ヒトのことを、もっと知りたいあなたへ!『ダーウィン事変』公式書籍『ヒトとサルの境界線』発売のお知らせです
ゲノム差わずか1.2%! その違いはどこにある? 京都大学名誉教授・湯本貴和先生と考えてみた!
「DNAなど分子遺伝情報を使って生物間の系統的な関係を知る方法が確立され、チンパンジーやボノボからヒトへの分岐の歴史がわかりつつある。いま「ヒトを他の類人猿と分けるものはなにか」「ヒトの本質とはなにか」という問いを半世紀前とはまったく別次元で論じることが可能だ。『ダーウィン事変』は、そのなかで生まれてきた作品であるといえる。(湯本貴和 「おわりに」より)

ヒトとチンパンジーが分岐したのはいまから440万年ほど前のこと。現生人類であるホモ・サピエンスが登場するには、そこからさらに400万年ほどの時間がかかります。最新研究ではヒトとチンパンジーとのゲノムの差はわずか1.2%ほどとされますが、そこに存在するヒトとサルの境目はどこにあるのか? 世界累計220万部を突破した漫画『ダーウィン事変』を手がかりに、素朴な疑問から人類学の現在地までを辿るスリリングな読本の登場です。
父性は後付けの概念?
——ゴリラの群れの中の成熟したオスは典型的にはシルバーバックただ1頭のみですが、チンパンジーやボノボの群れはオトナのオスもメスも複数、存在しています。そこに若者や子ども、赤ちゃんも入って群れが形成されている形です。こういう群れの作り方は「複雄複雌群」(ふくゆうふくしぐん)と呼ばれます。(PART 2「群れ」と「家族」と「社会性」 P57より)
——チンパンジーもボノボも「家族」というものがないんです。複雄複雌群として形成された社会なので「乱婚性」で、子どもが生まれたとしても、どれが誰の子どもかわからない。産み落とした母親はもちろんわかるのですが、父親は常にどのオスなのか、不明なんです。(同上 P59より)
——あるチンパンジーの群れでは、石を使って上手にかたい殻を割り、木の実を食べたりしているのですが、他の群れではそんなことは一切していなかったりします。この「石の使い方」についても、子どもが一生懸命、オトナのチンパンジーがやっているところをじっと見て、自分でもやってみて、でも失敗して……の繰り返しで覚えていく。(中略)ヒトのように「オトナが子どもに教えてあげる」という形はほとんどありません。(同上 P66より)
——そもそも、自分の子どもがどれかわからない中で「父親」という意識、というか概念があるのかどうか……。(同上 P67より)
乱婚性と繁殖力
——単雄複雌群(たんゆうふくしぐん)であるゴリラと、複雄複雌群であるチンパンジーやボノボでは、後者のほうがオスの睾丸が大きいんですよね。体の大きさは圧倒的にゴリラなのですが、チンパンジーやボノボのほうが睾丸は大きい。乱婚性社会で睾丸サイズが大きいのは、霊長類全般にあてはまっています。(中略)どちらも「複数のメスと関係して子種を残す」という行為はしているものの、乱婚性(複雄複雌群)のほうが睾丸が大きい必然性があるのでしょう。(PART 2 「群れ」と「家族」と「社会性」 P64〜65より)
——(ヒトは)中間的です。どちらかといえば、ヒトの睾丸の大きさはゴリラにやや近いと言えます。(中略)ヒトには発情期が存在せず、逆に見れば〝いつでもOK〟とも言えるわけですが、基本的に1人、もしくは少数の個体と性交渉をして子種を残すためには、それだけで十分なのでしょうね。(同上)
※「単雄複雌群」ゴリラの群れに見られる形態。「ゴリラの場合は、その群れがひとつの「家族」そのものです。これは比喩としての「家族」ではなく、本物の家族。構成は「1頭の圧倒的に優位なオトナのオスと複数頭のオトナのメス、そしてその子どもたち」という形です。(中略)この社会構造は「単雄複雌社会」と呼ばれます。」(PART 2 「群れ」と「家族」と「社会性」 P51より)
