「従業員のパフォーマンス阻害要因とは?」行動科学に基づいた組織環境調査2023によると、”パフォーマンスを把握していない”が一位、”フィードバックや評価がない”が次点となった
行動科学の知見に基づき、どの組織環境に問題があるかを明確にし、どうすれば改善出来るかが分かる「組織パフォーマンス診断」の開発と実態調査を行いました。
今回は組織の環境がどの程度パフォーマンス発揮へ寄与しているか調査し、どの要因に問題が多くあるか調査しました。
本稿では、パフォーマンス向上のための組織要因に関する調査結果を取り上げます。
本記事内におけるパフォーマンスとは、”個人の仕事における活躍度”を意味します。組織全体の成果や、外部影響によるものはこの定義から外れます(売上や満足度など)。
組織のパフォーマンスに影響を与えるものとして、従来の行動科学(応用行動分析学)では「先行条件と情報」「設備とプロセス」「知識とスキル」「結果」というカテゴリーに分けて研究・実践されてきました(Austin, 200)。
しかし、これらの要因に基づく分析は、欧米での活用が目立ち、国内での活用や日本語版はほとんど見られません。
そこで本調査では、国内の組織において、どの要因に課題が多く見られるのか調べました。
(日本語化するに際し、「結果」のカテゴリーを「フィードバック」と「計測」に分け、5つの要因で分析しています)
各要因の詳細は「組織パフォーマンス診断の特徴」をご覧ください。
また、本調査で用いている組織パフォーマンス診断はこちらから誰でもお試しいただけます。
調査概要
調査結果:組織内で最も多く課題が見られたのは「パフォーマンス発揮度を客観的に把握していない」
調査結果:次点で課題が見られたのは「パフォーマンス発揮と結びついたフィードバックや評価」
組織パフォーマンス診断の特徴
【調査概要】
調査期間 | 2023年8月6日~8月17日 |
調査対象 | 業種・規模に関わらず、ランダムに抽出した企業へアンケート依頼 |
調査方法 | Web調査で34の質問に回答 |
回答組織数 | 50 |
[表1] 5つの組織環境要因における得点分布
[表1]は、各要因の調査結果を得点化したもの。
この結果を見ると、図1「先行条件」と図2「設備とプロセス」については41~60点であると回答された組織が多かった。
[図1] 先行条件と情報の得点割合
[図2] 「設備とプロセス」の得点割合
また、図3「知識とスキル」の項目では、81~100点であると回答された組織が最も多い一方、0~20点であると回答した組織も次点で多く、充実している組織と不足している組織の乖離が目立つ。
残り「フィードバック」と「計測」の項目は多くの組織で課題が見られた。
今回は、この2つの項目について、より詳しく紹介していく。
【調査結果:組織内で最も多く課題が見られたのは「パフォーマンス発揮度を客観的に把握していない」】
[図4] 「計測」の得点割合
[図4]は計測の項目について回答した組織数の分布である。
計測とは、従業員のパフォーマンスを客観的に把握しているかという内容で、0~20点が圧倒的に多く、ほとんどの組織で課題が見られた。
これは、従業員のパフォーマンスを主観的にしか把握していなかったり、客観的根拠に基づいた振り返りが出来ていないことを示唆している。
Web調査では、具体的にこれら5つの質問に回答してもらった
・従業員のパフォーマンスを日々継続的に計測しているか
・従業員は自分で自分のパフォーマンスを観察・確認しているか
・記録されたパフォーマンスデータや結果を、どのように振り返るか一貫しているか
・パフォーマンスは数字だけではなく、グラフなどひと目でわかりやすいように記録されているか
[図4]からもわかるように、いずれも出来ていないと回答した組織が多く、従業員のパフォーマンスをなんとなくでしか把握していないことが推察される。
【調査結果:次点で課題が見られたのは「パフォーマンス発揮と結びついたフィードバックや評価」】
[図5] 「フィードバック」の得点割合
次点で課題が多く見られたのは、「フィードバック」の要因であった。
[図5]はフィードバックの項目について回答した組織数の分布である。
フィードバックは、パフォーマンス発揮に伴ったフィードバックや評価を日々行っているかという内容で、0~20点と回答した組織が最も多く、次点で41~60点、21点~40点と低い得点に集まった。
これは、組織内でどのようなパフォーマンス発揮に、どのような結果(金銭的・非金銭的問わず)が伴うのか、不明瞭になっている可能性が高い。
Web調査では、具体的にこれら7つの質問に回答してもらった
・作業やパフォーマンスに応じた報酬が与えられているか
・フィードバックは日々、継続的に行われているか
・フィードバックはすぐに行われているか
・管理者からの日常的なフィードバック・注目・承認があるか
・従業員は自分が発揮したパフォーマンス効果を実感しているか
・従業員へ、自分や組織のパフォーマンスがどのくらい発揮されているのかフィードバックしているか
・口頭でのフィードバックだけではなく、グラフや数字などのわかりやすく明確なフィードバックがあるか
[図5]の結果から、一部出来ていると回答した組織もあるが(41~60点)、全体的にはいずれも出来ていない組織が多く、パフォーマンス発揮と結びついたフィードバックや評価になっていないと考えられる。
【組織パフォーマンス診断の特徴】
組織パフォーマンス診断は、アメリカの企業で使われていたパフォーマンス診断チェックリスト(PDC:Performance Diagnostic Checklist )を参考に開発しました。
