莫大な産業排熱(「水蒸気排熱」「ガス排熱」)から高効率発電が可能な独自構造熱電発電チューブの開発に成功!
本開発成果を「The 41st International and 7th Asian Conference on Thermo-electronics (ICT/ACT 2025)」で発表します。
株式会社Eサーモジェンテック(本社:京都市、代表取締役:岡嶋 道生)は、通常の熱電材料BiTeによるフレキシブル熱電発電モジュール「フレキーナ」の開発に成功し、それを用いて、環境中に排出されている莫大な低温排熱から、初めて実用的なコスト性能比での電力回収を可能にした様々な独自熱電発電技術の社会実装を進めています。
低温排熱源として特に莫大なのは、様々な産業で排出されている「水蒸気排熱」と「ガス排熱」です。同社はこの度「フレキーナ」を活用しNEDOの助成を得て、それぞれの排熱源から高効率な電力回収が可能な独自構造の熱電発電チューブの開発に成功しました。また今年度に、そのサンプル販売も開始します。
まず「水蒸気排熱」に関しては、川崎重工業(株)との共同開発により、175℃の「水蒸気排熱」から高効率の電力回収が可能な独自の二重管熱電発電チューブを開発すると共に、それを搭載したkWクラスの熱電発電が可能なチューブ型熱交換器を開発試作し、6kWの出力を確認しました。
また「ガス排熱」に関しては、様々な産業の焼成炉からの「ガス排熱」(350℃)から高効率な電力回収が可能な、独自集熱コアを内蔵した発電チューブを開発すると共に、それを使った400W出力の熱電発電システムの開発試作に成功しました。
同社はこれら2件の開発成果を、6月15~19日に仙台で開催される「The 41st International and 7th Asian Conference on Thermo-electronics (ICT/ACT 2025)」で発表します。
【背景】
世界的に脱炭素化に向けた動きが加速する中、温室効果ガス(GHG)排出量の削減が大きな社会課題となっています。特に莫大な排熱のほとんどが300℃以下の低温排熱であり、この低温排熱を活用しようとする取り組みに注目が集まっています。
Eサーモジェンテックは、2021年にNEDOの助成を得て、既に電子冷却用で量産実績のあるBiTeを使い、この低温排熱から初めて実用可能なコスト性能比で電気エネルギーに回収できる独自コア技術;フレキシブル熱電発電モジュール「フレキーナ」(基本特許:第5228160号)の開発・実用化に成功しました。現在、1,000社以上の顧客から引き合いを頂く等、大変大きな関心を集めています。
熱電発電は、古くから研究開発されてきましたが、従来の熱電発電モジュールはセラミックス基板上に熱電素子を実装した構造が主でした。しかし排熱源の多くが、配管など表面が湾曲したものが一般的なため、排熱を効率よく熱電発電モジュールに伝えることができず、特に莫大な低温排熱に対し、実用的なコスト性能比での発電ができませんでした。
一方「フレキーナ」は、フレキシブル構造で熱源パイプに密着装着できるため、パイプ構造をうまく利用することにより、従来のセラミック基板モジュールではできなかった高い熱回収効率が実現できます。また需要が莫大なため、他の半導体産業と同様に量産効果による大幅な低コスト化が可能です。その結果この「フレキーナ」により、従来の熱電材料BiTeではこれまで不可能とされてきた、莫大な低温排熱からの熱電発電の実用化が、初めて可能になりました。
このフレキシブル熱電発電モジュール「フレキーナ」の外観を図1に示します。

【今回の発表内容】
1.二重管熱電発電チューブとそれを搭載した6kW出力の熱電発電が可能な熱交換器
様々なプラントの様々な工程で発生する排熱を熱源として利用するため、様々なボイラを使って大量の水蒸気が作られています。その水蒸気は使用後、熱交換器を介して温排水に変換され、冷却塔で冷却され再利用されるか、廃棄されています。同社はこの「水蒸気排熱」の有効活用を目的に、コジェネレーション設備の有力メーカーである川崎重工業株式会社との共同開発により、NEDOの助成を得て、本モジュールを搭載した高効率の二重管熱電発電チューブと、それを使った6kW出力の熱電発電が可能なチューブ型熱交換器の開発・試作に成功しました。
まずチューブ型熱交換器に使われる1.6mのチューブ(外径Φ31.8mm)を二重管構成とし、その内管と外管の間に本モジュールを密着装着させる独自工法を考案し、図2に示す熱電発電チューブの開発に成功しました。この熱電発電チューブは、内管に175℃の飽和水蒸気(0.8MPaG)、外管に冷却水(20℃、1本あたり0.53㎥/h)を流したとき、1本あたり200Wと高い発電効率が確認できました。またこの二重管構造熱電発電チューブを30本搭載して、熱電発電が可能な熱交換器を開発・試作し、6kWの出力を確認しました。


