日本初! 原文のリズムとライムを全訳した『新訳 ハムレット 増補改訂版』が発売! ハムレットは太ったひげ面の30歳!? 意外な事実が次々と発覚!
野村萬斎氏プロデュース! 21年の時を経て、元・日本シェイクスピア協会会長が最新研究に基づき大幅改訂!
株式会社KADOKAWA(本社:東京都千代田区、 代表取締役社長:夏野剛)は、 2024年9月24日(火)に、『新訳 ハムレット 増補改訂版』(シェイクスピア 河合祥一郎=訳 角川文庫)を発売します。
本作はシェイクスピアの代表作です。角川文庫で2003年に野村萬斎氏プロデュ-スで発売した『新訳 ハムレット』の増補改訂版です。翻訳を担当した河合祥一郎氏は、東大教授でシェイクスピア研究の第一人者、そして元・日本シェイクスピア協会会長です。
『ハムレット』は角川文庫以外にも6社の文庫レーベルが刊行しており、どれを読んでいいか、迷う方が多いのではないでしょうか。ですが、編集部は断然この河合訳を推します。それは単に自分たちが担当したから、というわけではありません。
今あえて増補改訂版を刊行するからには、他社の先行訳よりも河合訳は優れた訳だという確信が編集部にはあります。河合訳が他の先行訳とくらべてどのような点で優れているか、なにが違うのか、をメインに読者のみなさまに紹介できたら、と思います。また、河合訳がはじめて明確にした、ハムレットが太ったひげ面の30歳だった!などという驚くべき事実についても、のちほどふれます。
ご存じでない方のためにも、まずは物語のあらすじについて、ざっくりとご紹介。
<あらすじ>
「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」
父王を亡くしたデンマーク王子ハムレットは、母を娶(めと)って王座を奪った叔父を憎む。ある夜、父の亡霊から、自分は叔父に毒殺されたと聞かされるが、はたしてそれは真実か? 迷いつつも気がふれたふりをして復讐の時を待つが…。
日本でハムレットといえば、太宰治の『新ハムレット』の影響を受けてか、父の敵(かたき)に復讐するかどうするかをぐずぐずと悩み続ける、優柔不断な青年というイメージが強いのですが、実はハムレットが「生きるべきか死ぬべきか」と迷っていたのは、ハムレットの前にあらわれた父の亡霊が、本物か悪霊かで判断ができなかったためです。悪霊だったら、叔父に毒殺された、という話は嘘になります。本物だったら、命がけで復讐することは、ハムレットにとっては当然のことだったんですね。(これはキリスト教の宗派の違いが大きくかかわってくるのですが、詳しくは本書P23訳注参照)
そして、ハムレットは気がふれたふりをして、叔父を油断させて本当に父を殺したのが叔父だったのかを見きわめ、復讐の時を待つというのが、本作のストーリーのいちばん太い柱です。デンマーク国の王子であるハムレットにとって、狂気を装う、というのは、その地位をかなぐり捨てるようなこと※なのですが、そこにこそシェイクスピアの描きたかった物語がある、と編集部は考えています。
また、作中ではハムレットが恋する美少女オフィーリアも登場しますが、ハムレットにとってもっと重要な女性、母で王妃のガートルードも登場します。父王を殺した叔父にたぶらかされて、父の死の直後にその男と再婚した母です。この頃のデンマークでは、王位継承権は王妃にもあったため、ガートルードは叔父と再婚することによって、叔父に王権を与えたのです。本来なら、父王が亡くなればハムレットが王になっていたはずなのに。だからこそハムレットは肉親である母に裏切られた、と衝撃を受けるのです。つまり、美少女との恋よりも、母によって王位継承者としてのアイデンティティを破壊されたことの方がハムレットにはずっと重要だったのです。これらのことを知った上で物語を読みすすめると、作品に対する解像度が一段と高くなり、理解しやすいのではないか、と思います。
※当時狂気は単なる病気とは捉えられておらず、人間性を失うこととして恐怖と憐憫をもって受けとめられていました。今の私たちの価値観では差別的だと批判されるかもしれない表現ではありますが、当時は医学的知識にも欠けており、ここに物語の肝があると編集部は考えているため、本書ではママとしています。
河合訳・増補改訂版が他社の先行訳よりも優れているポイント!
