家計が苦しい冬休みに、行き場のない野菜を、困難を抱える世帯の支援につなぐ、寄附食品物流ネットワーク構築の実証実験を実施
ー世田谷区、東京都、東京農業大学との産学官連携による、三浦野菜の30,000世帯への寄附実験ー
本実証実験では、三浦市農業協同組合と連携し、豊作による市況の暴落や規格外を理由に発生した、「品質には問題がないけれども行き場のない野菜」を、青果物の流通を担う中央卸売市場を中継拠点として活用することで、大消費地である首都圏、中部圏、関西圏の約30,000世帯に寄附します。
中央卸売市場が、寄附食品の流通拠点として役割を果たし、農産地や地域住民への貢献を実現することは、全国で初めての取り組みです。
■背景
わが国では、年間522万トン(2020年度)もの食品ロスが発生している一方で、子どもの7人に1人が相対的貧困状態にあり(2018年)、満足に食べられない子どもも多く存在します。
また、近ごろの物価高騰の影響により、支援が必要な世帯の困窮度は深刻化しているとみられ、フードバンク等による食支援の重要性が注目されています。企業など生産者においても、SDGs達成への貢献のため、余剰食品を寄附することで、食品ロスを削減しつつ、困難を抱える世帯を支援する動きが活発化しています。
子どものいる世帯にとっては、冬休みなど給食のない長期休みに家計が苦しくなるため、特に直近、支援を求める声が増加しています。
■行き場のない野菜
大根やキャベツの一大生産地である三浦市では、さまざまな理由で「行き場のない野菜」が発生しており、その量は2021年度の大根だけで2,000トン以上にのぼります。三浦市農業協同組合は、農家と連携してフードバンクに寄附するなど、有効活用の道を模索してきました。
しかし、寄附が実現する量は1トン未満と少なく、全国の農業協同組合を合計しても、市況の暴落による行き場のない野菜の寄附量は、2020年度で2.5トン、2021年度で16.2トンに留まっていました。
その理由は、大きく3つあります。
1.寄附先となるフードバンク等との接点がなく、ニーズが拾えていないこと
2.寄附先に配送する手段がなく、個別配送しようとすると多額の物流費がかかってしまうこと
3.寄附先の保管スペースが狭かったり、冷蔵能力がないために、受け入れてもらえないこと
■実証実験の内容
ネッスー株式会社は、農家・農協、市場卸売事業者と連携し、「つながる、おやさい便」の仕組みを開発し、課題を解決します。以下のように、各事業者が役割を担い、子どもたちに支援をつなげます。
1.多くのフードバンク等と接点のあるネッスー株式会社が情報のハブを担う(システムも開発中)
2.卸売市場への農協の納品便に、寄附品も積み合わせて届け、ラストワンマイルはネッスーが担う
3.設備の整っている市場の卸事業者が、寄附品の荷受け・保管を担う
なお、本施策は世田谷区の地域連携型ハンズオン支援事業「SETACOLOR」に採択されており、都内中央卸売市場を管轄する東京都や、食品ロス削減などの課題解決に取り組む一般社団法人サスティナブルフードチェーン協議会のバックアップを受けています。さらに、食品ロス削減効果や支援世帯への経済的支援効果・栄養充足率改善効果を、東京農業大学との共同研究により評価します。
■今後の展望
本実証実験だけで、昨年度の全国の農業協同組合の寄附量の約2倍の、30トンの寄附が実現します。
わたしたちは、農業協同組合や、中央卸売市場との連携を加速し、野菜の寄附を拡大させることで、食品ロスを減らしながら、機会格差の解消と、子どもの栄養の充足を目指していきます。
■参考情報
【ネッスー株式会社概要】
ネッスー株式会社は、子どもの機会格差の解消を目指し、フードバンク兼業型ネットスーパーを立ち上げている、スタートアップ企業です。両事業ともに今年度実証実験を終え、2023年に本格稼働します。ネットスーパーを兼業していることにより、寄附品流通にフードサプライチェーンを活用したり、倉庫や配送網を共有することができます。その結果、フードバンク事業の合理性が高まるため、食支援事業者にとっても利便性が高く、サステナブルな仕組みとなります。
ネットスーパー事業では、子どもの機会格差を縮めることを目的に、子どもと過ごす時間の余白を生んだり、孤食を解消する、子育て世帯のための保育園受取型の食品等配達サービスを開発しています。
