【世界初】PhantomSVD(ファントム局所的気相成長)法でSiCへのルチル構造二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)製膜に成功
―r-GeO2パワーデバイスの実現へ大きく前進―
Patentix株式会社は、立命館大学発ベンチャーであり、超ワイドバンドギャップ半導体(UWBG)材料「二酸化ゲルマニウム」を用いた半導体基板・パワーデバイスの研究開発を進めています。この成果は、酸化物半導体パワーデバイスの開発で問題になっていた、基板の低い熱伝導率という課題に対して放熱性に優れたSiCを用いることで解決できる可能性を示す大きな成果となりました。
1.概要
ルチル構造二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)は、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)と比べてさらに大きなバンドギャップをもつため、r-GeO2によるトランジスタやダイオードは高耐圧、高出力、高効率(低損失)という優れたパワーデバイス特性を備える事が期待されています。r-GeO2パワーデバイスの開発は日本が世界をリードしており、Patentix株式会社では2022年12月会社設立以降、r-GeO2エピウエハの研究開発を進めております。
また、Patentix株式会社では、独自に開発したPhantomSVD(ファントム局所的気相成長)法を用いて製膜しており、PhantomSVDは、安全安価な原料を用いることができコストパフォーマンスに優れています。また、従来の霧(ミスト)状にした溶液を用いるCVD法とは異なる原理で結晶成長が可能であり、より安全・安心な薄膜合成が可能となります。
2.今回の成果及び今後の予定
立命館大学およびPatentix株式会社は、共同で、次世代半導体材料として注目される「ルチル構造二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)」をPhantom SVD(ファントム局所的気相成長)法によって、SiC上に製膜することに世界で初めて成功しました。この成果は、2023年9月18日~21日にポーランドのワルシャワで開催されている、ヨーロッパ最大の材料学会である「European Materials Research Society (E-MRS)」のFall Meetingで立命館大学大学院理工学研究科の清水悠吏(Patentix株式会社取締役兼務)により発表され、酸化物半導体パワーデバイスの開発で問題になっていた、基板の低い熱伝導率という課題に対して放熱性に優れたSiCを用いることで解決できる可能性を示す大きな成果となりました。今後は、r-GeO2薄膜の電気特性評価や膜中に存在する欠陥評価等を行い、高品質なr-GeO2エピ製膜技術の開発を進めてまいります。
写真の説明:Si(111)/3C-SiC(111)上に成長したルチル構造r-GeO2の写真。左端の未成長部は膜厚測定のためにマスキングした跡。
構造の説明:Si(111)基板上に製膜した<111>配向3C-SiC薄膜の上にr-GeO2の製膜を行った。
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