おせっかい営業がセールスの国際学会で評価
おせっかい営業が国際学会で評価!新たな経営手法エフェクチュエーションの活用で、模倣困難なおせっかいマインドを教育可能なスキルへと変革できるか
AIやチャットボットなどの技術が進化する今日においても、人が人のことを思い親切心を働かせる「おせっかい」は人間関係を潤滑にする有効な手段ではないか。そうした仮説のもと、二人の研究は始まった。「おせっかい」によって営業成績を上げてきた「おせっかい協会」の高橋恵氏のケーススタディを発表。5月にはデプスインタビューを実施。発表はポジティブに受け止められ、特にドイツやフィンランドの研究者から高い評価を得た。
高橋恵氏
1942年生まれ。短大卒業後、広告代理店に勤務。同社を結婚退職後、2人の娘の子育てをしながらさまざまな商品の営業に従事し、トップセールスを記録。40歳で離婚。42歳で当時高校生だった長女と共に自宅のワンルームマンションで株式会社サニーサイドアップを創業。その後、長女に託した同社は、2008年にジャスダックに上場。2016年には世界のPR会社19位(日本1位)にランキングされ、2018年に東証一部上場を果たす。2013年には一般社団法人日本おせっかい協会を設立。
ケーススタディ
発表では、高橋恵氏の「おせっかい」エピソードを通じて、顧客との信頼関係の構築が営業成績に与える影響を具体的に示した。たとえば、高橋氏は、友人の頼みで女性用カツラを販売した経験があるが、その際に女性用カツラの必要性を感じた。しかし当時、カツラといえば男性のものであった。
「俳優の夏目雅子さんが闘病のために髪を失っていることも知っていたので、女性にもカツラが必要だと思いました。しかし、カツラを販売するのが男性ばかりなので、カツラ会社の人はその重要性を知らないのではないかと考え、大手カツラメーカーに連絡をしたのです。なんとか社長とアポイントが取れ、女性にもカツラが重要だと伝えましたが、社長のほうはにべもない態度。『帰れ!』と言わんばかりで…。仕方なく帰ろうとしたその時、社長が誤ってカッターで手を切ってしまうのを目にしました。追い返された形の私でしたが、帰り道、社長の怪我が心配で仕方なくなり、薬局を探して手当用品を購入し急いで届けました。今思えば、大きな会社だから薬くらいあったと思うのですが、その時は、とにかく社長さんの怪我が気になって。なんとかあの血を止めてあげたい、その一心で届けました。おせっかいですよね……」(高橋氏)
しかし、数か月後にカツラメーカーから高橋氏は一本の電話を受けた。あの時の社長からであった。彼は丁寧に高橋氏に礼を伝え、テレビCMの仕事を依頼してきたという。おせっかいがビジネスにつながったのである。
高橋氏は「私は会社を立ち上げたけれど、大きくしたのは娘。ただ、娘も私に負けず劣らずおせっかい。いつも周りのことを大切に考えて動いています。」と語る。
高橋さんのようになりたいが、できない
高橋氏の周りには、その人柄に魅せられて多くの人が集う。実は谷口もその一人であった。「高橋さんとの出会いは8年前。その魅力的な生き方を真似したいと思いましたが当時の私にはできませんでした。特に難しかったのは、見返りを期待せずに動きなさい。それもすぐに!というところ。しかし数年後、高橋さんの言っていることが出来るかもと思う瞬間を得たのです。たまたま入学した関西学院大学のビジネススクールでエフェクチュエーションに出会ったときです。あ、この論理を使えば、高橋さんの言う、見返りを期待せずに動くことができるかもしれない!そう思いました。」
エフェクチュエーションの可能性
エフェクチュエーションは、いくつものビジネスを成功させた熟達した起業家に共通する意思決定プロセスや行動様式を抽出し、一般化した理論である。ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモン教授の弟子である経営学者、サラス・サラスバシー氏が、著書『エフェクチュエーション:市場創造の実効理論』(Sarasvathy, 2008)の中で提唱した。日本においては、昨年、神戸大学の吉田満梨准教授とサイボウズ執行役員の中村龍太氏が共著で入門書を出版し、ベストセラーとなっている。谷口は吉田准教授からエフェクチュエーションを学び、MBAを修了した関西学院大学ではティーチング・アシスタントも務めている。「エフェクチュエーションの論理は、5つの原則から構成されています。自分自身が持っているものを最大限活かし、できる範囲でとにかく動く。特徴は行動の動機を利益にフォーカスしないこと。焦点を当てるのは損失です。損失が自分で飲めるのであれば動くという考え方です。これは、高橋さんの見返りを期待せずに動くことに通じます。この論理を使えば、私のような引っ込み思案な人でも高橋さんがいう人生を豊かにするおせっかいができるようになり、しかもだんだん上達してきます。実際今の私を見て誰も引っ込み思案とは思わないでしょう。おせっかいは、エフェクチュエーションを活用した練習によって獲得できます。」
共同研究者の見解
「今回はセールス教育の研究として、おせっかい営業の事例を検討しました。セールスのエキスパートの心構えやスキルを教えることの難しさはこれまで多くの研究で指摘されてきましたが、その解決のためにエフェクチュエーションの理論を活用できる可能性を示唆しています。今後は日本の個別事例研究ということに留まらず、グローバルなネットワークと連携してさらに研究を進めていきたいと考えています。」(本下准教授)
世界の反応
おせっかいや親切心は個人の資質と考えられがちであるが、エフェクチュエーションを使えば、こうした人間力も教育可能なスキルとして実践できる。その可能性を示唆した今回の研究発表は、同学会でポジティブな反応を得た。「今回の学会テーマは、Faster,higher,stronger and together.高橋恵さんが強調する、営業の5秘訣、行動、スピード、情熱、愛情、人間力にも共通したせいかも。」(谷口)当日行われたGALA Dinnerでも多くの意見が寄せられ、ドイツやフィンランドの研究者からは高く評価された。
株式会社スナックレモネード
所在地:大阪府大阪市北区梅田1丁目2番2号大阪駅前第2ビル12-12
資本金:50万円
設立:2023年12月19日
役員:代表取締役 谷口千鶴
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