社名 : ネッスー株式会社 https://nessu.co.jp
本社所在地 : 〒154-0004 東京都世田谷区太子堂2-17-5 佐藤ビル3階
代表者 : 代表取締役 木戸 優起(きど ゆうき)
設立年月日 : 2022年6月10日
従業員数 : 10人(副業含む)
【本取り組みの関係者のコメント】
・木戸 優起(ネッスー株式会社 代表取締役)
食べられるけれど、行き場のない野菜があります。農家さんは、一生懸命育てた野菜を、誰かに食べてもらうことを願っています。一方で、育ち盛りだけれど、満足にご飯を食べられない子どもたちがいます。大人たちは、おなか一杯、健康なご飯を食べさせてあげたいと願っています。
わたしたちネッスーは、その2つの願いがつながる仕組みをつくり、食品ロスを減らしながら、機会格差の一要因である子どもの貧困の解決を目指しています。
今回、多くの方々のご協力を得て、願いを紡いで、希望をつなぐ 「つながる、おやさい便」の実証実験を行うことができました。今後、この取り組みを全国に広げ、多くの子どもたちを笑顔にしていきたいと考えています。
<農業関係者>
・杉野 幸雄さん(三浦市農業協同組合 代表理事組合長)
産地では、災害など不測の事態に備え計画的に野菜を作っています。しかし、被害がない場合、生産過剰となり、価格が下落し、生産者は経費倒れとなって出荷できなくなります。そういった行き場のない野菜が、困っている人の助けになれば、幸いです。
・出口 剛さん(神奈川県三浦市 農家)
野菜は、形や大きさが整ったものが求められますが、天候などの影響で、実際は規格に合わない野菜もできてしまいます。味も栄養面もそん色ない行き場のない野菜で人助けできるのは、生産者としてもうれしく、やりがいにもつながります。
<市場卸事業者>
・関山 泉さん(東京新宿ベジフル世田谷株式会社 取締役 会長)
東京中央卸売市場卸売事業者として、地域に密着した事業を展開しており、農産地の商品ロス・地域の子どもの貧困という2つの課題解決に貢献できるこの仕組みに賛同し、全国の市場に展開していくことを期待しています。
・小坂 芳則さん(セントライ青果株式会社 代表取締役 社長)
豊かである日本の一方で、給食が唯一の栄養源である子どもたちがたくさんいます。一方で農家が丹精込めて作った野菜たちが廃棄されています。そんな両者の懸け橋になることも、卸売会社の大切な役割だと思っています。
<食支援団体>
・松田 妙子さん(せたがやこどもフードパントリー実行委員会)
豊かだと思われがちな世田谷区にも、支援を必要としている子どもたちは、多くいます。この取り組みによって、ご家族も大喜びの野菜の提供が増え、健康面でも心の面でもあたたかい支援が広がることを願っています。
・寺田 覚さん(特定非営利活動法人フードバンク愛知)
新鮮な野菜は、ご家庭にとってうれしい支援品です。たくさんの支援をつなぐこの仕組みで、子ども食堂と子ども支援団体へ農家さんの気持ちを届けさせていただきます!
<行政>
・中西 成之さん(世田谷区 経済産業部 商業課 課長)
「SETACOLOR」の選定の際、木戸さんのご提案を聞いた審査員一同「すごい!」と声を上げてしまいました。各方面の困りごとの解決策を緻密に考え尽くされていて、お見事としか言えません。全力で応援します!
・梅澤 直子さん(東京都 中央卸売市場 世田谷市場 場長)
都では、中央卸売市場経営計画において「フードバンク等に協力する市場業者の取り組みを支援」することとしています。今回の事業をはじめとして、持続可能な調達等の実現に向けた取り組みを、今後も支援してまいります。
<アカデミア>
・入江 満美さん(東京農業大学 国際食料情報学部 准教授)
体と心を育むために欠かすことができない食品を、今困っている子どもたちに届けて、近くで支える社会が、身近にある。子どもたちが、皆、豊かに育ち、いつか社会を支える一員になる。この取り組みを応援しています。
・渡辺 達朗さん(専修大学 商学部長 教授/一般社団法人サスティナブルフードチェーン協議会 副会長)
産地での廃棄は課題とされながら、有効な解決策がありませんでした。卸売市場を活用して、消費地の支援を必要とする人に届けることを目指す本実証実験は、全国のモデルとなることが期待されます。
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