ポイント1 日本初! 原文のリズムとライムを全訳して改訂! もちろん散文じゃなくて韻文!
シェイクスピア劇の最大の特徴は韻文劇。台詞のリズムにあるんです。ただこのリズムを訳していない散文訳の『ハムレット』が、実は日本では一番読まれています…。なんとその売れ数は、全体の5割弱! つまり『ハムレット』を読んだ日本の読者の半分が、本当の『ハムレット』を読んでいない…(と言えるかも?) 河合訳では原文のリズムを日本語で正確に再現しています。だから読みあげると心地良いんです! おかげさまで読者の方々からも「声に出して読みたくなる」という感想をいただいております。
ポイント2 なんと野村萬斎さんプロデュース! そして故・蜷川幸雄さんも選んだ! 大型公演での上演回数多数。プロが選ぶ河合訳。
『新訳 ハムレット』(2003年)の訳を河合氏に依頼したのは、実は狂言師で演出家の野村萬斎さん。しかも、幾晩もかけて河合氏とともに台詞一つ一つを読み上げ、練り上げていきました。河合訳のハムレットは萬斎さんプロデュースだったんですね。また、彩の国さいたまで上演された故・蜷川幸雄さん演出の『ハムレット』では、小田島訳、松岡訳を経て、最終的に河合訳が繰り返し採用されました。蜷川さんにも選ばれた河合訳! 大型公演での上演回数も多数あります。これは河合訳のドラマ性が評価された結果ではないか、と編集部は考えております。
ポイント3 草稿であるクォート版や、編集者が勝手にト書きを足した旧ケンブリッジ版ではなく、シェイクスピア本人が改訂したフォーリオ版を新訳! 注釈でクォート版の訳も掲載しているので、よりお得。
『ハムレット』には、実はクォート版とフォーリオ版があります。前者は草稿(確定していない、完全ではないバージョン)で、後者はシェイクスピア本人がクォート版を改訂したものです。丁寧に読みくらべれば、シェイクスピアがなぜフォーリオ版をだしたのかがよくわかるのですが(効果的な上演を狙ってすっきりさせるためや、より劇的にするための加筆修正)、巷にあふれる『ハムレット』の訳はクォート版を組み込んだ折衷版が多いです。あまつさえ、もっとも売れている出版社の『ハムレット』は、編集者が勝手にト書きを足した旧ケンブリッジ版(折衷版)を原著として訳しており、なぜこの本がこれだけたくさんの人に読まれるのだろう、と編集部は頭をかかえて歯噛みしております。河合訳はフォーリオ版を原著としており、さらに訳注でクォート版も補足しています。つまり一粒で二度おいしい、日本でもっともお得でかつ適正な『ハムレット』と言えるでしょう。もちろん勝手に足されたト書きはありません。
ポイント4 みんなが知ってる名台詞 To be, or not to be の訳は「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」! ここ140年間で刊行されてきたハムレット50作の日本語訳すべてにあたって研究
新訳となると、『ハムレット』で(というか、シェイクスピア全作品中)最も有名な台詞To be, or not to beがどのように訳されるか、気になるところ。本書では、多くの日本人に受け入れられてきたであろう、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」を採用しています。というのも、河合氏が1874年から2020年までに出版された過去の先行訳50作を丹念に調べ、これまでこの訳が使われてこなかったことを確認できたからです。こんなに日本人に浸透している「生きるべきか、死ぬべきか~」が今まで出版物では採用されてこなかったなんて不思議ですね。過去の翻訳者の方々は50作も調べる気にならなかったのかも知れません。このように河合氏は先行訳すべてにあたって、研究しつくした上で、最新訳を上梓しました。
ポイント5 2003年版から大幅改訂! 注釈、訳者あとがきを充実! 萬斎さんによる増補改訂版「後口上」も新規掲載!
ポイント1に記したように、この改訂版の最も大きな特徴は、日本初のリズムとライム全訳にありますが、それだけではありません。訳注と訳者あとがきも大幅に改訂しています。訳注にいたっては、ページのはしからはしまで、みっちりと書きこまれています。そして何より、野村萬斎さんによる増補改訂版の「後口上」を新規掲載! 今までの河合訳の『ハムレット』を愛読してくださった方々には、21年の時を経て、どんなところが新しくなったか、ぜひとも読み比べていただけますと幸いです。
番外編 現役シェイクスピア翻訳者のなかで日本シェイクスピア協会会長経験者は河合氏だけ! 最新研究に基づいた信頼ある新訳!