爆速の認識力
——チンパンジーの視力は人間の平均視力と同じ1.0か、それより劣るレベルと言われています。(PART 4 共感性と「自己と他者」の線引き P118より)
——チンパンジーは、単なる視力の数値はその程度ですが、情報を処理し、記憶する能力を含めた総合的な視覚機能が高いと言われているのです。(同上)
——〜画面上に1〜9までの数字が表示されるのですが、この表示が一瞬で消えてしまいます。それでも……。(同上 P120より ※書籍には実際の実験動画を見られる二次元コードを掲載しています)
超ヒエラルキー社会!?
——チンパンジーの群れで最上位の個体は、必ずオスです。そこに続く群れの上位もみんなオス。群れの中の若いチンパンジーが成長すると、オスは群れの中で血縁関係に基づく「父系集団」を形成します。子どものメスは成長すると群れを離れ、他の群れに移動します。(PART 2 「群れ」と「家族」と「社会性」 P58より)
——もし仮に群れに100匹のオトナのチンパンジーがいたら、1番から100番まで、明確にランク付けがされています。基本的に上下関係について、曖昧さが入る余地がありません。(PART 3 ヒエラルキーと人気の法則 P86より)
——その明確なランク付けの中で、上位を占めるのは完全にオスです。メスの中で一番ランクが上の個体が、オスの中での最下位のすぐ下に入る形になります。(同前 P87より)
——ランクが上のチンパンジーは、けっこう下位のチンパンジーに対してマウントを取ります。(中略)ランクが下のほうのチンパンジーがいるところにやってきて「俺のほうが偉いんだぞ」というアピールを行うんです。それも何度も何度も。(中略)下手をしたら10分おきにアピールしていたりします。それでも下のチンパンジーたちは、畏まって受け入れるしかない。(同前 P87〜88より)
チンパンジーの「心の理論」!?
——「心の理論」というのは、簡単に言えば「相手にも自分と同じように心があり、それに従って行動する」という意識のことです。(中略)この「心の理論」は生得的なものというよりは、乳幼児期から徐々に発達して、4〜6歳くらい、ものごころがついた後に確立されるものとされています。(PART 4 共感性と「自己と他者」の線引き P136より)
——「エサを独り占めしたくてほかの個体と協力しなかった(108ページ)」とか「周囲からの目を気にしてカッコつけたり失敗を取り繕ったりする(88ページ)」などは、「相手も心を持っている」という前提がないと取らない行動です。これらの行動からもわかるように、チンパンジーも平気で噓をついたりシラを切ったりしますが、これらはすべて「心の理論」ありきの行動です。(同前 P137より)

◀パブリックドメインとして公開され、世界的な話題を集めた『ダーウィン事変』1巻からの一コマ。主人公の〝ヒューマンジー〟チャーリーの真っ直ぐな問いかけが、平和ボケした常識を撃ち抜いた。
▶チャーリーが世界の見方を一言で表現した1巻の一コマ。「すべての動物は ただのONEだよ」
『ヒトとサルの境界線』に収録した境界線を探す問答は、そんな『ダーウィン事変』の物語をきっかけに始まりました。

本文監修者プロフィール/湯本 貴和 ゆもとたかかず
1959年生まれ。植物生態学者。京都大学名誉教授。2016年に当時の京都大学霊長類研究所所長に就任。2025年より日本モンキーセンター所長を務めている。1年のうち200日ほどの期間をコンゴ、タンザニア、タイなど各国でのフィールドワークで過ごす。

ダーウィン事変公式 ヒトとサルの境界線
作品監修 うめざわしゅん
本文監修 湯本 貴和
ISBN978-4-06-541808-6
定価1760円(本体1600円+税10%)
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