WEAVER・河邉徹が母校に凱旋!初の小説「夢工場ラムレス」発売記念講演&サイン会を関西学院大学で開催

株式会社KADOKAWA

2018年11月16日、関西学院大学にて、WEAVERのドラマー・河邉徹の初となる小説『夢工場ラムレス』(株式会社KADOKAWA刊)の発売記念講演&サイン会を行いました。

WEAVER 河邉徹(Dr)が母校・関西学院大学で小説発売記念講演を開催WEAVER 河邉徹(Dr)が母校・関西学院大学で小説発売記念講演を開催

神戸発の3ピースピアノロックバンド・WEAVERの河邉徹(Dr)が、自身初となる長編小説「夢工場ラムレス」を2018年5月23日に発売。これを記念した特別講演&サイン会が、11月16日に母校である関西学院大学で行われた。今回は、講演の模様をレポートすると共に、母校に凱旋を果たした心境や次回作について、講演を終えた河邉のインタビューをお届けしよう。

2009年のデビュー以来、ドラマやアニメ、映画などの主題歌のほか、CMなどへの楽曲提供など精力的に活動してきたWEAVER。同バンドで作詞を手がけてきた河邉が、小説「夢工場ラムレス」で作家デビューを果たした。「夢」をテーマに執筆された本作は、夢の中にある“夢工場の扉”へとたどり着いた4人の主人公の物語を通して、誰もが持つ優しさや後悔、欲望、希望といった心情が独創的な言葉を紡ぎながら描かれている。

学生時代の思い出や学んできた「哲学」について真摯に語る河邉学生時代の思い出や学んできた「哲学」について真摯に語る河邉

当初、本講演は6月に開催が予定されていたが、大阪北部地震の影響で中止に。その振替講演となる。参加できるのは、河邉の後輩にあたる関西学院大学の学生のみ。クローズドかつ特別な講演ということもあり、集まった学生たちは期待に胸を膨らませて開始を待ち望んでいた。

拍手に迎えられ登場した河邉。「なんか不思議な感じだね」と、いつものライブとは異なる環境に、少し照れ臭そうな様子に場が和む。集まった学生一人一人とコミュニケーションをとりながら、先ずは自己紹介。大学3回生の頃にはメジャーデビューを果たして上京。バンド活動と並行して、東京と大阪を往復しながら、卒業までの学生時代を過ごした思い出などを振り返っていく。そして、本題はというと、「哲学」「歌詞」「小説」の3つのテーマで構成。音楽活動と作家としての考えが語られていく。

大学の「ゼミ」形式で、学生とディスカッションするように進められた大学の「ゼミ」形式で、学生とディスカッションするように進められた

1つめのテーマ「哲学」とは、河邉が大学で専攻していた学問である。集まった学生の中で、哲学を先行している学生がいなかったため、より興味を持ってもらおうと、どういった学問であるかをわかりやすく丁寧に解説。幼少期に「心ってどこにあるんだろう?」と疑問に思ったことを機に、哲学を学ぶ道を選んだという経緯、なにより哲学の面白さ、学ぶことでどういった場面で役立つのかなど、学生と会話するように楽しみながら語られていく。

続く、2つ目のテーマ「歌詞」へ。大学で「哲学」を学び、論理的に考える力を養ってきたからこそ、今のバンド活動と彼の作詞に大きく生かされていることを明かす。実際に、楽曲「心の中まで」を聴きながら、スクリーンに映し出された歌詞にある哲学的なとらえかたを解説する場面も。その上で、歌詞の魅力について、「論理的に考えて答えを出す哲学と違って、歌詞は心の通ったものなら論理的でなくても音の力が合わさって人を感動させることができる」と河邉。

「哲学」と「歌詞」の間に、「小説」があると、河邉「哲学」と「歌詞」の間に、「小説」があると、河邉

そして、3つめのテーマ「小説」は、「哲学」と「歌詞」の間にあり、いずれとも親和性があるのだという。哲学を学び、その考えを作詞に生かしてきた河邉だが、「歌詞には音に合わせた言葉の数など制限がある。そうじゃないところで、音楽がないところで戦ってみたらどうなるのか?」と関心を抱いたことがきっかけに、小説の執筆にのめり込んだのだという。そして、大学で学んだ哲学の中でも、特に研究してきた「夢」をテーマに、「夢工場ラムレス」を書き上げたのだという。

