業界初となるLCAを実施。EGRブロワのCO2排出量を「見える化」
[概要]
船舶および産業用送風機の設計から製造までを手掛ける株式会社大阪送風機製作所(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:枩山 聡一郎、以下「大阪送風機製作所」)は、EGRブロワのLCAとサプライチェーン排出量の算定を実施しました。なお、EGR ブロワにおけるCO2排出量の見える化は業界初(※1)の試みです。これにより今後の製品開発や改善策が明確になり、環境負荷の削減に向けた次のステップが確立されました。
■LCA実施の背景
脱炭素に向けた動きが世界的に加速するなか、船舶業界でも2050年のネットゼロ達成を目指した取り組みが進んでいます。このような状況を受け、大阪送風機製作所は、100年後も選ばれる企業であり続けるため、サステナビリティ経営への転換を図り、環境負荷の低減に向けたさまざまな取り組みを推進しています。その一環として、業界トップクラスのシェアを誇るEGRブロワ(※2)が環境に与える負荷を「見える化」し、さらなる改善に結びつけています。
■取り組みの概要
大阪送風機製作所は、主力製品であるEGRブロワにおけるLCA(※3)とサプライチェーン排出量の算定を業界に先駆けて実施しました。
ⒶEGRブロワのLCA
・規格:ISO14040およびISO14044に準拠した算定を実施(※4)
・評価対象:EGRブロワ(HタイプおよびF5タイプ)
・評価範囲:材料調達から廃棄まで(①原材料調達、②EGRブロワ製作、③エンジンメーカーでの取り付け、④造船所でのエンジン取り付け、⑤航行、⑥廃船)
・データ:2024年次、一次データは大阪送風機製作所の環境チームが収集
・原単位:IDEAおよび調達企業より提供いただいた係数を活用
・監修:株式会社Green Guardian
Ⓑサプライチェーン排出量の算定
・参照:GHGプロトコル
・評価対象:大阪送風機製作所
・評価年次:3か年(2015年、2022年、2023年)
・評価項目:Scope1、Scope2、Scope3(1~15カテゴリ)(※5)
・監修:株式会社Green Guardian
■LCAによる効果
ⒶEGRブロワ使用時の負荷が非常に大きい
LCAの結果、EGRブロワの使用時、すなわち船舶の航行時における電力由来の環境負荷が非常に大きく、次いでEGRブロワ製造、原材料調達と続きました。このことから、モーターの効率を向上させることで、CO2排出量の大幅な削減が可能であると予測。実際に、次世代機(モーターを変更したEGRブロワ)では、従来製品と比較して電力消費量が約20%削減できることが分かりました。それに伴い、CO2排出量及び電力由来の生涯コストも大幅な削減へと繋がります。この効果は、製品単位のみならず、組織単位(サプライチェーン排出量)にも大きく寄与します。
Ⓑ2023年のサプライチェーン排出量は114万トン
サプライチェーン排出量の経年変化を見ると、2023年に114万トンとなり、2015年と比べると100万トン減少していることがわかりました。この減少の主な要因として、陸上ファンからEGRを中心とした船舶ファンへの主力製品の切り替えが進んだことが挙げられます。さらに、2023年の結果に次世代機を適用した場合、CO2排出量は91万トンにまで減少。次世代機の使用によって、23万トンの削減が見込まれることが明らかになりました
■今後の展開
EGRブロワにおけるCO2排出量の「見える化」を実施したことで、製品開発や事業戦略に活用するための道筋が明確になりました。今後は得られた知見をもとに、汎用性のある製品はもちろん、特殊用途向けの製品開発にも注力し、お客様の多様なご要望に応える製品づくりを進めてまいります。また、サステナビリティ経営の一環として、環境負荷低減に関する取り組みを積極的に情報開示し、透明性の高い企業活動を推進していく予定です。
■用語解説
※1「業界初」
当社調べ(2024年11月時点)。EGRブロアに関するLCAを実施した事例の有無を確認。
※2「EGRブロワ」
EGR(Exhaust Gas Recirculation:排ガス再循環)システムを搭載したブロワ(送風機)。排ガスを再循環させることで燃焼ガス温度の上昇を抑制し、NOx(窒素酸化物)を大幅に削減する。
※3「LCA」
LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)は、製品やサービスが生まれてから廃棄・リサイクルされるまでのライフサイクルにおける環境負荷を評価する手法。「ゆりかごから墓場まで」と表現されるように、製品の一生にわたる環境への影響を定量的に算出し、削減可能なホットスポットを特定することが可能となる。
※4「ISO14040およびISO14044」
ISO14040にはLCAの原則と枠組みが、ISO14044にはLCAの技術的要求事項が記載されており、これら2つの基準によってLCAの実施方法が定められている。
※5「Scope1、Scope2、Scope3」
Scope1:燃料の燃焼や工業プロセスなど、自社における温室効果ガスの直接排出
Scope2 : 他社から購入した電気や熱などの使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出
サプライチェーン排出量は、Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量によって算定。
■本件に関するお問い合わせ先
株式会社大阪送風機製作所
担当:鎌尾、坂井
電話:06-6561-0701(代表)