト・サイド・ストーリー」より“Tonight” 全員
「ドリームガールズ」より“One Night Only” (オーケストラ演奏のみ)
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