また、小説の執筆を始めたことで、変わった意識があったそう。ごく普通の家庭で不自由なく育ち大人になった、決して特別ではない自分に、ずっと劣等感を抱いてきたという河邉。デビューを果たして上京するも、周りには名だたる先輩アーティストや活躍している同世代ばかりという環境に、「みんな才能があるのに、努力を惜しまない人ばかり」と焦燥感にかられたという。音楽も作詞も「自分じゃなくてもいいのでは?」と感じていたところで小説に出会い、「そんな風に悩んでいるところまでひっくるめて自分なのでは?特別にはなれない自分にしか書けない物語があるのでは」と気づけたことで、視界が開けたのだとか。

河邉の過ごした学生生活、バンド活動、そして作家デビューは、全てがリンクしているということが知れる講演だった河邉の過ごした学生生活、バンド活動、そして作家デビューは、全てがリンクしているということが知れる講演だった

「大学でデビューしたりして変わった学生時代に思えるかもしれないけど、意外と普通の人なんです。みんなと一緒で、今もどうしたらいいか悩むことがたくさんある」と、あくまでも特別じゃないと語る河邉。そんな彼が等身大で紡いだ言葉だからこそ、WEAVERの音楽が多くの人の共感を得て胸を打つのではないか。そんな彼の実体験がベースにある小説だからこそ、リアルな描写がより読み手をファンタジーな作品世界に没入させるのではないか。そんな彼の創作の原点を知ることができる、講演となっていた。

質疑応答では、学生たちから等身大の疑問が続々と寄せられた質疑応答では、学生たちから等身大の疑問が続々と寄せられた

最後には質疑応答タイム。就職活動や卒業論文の相談といった学生ならではの悩み、またバンドのメンバーとの関係性や作詞における考え方など、思い思いの質問が学生から投げかけられ、すべてに真摯に答える河邉。講演時間と変わらぬぐらい、たっぷりと学生の質問に応えたあとはサイン会を実施。記念撮影にも応え、自身の手がけた小説をきっかけに、母校の後輩たちと普段の音楽活動とはまた違った密な時間を過ごした。

サイン会では、一人一人と向き合い丁寧に言葉をかける姿が印象的だったサイン会では、一人一人と向き合い丁寧に言葉をかける姿が印象的だった

講演を終えた、WEAVER河邉徹にインタビュー!
小説の執筆を経た今だからこそ、話せることがあった

講演後、「話したいことは話せました!」と清々しい表情をみせた講演後、「話したいことは話せました!」と清々しい表情をみせた

ーー地震の影響でやむなく延期となっていましたが、無事講演会を終えた今の心境はいかがですか?

小説を書いたことをきっかけに、母校に帰って来れてよかったです。講演会はずっとやりたかったことなので、ようやく叶ってすごく嬉しいですね。何より、後輩たちが講演を聴きに来てくれたことに感謝しています。卒業後に学祭でライブを披露したことはあるのですが、こういった形で話をさせていただく機会は初めてですし、しっかり準備してきた分、話したいことはしっかり話せたかなと。特に、大学時代に専攻していた哲学については、絶対に話したくって…。音楽や小説の話が聞けると思っていた学生にとっては突然で、ちょっと難しいなと思ったかもしれないけど、話を聞いてみると面白いなって知ってほしい思いがあったので、じっくり話せてよかったです。

ーーみなさん、熱心に聞かれていましたね!質疑応答でも質問が続々と。

今回は関学生だけが参加できる限定された空間だったので、大学のゼミのような空気感で質問しやすい形式にしてみました。いただいた質問に対して、僕が普段どんなことを考えているのか、どういう風に生きてきたかを話して、それが少しでも今後の糧になったらいいなって思いで。

ーー「好きなことをしよう」というメッセージがすごく胸を打ちました。

僕自身、誰に頼まれたわけでもなく好きで書きためていた小説が、こうやって出版できていますからね。今まではバンドで連携しながら作品を作ってきていたのが、一人で一つの作品を作るということに責任感が生まれてきた今、特に思うんです。やらされて何かをしてしまうと、相手に伝わってしまうんじゃないかなって。だからこそ、自分が好きだと思うこと、得意なんじゃないかな、向いてるんじゃないかなと思うことと向き合って続けることが大事なんだと。僕の場合はそれが音楽であり、小説だった。それを続けてきたおかげで、こうして母校で話をすることもできたので、「自分はこれが好きだから、これをやりたい」ってことが、大事だということを伝えたかったんです。