本来なら最初に記すべきことですが、こちらのポイントも重要です。われわれ翻訳書籍編集者は、単に原文を日本語文に変えることだけが翻訳だとは考えていません。当時の社会的政治的文化的背景を知り、原著者が何を思い、何を伝えたくて作品を執筆したのか、作品の本質を理解した上で、その原文を日本語文に変えることが翻訳だと考えています。前述したとおり、河合氏は元・日本シェイクスピア協会会長でシェイクスピア研究の第一人者です。当時の資料にあたって、最新研究に基づき、そういったことを全て把握して訳しています。だから、訳注がふんだんに掲載され、あとがきも濃く、読み応えのある作品となっています。なお、シェイクスピアの現役訳者のなかで、会長経験者は河合氏のみです。
おまけ ハムレットは太っていた! しかも30歳でひげ面だった!
ハムレットってどんな見た目をしていると思いますか。舞台では若く美しい俳優陣が歴任しています。そのかいもあってか、筆者も含めて多くの日本人がハムレットに対して、線の細い、神経質そうな、少なくとも20代前半ぐらいまでのシュッとした若い美青年像をイメージしているのでは。しかし本書を読むと、その幻想は打ち砕かれます。センテンスを丁寧に読みこめばわかるのですが、シェイクスピアは私たちに多くのヒントを残してくれました。シェイクスピアはハムレットを太った青年として描いていたのです。そう読み取れる根拠を、河合氏は訳注で語っています(本書訳注P210参照。サントリー学芸賞を受賞した河合祥一郎・著『ハムレットは太っていた』にも詳しい解説が掲載されている)。また、ハムレットが30歳でひげ面であることについても言及されています(本書訳注P190,93参照)。なかなか愛嬌のある、趣深いハムレット像が浮かび上がってくるのではないでしょうか。なお、原文のfatという語を「太っている」と訳したのは河合訳だけです
最後に、2003年版も含めて本書の企画立ち上げから内容にいたるまで関わってくださった、狂言師で演出家の野村萬斎さんによる推薦文をご紹介します。
「声に出して心地よい、聴いていて心地よい、注釈が心地よい。
英国人と同じように味わえる、シェイクスピア最新訳の決定版!」(野村萬斎)
編集部が自信をもってお届けする『新訳 ハムレット 増補改訂版』。2003年版を未読の方も既読の方もぜひともご一読ください。秋の夜長にぴったりの読書体験になるはずです。
『新訳 ハムレット 増補改訂版』について
書誌情報
『新訳 ハムレット 増補改訂版』(角川文庫)
著:シェイクスピア
訳:河合祥一郎
発売:2024年9月24日(火)
定価:726円 (本体660円+税)
ISBN:9784041149928
発行:株式会社KADOKAWA
詳細ページ:https://www.kadokawa.co.jp/product/322402000041/
著者プロフィール
ウィリアム・シェイクスピア
1564年、イギリス中部のストラットフォードで、商業を営む父と旧家出身の母との間の第三子として生まれる。82年、18歳で8歳年長のアン・ハサウェイと結婚、一男二女をもうける。故郷をはなれ、やがてロンドンで詩人・劇作家として幸運なスタートを切る。94年、新しく組織された劇団「宮内大臣一座」の幹部座員として名を連ね、俳優兼座付作者として活躍。およそ20年間劇作に専念し、劇作家として名をなす。1616年没。
河合祥一郎(かわい・しょういちろう)
1960年生まれ。東京大学およびケンブリッジ大学より博士号を取得。現在、東京大学教授。著書に第23回サントリー学芸賞受賞の『ハムレットは太っていた!』(白水社)、『シェイクスピア 人生劇場の達人』(中公新書)、『NHK「100分de名著」ブックス シェイクスピア ハムレット』(NHK出版)など。角川文庫よりシェイクスピアの新訳、『不思議の国のアリス』、「新訳 ドリトル先生」「新訳 ナルニア国物語」シリーズなどを刊行。
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