プラズマローゲン合成誘導体「KIT-13」が、米国食品医薬品局(FDA)より「レット症候群治療薬」の希少小児疾患指定(RPDD)を受けました。
株式会社レオロジー機能食品研究所
代表取締役 藤野武彦
KIT-13は当研究所が開発したプラズマローゲン合成誘導体ですが、2023年3月14日にレット症候群の治療薬として Rare Pediatric Disease Designation(希少小児疾患指定医薬品)に指定されました。3月29日にはOrphan Drug Designation(一般希少疾患指定医薬品)も取得しましたのでお知らせいたします。
- Rare Pediatric Disease Designation(RPDD)について
RPDDは、希少小児疾患の予防と治療のための新薬の開発を促進することを目的としてアメリカで制定されているものです。本指定を受けた企業は数々の優遇措置があり、製造販売承認申請の優先審査に引き換え可能なバウチャーが付与され、第三者に高額で譲渡することもできます。
- レット症候群について
MeCP2遺伝子変異が原因で発症する神経発達障害で、ほとんどは女児に起こります。重度の知的障害、言葉の遅れ、自閉症状、てんかん発作、後天的な小頭症、歩行時の異常、脊柱の側弯などの症状が見られます。
多くは1歳6か月から3歳までに、今まで使っていた手の運動が上手にできなくなり、手を合わせる手もみ、手絞り様、一方の手で胸を叩くような動作などの、特有な手の常同運動が出現します。この時期に四つ這い、歩行などの運動機能もできにくくなり、それまで出ていた言葉が出なくなったりする退行現象が認められます。
患者数は日本でも約1,000人、世界で64,000人と推定されています。現在、根本的な治療法は開発されておらず、新たな治療法の開発が期待されています。
「難病情報センターホームページ(2023年4月現在)から一部引用」
- プラズマローゲン合成誘導体「KIT-13」について
KIT-13はレオロジー機能食品研究所、九州工業大学、九州大学大学院医学研究院によって開発されたプラズマローゲン合成誘導体(1-O-octadecyl-2-arachidonoyl-sn-glycerol-3-phosphoethanolamine)です。その特徴は、強い抗神経炎症効果を持つことです。
一方、レット症候群はMeCP2遺伝子変異で起こる脳神経発達障害で、その病態の主因は脳神経炎症であることが明らかにされています。そこで、レット症候群モデルマウス(MeCP2遺伝子変異マウス)にKIT-13を経口投与した結果、脳の神経炎症が減少し、それに伴って運動能力及び知的能力が著明に改善しました。また、生存日数が有意に増大しました。
このKIT-13は、レット症候群のみならず、うつ病やアルツハイマー病の治療薬となる可能性が期待されています。
参考文献
- Fujino T et al. 2017. Efficacy and blood plasmalogen changes by oral administration of plasmalogen in patients with mild Alzheimer's disease and mild cognitive impairment: a multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled trial. EBioMedicine 17:199–205.
- Fujino T et al. 2018. Effects of plasmalogen on patients with mild cognitive impairment: a randomized, placebo-controlled trial in Japan. J Alzheimers Dis Parkinsonism 8:419.
- Fujino T et al. 2019. Effects of plasmalogen on patients with moderate-to-severe Alzheimer’s disease and blood plasmalogen changes: a multi-center, open-label study. J Alzheimers Dis Parkinsonism 9:474.
- Fujino T et al. 2020. Therapeutic efficacy of plasmalogens for Alzheimer’s disease, mild cognitive impairment and Parkinson’s disease in conjunction with a new hypothesis for the etiology of Alzheimer’s disease. Adv Exp Med Biol. 1299:195–212.
- Hossain S et al. 2020. Biological functions of plasmalogens. Adv Exp Med Biol. 1299:171–193.
- Fujino M et al. 2022. Orally administered plasmalogens alleviate negative mood states and enhance mental concentration: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Front Cell Dev Biol. 10:894734.
- Hossain S et al. 2022. Plasmalogens, the vinyl ether-linked glycerophospholipids, enhance learning and memory by regulating brain-derived neurotrophic factor. Front Cell Dev Biol. 10:828282.
参考情報
株式会社レオロジー機能食品研究所
https://www.reoken.com/
公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/
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