一般社団法人School Transformation Networking: ScTN(スクタン)設立のお知らせ
「ScTN(スクタン)」と略称する当法人では、教育哲学の知見に基づいて事業を展開してまいります。具体的には、公教育の「本質」と「正当性の原理」に基づき、教育学や心理学をはじめとした学術の諸理論と、ICTや教育データに代表されるデジタル技術とを利活用することで、学校や教育委員会の「学びの構造転換」に関する取組を支援していきます。
1 設立の背景
我が国の初等中等教育においては、ここ数年、学びや教育の在り方を根本から考え直す取組が広がっています。2017(平成29)年3月の学習指導要領改訂、2019(令和元)年12月から始まったGIGAスクール構想、さらには2021(令和3)年1月の中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」等を受けたものであり、当法人では、このような取組を「学びの構造転換」と総称しています。
私たちは、これまで、日本全国の様々な学校や教育委員会が取り組む学びの構造転換を支援してきました。その経験から、取組の着実な進展を成果として目の当たりにする一方、課題を感じていることも確かです。
たとえば、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実や、そのためのICTや教育データの活用は、学びの構造転換の中核を成す取組と言っていいでしょう。しかし、これらは、何のための取組なのでしょうか。どのような在り方であれば、それを「よい」と言うことができるのでしょうか。
一例として、著しい分断と格差を生み出す学びの個別最適化や、逃れられない同調圧力と排他・排斥につながる学びの協働化を促す教育があった場合、私たちは、そのような在り方を肯定することはできないはずです。
しかしながら、私たちは、このような場合でさえ、その根底において何を基準に「よくない」という判断を行っているのでしょうか。
2 目的と事業
そこで、当法人では、そもそも公教育は何のために在るのかという本質に「各人の自由及び社会における自由の相互承認の実質化」を、どう在れば「よい」のかという正当性の原理に「一般福祉(一般意志に基づく普遍福祉)」とを据えた上で、初等中等教育をフィールドに、主体的・対話的で深い学びへの構造転換を支援する事業を展開してまりいます。
これは、私たちが「哲学原理とエビデンスに基づいた実践(Philosophical priciples and Evidence Based Practice: P-EBP)」と呼ぶ取組を自ら実践するものでもあります。P-EBPは、従来のEBP(Evidence Based Practice)やその一つであるEBPM(Evidence Based Policy Making)を包摂し更に底から基礎付けるものであり、ここで重要なことは、哲学原理が、「エビデンスに基づく実践やエビデンスそれ自体の意味と価値を判断する基準になる」という意味で根底に位置付けられていることです。
加えて、当法人では、「一般社団法人」が法人として有す公共性を最大限に活用し、学校や教育委員会はもちろんのこと、大学、研究機関、企業等の協働ネットワークの架け橋となることで、P-EBPのエコシステムを築いていきたいと考えています。それが、学びの構造転換のみならず、学びを支える人材・組織や施設・設備、さらには行財政の在り方までも含めた「公教育(全体)の構造転換」の実現につながると考えるからです。
当法人の名称である「School Transformation Networking」の”net-working”には、私たちのこのような思いを込めました。
上記の旨をご理解いただき、多くの方のご協力とご参画のほど、よろしくお願い申し上げます。また、設立に合わせて、「ScTN質問紙(主体的・対話的で深い学びのための意識・実態調査、児童生徒による自己評価方式)」をリリースいたしますので、ご活用いただければ幸いです。
※設立のご挨拶全文(https://sctn.jp/about、公式ウェブページ内)
※ScTN質問紙(https://sctn.jp/questionnaire、公式ウェブページ内)
3 役員
代表理事 山口 裕也(独立研究者)
独立研究者、主な研究領域は心理学、教育学、哲学。博士課程在学中の2005(平成17)年から研究員として杉並区教育委員会事務局杉並区立済美教育センターに在籍、同センター調査研究室長や東京学芸大学非常勤講師、さらに杉並区教育委員会主任研究員を経て、現在は独立研究者として活動。ScTN質問紙(主体的・対話的で深い学びのための意識・実態調査質問紙)の著作者・著作権保有者でもある。主な著書に『教育は変えられる』『よい教育とは何か』など。
理事 苫野 一徳(熊本大学大学院教育学研究科・教育学部准教授)
哲学者、教育学者。教育とは何か、それはどうあれば「よい」といいうるかという原理的テーマの探究を軸に、これからの教育のあり方を構想。公教育の本質は「自由の相互承認」の実質化にあるとし、具体的なあり方として「学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合」などを提唱。主な著書に『どのような教育が「よい」教育か』『教育の力』『「学校」をつくり直す』『学問としての教育学』『愛』『「自由」はいかに可能か』など。
4 法人概要
名称:一般社団法人School Transformation Networking
略称:ScTN(スクタン)
所在地:東京都中央区銀座1-22-11銀座大竹ビジデンス2F
設立日:2023年4月14日
公式ウェブページ:https://sctn.jp/
定款に定める目的と事業:
当法人は、各人の自由及び社会における自由の相互承認の実質化のため、一般意志及び普遍福祉の原理に基づき、初等中等教育における主体的・対話的で深い学びへの構造転換を学術の諸理論及びデジタル技術を通じて支援することで、全ての学習者が自分らしく且つ互いに高め合って学ぶ教育を実現することを目的とし、その目的に資するため、次の事業を行う。
1 学習者の資質・能力及び学習経験等を把握・改善するアセスメントを中心としたサービスの企画・開発・研究・普及等の事業
2 当サービスを学校又はその教育活動を支援する組織、大学等の研究機関を有する組織及び政策立案を行う組織へ提供する事業
3 前各号に掲げる事業の啓発に向けた講演・情報提供・出版等に関する事業
4 その他、当法人の目的を達成するために必要な事業
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