PDCは、応用行動分析学の研究者である、Austin (2000) によって作られ、組織内で改善が必要な領域を特定するために使われています。
しかし、コンサルタントや研究者など専門家の知見を活用してデザインされたものであり(Ralph et al, 2004)、一般の人が気軽に使うには、ハードルが高いという問題もあります。
また、欧米の企業を前提に英語で作成されたものを、そのまま直訳して使うことの問題点もありました。
そこで、一般社団法人日本ABAマネジメント協会では、PDCを参考に、日本バージョンとなる「組織パフォーマンス診断」を開発することにしました。
組織パフォーマンス診断は無料で誰でも使用でき、一般の方でも使いやすいものとなっています。
パフォーマンス発揮の組織環境要因
<先行条件と情報>
組織として求める成果、その成果へ繋がるために必要なパフォーマンスが十分に共有されているかどうか。また、業務の優先順位について統一した理解があり、パフォーマンスが発揮しやすいような工夫や補助があるかどうか。具体的かつ達成可能な目標が設定されているかどうか
<設備とプロセス>
業務遂行に必要かつ適切なツールが行き渡っているかどうか。また、組織レベル・部門レベル・個人レベルでのプロセスが整理されており、業務工程や手順が整えられているかどうか。パフォーマンスを妨害している要因がないかどうか。
<知識とスキル>
業務遂行をする上で、必要十分な知識を持っているかどうか。各業務に必要なスキルを獲得していて、スムーズに遂行できているかどうか。また、こういった知識やスキルを充実させるための訓練機会があるかどうか。
<フィードバック>
行動やパフォーマンスと、フィードバックや評価などの結果が適切に結びついているかどうか。自身や組織のパフォーマンス発揮の見える化ができているかどうか。
<計測>
現状どのようなパフォーマンスがどれくらい発揮されているか客観的に把握できているかどうか。計測されたパフォーマンス結果をどのように振り返り、活用するのかまで決まっているかどうか。
●参考文献
Austin, J. (2000). Performance analysis and performance diagnostics. In J. Austin & J. E. Carr (Eds.), Handbook of Applied Behavior Analysis (pp. 321-349). Reno, Ne- vada: Context Press.
Ralph N. Pampino Jr. , Paul W. Heering , David A. Wilder , Carolyn G. Barton & Liberty M. Burson (2004) The Use of the Performance Diagnostic Checklist to Guide Intervention Selection in an Independently Owned Coffee Shop, Journal of Organizational Behavior Management, 23:2-3, 5-19.
パフォーマンスの詳細測定
各項目に重み付けをすることによって、より詳細なパフォーマンスの測定を可能にしています。34の質問にご回答いただくことで、「組織の環境がパフォーマンス発揮へ寄与している部分」と「改善が必要な部分」を詳細に測定することができます。
パフォーマンス改善のためのアドバイス
組織パフォーマンス診断では、「パフォーマンスを発揮するのにどれだけ適切な環境なのか」が数値化されます。そして単に現状の結果が出るだけではなく、その結果に基づいて、パフォーマンス改善のためには何が必要なのかについても診断されます。
チャートによる視覚化
各パフォーマンスの発揮度について、「チャートによる視覚化」をすることで、組織の環境がどの程度パフォーマンス発揮に寄与しているか、より把握しやすくなります。また、改善すべきポイントが一目瞭然で分かります。
組織パフォーマンス診断を活用して実現できること
「社員のパフォーマンスを上げていきたいが、何をしたら良いのか分からない。」
「やる気がない、等の抽象的な指摘に終始し、パフォーマンス改善ができない。」
こういった企業様の声が多く聞かれます。
組織パフォーマンス診断をご活用いただくことで、組織の環境がどの程度パフォーマンス発揮へ寄与しているか知り、具体的な改善を行うことができます。
ツール名 : 組織パフォーマンス診断
URL :https://j-aba.com/assessment/
提供開始日時 : 2023年8月1日
利用料金 : 無料
運営・企画 : 一般社団法人ABAマネジメント協会
公式サイト : https://j-aba.com/(一般社団法人ABAマネジメント協会)
■会社概要
社 名:一般社団法人ABAマネジメント協会
代 表:代表理事 榎本あつし
所在地:〒197-0022東京都福生市本町66-1 秋山ビル2F
TEL:042-513-4707
URL :https://j-aba.com/(一般社団法人ABAマネジメント協会)
事業内容:
ABAマネジメントの研究、実践
「ABAマネジメントに関するセミナー、講演、講座の開催」
「ABAマネジメントに関する記事の寄稿」
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