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腸管免疫システムは、うつ病の予防・治療のターゲットとなりうるか?

Johns Hopkins University

ストレスによる腸内細菌叢(腸内フローラ)の変化が、うつ病をはじめとする精神疾患の病態にかかわることは知られているが、その具体的な仕組みは明らかでなかった。腸管における免疫システムが、ストレスによるうつ病の発症メカニズムにかかわる仕組みを、米ジョンズホプキンス大学の神谷篤教授と酒本真次研究員(現・岡山大学助教)らが明らかにした。
腸管と脳の機能は互いに密接に関係し、お互いに影響を及ぼしあっていることは、腸脳相関として知られている。腸内には数多くの細菌が存在し、これらは腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれる。ストレスによる腸内細菌叢(腸内フローラ)の変化が、うつ病をはじめとする精神疾患の病態生理にかかわることは知られているが、その具体的な仕組みは明らかでなかった。腸管における免疫システムに重要なTリンパ球「γδT細胞」が脳に作用し、うつ病の発症メカニズムにかかわる仕組みを、米ジョンズホプキンス大学の神谷篤教授と酒本真次研究員(現・岡山大学助教)らが明らかにした。論文は20日付英科学誌ネイチャー・イミュノロジー電子版に掲載された。

図1:テストマウス(黒色)は、体が大きい異種のマウス(白色)からの慢性ストレス下に置かれる。うつ病などストレスにより誘発される精神疾患のモデルとして使用されている。図1:テストマウス(黒色)は、体が大きい異種のマウス(白色)からの慢性ストレス下に置かれる。うつ病などストレスにより誘発される精神疾患のモデルとして使用されている。


γδT細胞は体内の粘膜に広く存在するリンパ球で、免疫反応を制御し、様々な炎症性疾患や癌との関連も指摘されている。 γδT細胞は腸管内に特に豊富であるが、脳腸相関における γδT細胞の役割は不明であった。

 


本研究では、慢性的に心理社会的ストレスをかけたマウスにおいて(図1)、腸内細菌のうちγδT細胞の分化に関わる特定の乳酸菌が減少することで、うつ病様行動の指標とされる社会性の低下を示すことを見出した(図2)。また、昭和大学の真田建史准教授、慶応大学の岸本泰士郎特任教授、福田真嗣特任教授らとの共同研究で、同属乳酸菌の減少が、ヒトのうつ病患者のうつ症状重症度と相関していることを見出した。

図2:マウスの社会性を調べるテスト(上)。ストレスを受けることで、社会的交流時間が減少する(うつ症状の指標)。パキマンを経口投与することで、新規マウスとの交流時間が回復したことを、マウスの動きを追跡することで、ヒートマップで示した(下)。図2:マウスの社会性を調べるテスト(上)。ストレスを受けることで、社会的交流時間が減少する(うつ症状の指標)。パキマンを経口投与することで、新規マウスとの交流時間が回復したことを、マウスの動きを追跡することで、ヒートマップで示した(下)。


また、腸管において、ストレスにより γδT細胞からIL-17と呼ばれる炎症性サイトカインを産生する T細胞(γδ17 T細胞)への分化が促され、これらが脳髄膜へと移行することでうつ病様行動が引き起こされることを明らかにした()。

 

これらの細胞分子変化は、 T細胞に存在する免疫反応を司どる受容体の1つであるデクチン1により仲介されることがわかった。抗炎症作用を持つことで知られる漢方生薬である「茯苓」の成分パキマンは、デクチン1により認識される。心理社会的ストレスをかけたマウスにおいて、パキマンを慢性経口投与したところ、この受容体を介して腸管におけるγδ17 T細胞への分化と脳への移行を抑制し、うつ病様行動への予防効果があることを明らかにした(図2)。さらに、ストレスにより減少した特定の乳酸菌の経口投与によっても、同様の予防効果を見出した。

 

図3:慢性ストレス下において、腸管での炎症性gd17 T細胞の分化が促進され(左)、脳髄膜に移行する(右)。緑色:炎症性gd17 T細胞、赤色:脳血管のマーカー、青色:細胞核 。図3:慢性ストレス下において、腸管での炎症性gd17 T細胞の分化が促進され(左)、脳髄膜に移行する(右)。緑色:炎症性gd17 T細胞、赤色:脳血管のマーカー、青色:細胞核 。


既存のうつ病治療薬はセロトニンをはじめとする脳内神経伝達物質を調整するものがほとんどであり、うつ病の有病率が高いにも関わらず、多くの患者が治療抵抗性を示す。本研究は、腸管の免疫システムを、創薬ターゲットとすることで、ストレスにより生じるうつ病など精神疾患に対する新しい予防・治療法開発につながる可能性を示している。

 


論文情報
タイトル:Dectin-1 signaling on colonic γδT cells promotes psychosocial stress responses
掲載紙:Nature Immunology
著者:Xiaolei Zhu, Shinji Sakamoto, Chiharu Ishii, Matthew D. Smith, Koki Ito, Mizuho Obayashi, Lisa Unger, Yuto Hasegawa, Shunya Kurokawa, Taishiro Kishimoto, Hui Li, Shinya Hatano, Tza-Huei Wang, Yasunobu Yoshikai, Shin-ichi Kano, Shinji Fukuda, Kenji Sanada, Peter A. Calabresi, Atsushi Kamiya
DOI: 10.1038/s41590-023-01447-8
URL: https://www.nature.com/articles/s41590-023-01447-8

本件・共同研究等の問い合わせ先
ジョンズホプキンス大学医学部 精神医学部門
教授 神谷篤
住所:600 North Wolfe Street, Meyer 3-162A Baltimore MD 21287 USA
Web: https://www.hopkinsmedicine.org/profiles/details/atsushi-kamiya
Eメール: akamiya1[@]jhmi.edu



 

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種類
その他
ビジネスカテゴリ
医薬・製薬
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業種
医療・福祉
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600 North Wolfe Street, Baltimore MD, USA Meyer 3-162A
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