日本初「カウンセリングAI実現のための大規模対話データベース」構築に関する産官学共同研究プロジェクトを開始
人と人とをつなぐAIを活用し、メンタルヘルス増進に貢献するための研究を行います
ひきこもり者や精神・発達障害者の教育・就労支援を手掛けるフロンティアリンク株式会社(所在地:東京都千代田区、代表取締役:佐藤啓)は、国立精神・神経医療研究センター並びに東京工業大学との共同研究にて、日本初となる実際のカウンセリングの臨床データに基づいた大規模な対話データベースを構築し、「カウンセリングAI実現に向けたカウンセラーの効果的なコミュニケーションのパターン解析」を行うプロジェクトを開始します。国内では100万人を超えるひきこもり者や400万人を超える精神障害者がおり、昨今ではコロナ禍で悩む方も多い中で、誰もがいつでも気軽に相談できる「AIカウンセラー」の実現に向け、産官学共同で取り組んでまいります。
■本研究の着眼
我が国では、精神疾患の患者の数は、糖尿病やがんの患者数をはるかに上回っており、10歳~39歳までの死因第1
位が「自殺」である(厚生労働省の令和2年「人口動態統計」)という、深刻なメンタルヘルスの問題を抱えています。そして新型コロナウイルス感染拡大にともない、メンタルヘルスの問題はさらに深刻化しています。
しかしながら、カウンセリングや精神科病院といった専門機関は、依然として敷居が高いと感じる方が多いのが現状です。
大規模調査では、これまでカウンセリングを利用したことが無い方がは全体の94%という結果が報告されました(独立行政法人中小企業基盤整備機構,2019)。「自分の悩みを他人に相談するのは気がひける」、「相談したいけれど専門機関はハードルが高い」、つまり、潜在的には相談ニーズがあっても実際の相談行為に至らないというケースが多いことが考えられます。
この潜在的ニーズを掬い上げるツールとして、AI(人工知能)があげられます。会話型AIは、スマートフォンの音声アシスタント、電話窓口のナビゲーション、ホテルの受付、雑談ロボットなど、私たちの身の回りで活躍しています。カウンセリングAI は、場所や時間の制約を受けず気軽に相談できるという利点を持っています。
当社はこれまで、ひきこもり者や障害者などの教育・就労支援を行っていますが、外出や対人交流への不安や恐怖を抱いている方は少なくありません。生身の人間よりバーチャルの方が自己開示しやすい(DeVault et al., 2014)という研究報告があり、カウンセリングAIは対人恐怖をもつ方に役立つという利点も持っています。
海外ではカウンセリングAIの研究が盛んに行われており、パソコンまたはスマートフォンのアプリケーションによる会話型AIも多く存在します。AIを開発するためには、基盤となるデータベースが必要です。例えば海外では「Alexander Street Press」というサイトから、体系的に整理された4000ものカウンセリングセッションの逐語データがオープンリソースとして入手できます。海外における対話システムの発展の要因の一つが、この体系的なデータ収集であるといえます。数百ものカウンセリングデータを収集し、それに基づいてシステムを構築した研究がいくつかみられます。
一方、我が国の状況に目を向けると、開発の基盤となるデータが十分でなく、先行研究の多くは少数データ、あるいは模擬カウンセリング(例:学生によるロールプレイ)によるものです。そのことが、メンタルヘルスケアを目的にしたAI が日本国内に多く出回っていないという現状につながっていると考えられます。単純な応答、あるいは選択式による応答(システム側が提示した会話の中から選択するもの)、またはカウンセラー主導でコーチングを行うものがみられますが、ユーザーの話を傾聴し、話を「深める」システムの発達には課題がある状況です。
そこで、フロンティアリンク株式会社は産官学連携で、日本初となる実際のカウンセリングの臨床データに基づいた大規模な対話データベースを構築し、「カウンセリングAI実現に向けたカウンセラーの効果的なコミュニケーションのパターン解析」を行うプロジェクトを開始します。
■プロジェクトの特徴
- 実際のカウンセリングデータを収集:複数の経験豊富なカウンセラーのカウンセリングデータを体系的に収集します。600セッションの収集を目標にしています。
- カウンセラーの効果的な発話を分析:自然言語処理、言語学、情報システム、精神医学、臨床心理学の専門家により、データをもとに、カウンセラーの効果的な発話に関して分析します。
■本プロジェクトの共同研究機関
- 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 研究責任者: 金吉晴
- 東京工業大学科学技術創成研究院未来産業技術研究所 研究責任者: 奥村学
■期待される効果
(1) 早期発見・早期介入によるメンタルヘルス増進・予防
ゆくゆくは医療機関や心理カウンセリング機関と連携する機能を搭載したいと考えています。精神病未治療期間(duration of untreated psychosis:DUP)が短いほど、予後が良いことが言われており、精神疾患の重篤化の防止につながる可能性があります。また、自殺などの緊急性が高い状態を検知することが出来れば、専門家による早期介入により自殺を防止できる可能性があります。
(2) 専門家の雇用促進・専門機関のネットワークの拡充化
「AIは人間に取って替わる存在なのではないか」「専門家の雇用機会を奪うのではないか」という懸念があるかもしれません。しかし、私たちは、むしろ「人と人をつなぐ」存在であると考えています。
カウンセリングAIは相談ニーズがあっても相談行動に移せない方に相談機会を提供します。専門機関と連携することで、より多くの方が専門機関を利用する可能性があります。カウンセリングAI とツールを通じて、ユーザーの状態や居住場所などの情報をもとに、専門機関につなげるネットワークを拡充できるかもしれません。それが可能になった場合、(1) メンタルヘルスの増進・予防効果がより高まるでしょう。
(3) 「気軽に相談できる風土の促進
我が国では悩みがあっても「誰かに相談するのは申し訳ない」「相手の迷惑になる」という意識が高い傾向にあります。新型コロナウイルス感染拡大により、社会的孤立化や孤独感の問題は深刻化しています。誰にも相談できず苦悩や孤独感を一人で抱えている人が増えています。カウンセリングAIの発展・普及により、多くの人が気軽に相談できる風土を導くことができれば、苦しみや生きづらさが少しでも解消できるのではないかと考えられます。
■ お問い合わせ先■
フロンティアリンク株式会社
本社管理部 広報・マーケティング担当:大庭
〒102-0083 東京都千代田区麹町3-5-2 ビュレックス麹町
TEL: 03-6421-2531 FAX: 03-6421-2538
E-Mail: info@frontier-link.jp
URL: https://frontier-link.jp/
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