ーーもう一つ。河邉さんも学生のみなさんと同じく、特別な存在ではないからこそ悩むことがあるというメッセージも。

そうですね。昔は芸術家というのは、特別な人にしかできないと思っていたんですよ。だからメンバーや環境に恵まれてデビューしたものの、サラリーマン一家で育って、普通に大学生活を送って生活してきた僕はどうなんだって劣等感を抱くことがありました。だけど、小説を書いていくうちに、自分の育ってきた経歴や見てきた景色があるし、僕にしかいない家族や友達がいることを再確認できて。それは他の人にはないものだから、特別じゃないかもしれないけど唯一無二である。そういう自分だからこそ作れるものがある、と信じることができたので、それを学生にも知ってもらえたらなと。

ーーデビュー、大学卒業から約10年経って、小説を手がけた今だからこそ話せることが詰まった講演会だったのですね。

まさにそうですね。何かを作るということは、自分自身を掘り下げて表現していくこと。小説なんて特に、ひとりでひたすら自分自身を掘り下げて作っていきますから。その中で、「自分のアイデンティティってなんだろう」って考えていくうちに気づけたこともあったので、そういった意味では小説を書いたことで成長した部分もある。なので、今だからこそ話せたことだったと思います。

講演が始まるギリギリまで、抜かりなく資料に目を通して準備する姿も講演が始まるギリギリまで、抜かりなく資料に目を通して準備する姿も

ーー講演の最後には、次回作の紹介もされていましたね。

はい!来年の春に、2作目となる「流星コーリング」の発売を予定しています。これは、実際に2020年に広島で降る予定の人工流星というものに着想を得ていて。広島を舞台に、天文部の高校生が人工流星を見にいく物語になっています。よりリアルに描くために、実際に広島に取材に行って、どんな言葉を話しているのかなど調べて丁寧に書いています。

ーー今回は小説を基にしたアルバムをバンドで制作する共同プロジェクトに。

「流星コーリング プロジェクト」といって、バンドじゃないとできないことをやろうと思って始めました。小説を基に音楽を作ったら、今まで作ったことがない音楽だったり見せたことのない景色があるんじゃないかと思って、アルバムを作っています。バンドの作詞者と小説の原作者が一緒だからこそ、それぞれがリンクするような仕掛けをたくさん用意しているので、アルバムからでも小説からでも、どちらからでも楽しめる僕等にしか作れない作品になってると思います。例えば、小説の主人公とヒロインが星を見ながら会話しているシーンがあって、その時の心情が楽曲の歌詞の中でより深く表現されていたり、その逆もしかり!

ーーまさに読み進めていると、自然と頭の中で音楽が流れてくるようなイメージに。

今すでに、「honto」というサイトで電子書籍版が連載されていて、一部読んでもらうことができるんですけど、あるシーンにさしかかると音楽が流れるといった仕掛けがあったり。いろいろな楽しみ方ができる作品になってると思います。

ーー今日の講演では、もしかすると前作「夢工場ラムレス」が初めて買った小説だった学生もいたかもしれないですしね。河邉さんが手がけた作品が、小説や音楽との出会いや世界が広がっていくきっかけに。

そうですね。普段は小説を読まない方にとって、音楽が好きだからとか、好きな人が書いた本だからって手に取るきっかけに自分がなれたら嬉しいです。例えば、「夢」は誰もが毎日見ますし、「星」は世界のどこからでも見える日常にあるものだから、そういったものに興味がある人が、「そういうのがテーマなら読んでみようか」と、思ってもらえたらそれもまたすごく幸せですね。

ーーまた「流星コーリング」を発売された際の、講演会の再開を楽しみにしています!

ありがとうございます!今日は学生さんだけでしたけど、WEAVERのファンのみなさんにも僕の考えていることや学んできたことを知ってほしいので、また必ず開催したいなと思います。そのためにも、先ずは、好きなことにどんどんチャレンジすることを続けて、僕という人がどういう人なのかを知ってもらえるようなものを、しっかり作っていきたいなと思います。

(書誌情報)

『夢工場ラムレス』
著者:河邉徹
発売日:2018年5月23日(水)
定価(本体1,400円+税)
発行:株式会社KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/321709000164/
 

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2014年10月