原因不明の腹痛と急性肝性ポルフィリン症の診断に関する後方視的研究の中間報告を発表

急性肝性ポルフィリン症(AHP)の診断基準の臨床所見を満たす全例において、鑑別診断に必要な尿検査が行われていないことが明らかに

Alnylam Japan株式会社

Alnylam Japan株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 岡田 裕、以下「アルナイラム」)は、8月27日に、第27回日本病院総合診療医学会学術総会にて「原因不明の腹痛と急性肝性ポルフィリン症の診断に関する後方視的研究~中間報告~」が発表されたことをお知らせします。

近年の検査技術の進歩に伴って、診断可能な腹痛は増加しています1)。しかし、腹痛の原因疾患は多岐にわたり、未だに診断がつかない腹痛症例が一定数あり、その中には、急性肝性ポルフィリン症(AHP:acute hepatic porphyria)を代表とする希少疾患等が含まれている可能性があります。AHPに限らず、臨床現場では、複数の医療機関を受診しても診断がつかない腹痛に苦しむ患者さんは少なくなく、それにもかかわらず、原因不明の腹痛を定義する明確な基準は存在しません。


本研究は、一般社団法人日本病院総合診療医学会(理事長:広島大学名誉教授、JR広島病院理事長兼病院長 田妻 進先生)との共同研究であり、2019年4月から3年間に、本研究を実施している6つの医療機関の総合診療部門を受診し、腹痛の訴えがあり、腹部CT検査、上部・下部消化管内視鏡検査、腹部エコー検査のいずれかを実施した患者についてカルテレビューを実施し、診断不明の腹痛と、腹痛の原因が特定できた患者とのデータを比較したものです。中間報告の対象となった944例のうち、腹痛の原因が特定されたのは724例 (76.7%)で、診断不明の腹痛は220例 (23.3%)でした。診断不明の腹痛の全例にAHPの診断基準に含まれているいずれかの臨床所見*を認め、うち139例 (63.2%)に尿検査が実施されていました。しかしながら、AHPを診断するための尿中アミノレブリン酸 (ALA)や尿中ポルフォビリノーゲン (PBG)の測定は行われていなかったことが明らかになりました。


発表者であり、研究共同代表者でもある、佐賀大学医学部附属病院 総合診療部准教授の多胡 雅毅先生は、「腹痛は誰にでも起こりうる一般的な症状で、激しい腹痛の原因疾患は様々ですが、その中にAHPのような希少疾患が隠れていることがあります。本中間報告では、診断不明の腹痛の患者に対し、AHPを診断するための尿中ALA、PBG測定が実施されていなかったことが明らかになり、臨床現場におけるAHPの認識の低さが重要な課題として浮き彫りになりました。この課題を解決するためには、AHPの診断に至るまでのプロセスを確立し一般化することが必要だと考えます。最終報告に向け、原因不明の腹痛の定義を提言し、AHPの鑑別診断が推奨される患者像を検討し明らかにしていきたいと思います」と述べています。


Alnylam Japan株式会社 メディカルアフェアーズ部部長で、医師の奥 真也は、「AHPは激しい急性の腹痛を主な症状とする稀な遺伝性疾患です。腹痛は多くの疾患で見られる症状であり、他の疾患として診断されている場合が多く、確定診断に至るまで平均15年を要するとも報告されるなど3)、鑑別診断の難しさが課題となっています。本中間報告を受け、AHPを鑑別するために有用な尿中ALA値ないし尿中PBG値の測定が、診断不明の腹痛の診断過程において含まれていない現状は改善する必要性があると考えております。AHPの診断向上に向けて、アルナイラムはあらゆるステークホルダーと緊密に連携し、疾患啓発に取り組んで参ります」と述べています。


 *AHPの臨床所見は以下のいずれか1.思春期以降に発症する。発症は急性のことが多い2.種々の程度の腹痛、嘔吐、便秘(消化器症状)3.四肢脱力、痙攣、精神異常(精神神経症状)4.高血圧、頻脈、発熱など(自律神経症状)5.皮膚症状(光線過敏症)2)


AHPについて

急性肝性ポルフィリン症((AHP)は、生命を脅かしうる激しい急性の腹痛発作が主にみられる遺伝性の希少疾患です。AHP には、急性間欠性ポルフィリン症(AIP: acute intermittent porphyria)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP: hereditary coproporphyria)、異型ポルフィリン症(VP: variegate porphyria)、および ALA 脱水酵素欠損性ポルフィリン症(ADP: ALA dehydratase deficiency porphyria)の 4 病型があり、いずれの病型も、遺伝子変異により肝臓内のヘム産生に必要な特定の酵素が欠損することで生じます。

AHP は主に思春期から閉経前の女性にみられ、その症状は様々です。最もよくみられる症状は激しい原因不明の腹痛であり、随伴症状として、四肢痛、背部痛、胸痛、悪心、嘔吐、錯乱、不安、痙攣、四肢脱力、便秘、下痢、暗色尿あるいは赤色尿等がみられます。AHP は発作中に麻痺や呼吸停止が起こる可能性もあることから、生命を脅かす危険もあります。また、患者さんによっては日常生活の機能や生活の質に悪影響を及ぼします。

AHPはその症状が非特異的であるため、婦人科疾患、ウイルス性胃腸炎、過敏性腸症候群(IBS)、虫垂炎などの他の疾患と診断されることもあり4)、世界的には、症状が現れてから診断がつくまでに平均 15 年に及ぶことが報告されています3)。また、AHP の長期合併症には、高血圧、慢性腎不全、肝細胞癌を含む慢性の肝疾患があります。


Alnylam Japan株式会社について

Alnylam Japan 株式会社(https://www.alnylam.jp/ )は、次世代医薬品として注目される核酸医薬の一つである RNAi 治療薬を日本の患者さんに届けるため、2018 年 7 月に設立されました。RNAi 治療薬は、従来はターゲットにできなかったmRNAに選択的に作用することで、これまで治療が困難であった疾患の新たな治療選択肢となる可能性があります。RNAi 技術を応用して開発された世界初の siRNA 製剤オンパットロ点滴静注2mg/mL(一般名:パチシランナトリウム、適応症:トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)は、当社が日本国内で 2019 年に販売した最初の製品です。2021 年には、2 剤目となる siRNA 製剤ギブラーリ皮下注189mg(一般名:ギボシランナトリウム、適応症:急性肝性ポルフィリン症)、2022年11月には3剤目となるsiRNA 製剤アムヴトラ皮下注25mgシリンジ(一般名:ブトリシランナトリウム、適応症:トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)を販売しています。当社は、医療の未来を切り拓く可能性のある新しい治療薬の開発に取り組み、アンメットニーズの解消に貢献することを目指しています。


参考文献

1.        急性腹症診療ガイドライン 2015 

https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0214/G0000779/0001 (2023/7/16 access)

2.        難病情報センター「ポルフィリン症(指定難病253)」

https://www.nanbyou.or.jp/entry/5546 (2023/7/16 access)

3.        Bonkovsky et al. Am J Med 2014;127:1233–41

4.        近藤 雅雄,他. ALA-Porphyrin science. 2012;2:73-82.

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会社概要

Alnylam Japan株式会社

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URL
https://www.alnylam.jp/
業種
医療・福祉
本社所在地
東京都千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス丸の内11階
電話番号
03-6629-6200
代表者名
岡田裕
上場
未上場
資本金
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設立
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