また「水蒸気排熱」の規模に応じて、この6kW出力の熱電発電が可能な熱交換器を複数台、並列接続することにより、数十kWの熱電発電システムが可能になります。
この「水蒸気排熱」で発電する熱電発電システムの特長は、高い熱回収効率とコスト性能比に加え、通常の発電機のように稼働部がないため維持費の大幅な削減が可能なことです。なお発電電力は、パワーコンディショナーを介して工場内の系統電力に接続し、工場内機器用動力の補助として利用する等、様々な応用方法が可能です。
また本二重管構造熱電発電チューブは、「水蒸気排熱」だけでなく、他の排液の排熱を利用した熱電発電機能付き熱交換器にも展開が可能で、省エネルギー化やカーボンニュートラル対策として、大きな貢献が期待されます。現在、この二重管構造熱電発電チューブのコストダウンや標準化を目的に、「水蒸気排熱」以外の熱排液利用の熱電発電システムを、複数の有力企業とPoCで実施中です。
【特長】
◎ 1ユニット6kW出力と優れたコストパフォーマンス
◎ 発電機のような稼働部が無いため、省スペース&低維持費
◎ 本数を変え、広範囲の熱源規模に対応可能
◎ 短期での投資回収が可能
-目標投資回収期間:量産時 5年(省エネ助成金活用)
-目標耐用年数:発電ユニット 20年、電源回路 10年
2.集熱コア内蔵熱電発電チューブとそれを搭載した熱電発電システム
莫大な「ガス排熱」が様々なプラントから排出されており、多くの企業がカーボンゼロ対策としてその莫大な排熱からの電力回収を要望しています。ただ排ガスは気体のため熱容量が小さく、パイプ壁を介する単純な熱回収方法では熱抵抗が大きく、高効率での熱回収が難しいという課題がありました。
そのため同社は、NEDOの助成を得て、図4に示すようにパイプ内に、圧損と熱抵抗をフローシミュレータにより最適設計した独自構造の集熱コアを挿入し「ガス排熱」の熱抵抗を下げ、パイプ外側と冷却水管壁との間に「フレキーナ」を密着装着することで、高い熱回収効率と高効率を可能にした熱電発電チューブ(口径Φ130mm、長さ42cm)の開発に成功しました。このチューブでは、「ガス排熱」が350℃、100㎥/h 、冷却水が20℃、1.2L/minのとき、100W/本の発電出力が得られます。またこの発電チューブを4本並列接続した発電システムを開発試作して、焼成炉からの「ガス排熱」が350℃、400㎥/hの排気ダクト内に設置し、400Wの発電出力が得られることを確認しました。
本熱電発電システムは、熱回収が難しい「ガス排熱」からでも高効率な発電が可能なことに加え、タービンのような可動部分がないため低維持費が可能なこと、また発電チューブは簡単に取り外しが可能で定期的なメンテナンスが容易なこと、また排熱量に応じて発電チューブの本数を増やすことにより、スケールアップが容易なこと等、多くの特長を有するため、今後、大きな事業展開が期待されます。


本集熱コア搭載熱電発電システムは、図4に示すように、集熱コア内蔵発電チューブとして標準化し、「ガス排熱」の規模に応じて発電チューブの本数を増やすことにより、スケーラブル対応が可能なkWクラスの熱電発電システムとして事業化する計画です。
また顧客の排熱現場では冷却水が使いにくい所も多く、冷却水を使わずにすむ空冷式発電システムに対する要望が強く、そのため現在、空冷式の熱電発電システムも開発中です。
【特長】
◎ 16本構成の1ユニットで、1.6kWの出力が可能(水冷式)
◎ 水冷式が難しいところでは空冷式も可能
◎ 発電機のような稼働部が無いため、省スペース&低維持費
◎ 本数を変え、広範囲の熱源規模に対応可能
◎ 短期での投資回収が可能
-目標投資回収期間:量産時 5年(省エネ助成金活用)
-目標耐用年数:発電ユニット20年、電源回路 10年
【今後の展開】
同社は、既に実用化されている熱電材料BiTeを用いて、独自のフレキシブル熱電発電モジュールと、本モジュールのフレキシブルな特長を活かして、パイプ構造を活用した様々な独自熱回収技術を開発し、地球環境中に排出されている莫大な「低温排熱」から、世界で初めて、経済合理性を有して、電気エネルギーの回収ができることを実証しました。
これまで熱電発電では、せいぜいmW程度の発電しかできないと思われてきましたが、我々の独自技術によりその常識が覆され、今回の発表のように、初めて数十kWクラスの熱電発電が可能になりました。「低温排熱」が莫大であることを考えれば、今後その大きな需要を背景に大幅なコストダウンが可能であり、さらにMWクラスやGWクラスの発電も夢ではありません。
最近、災害に強い電力給配電システムとして、図6に示す分散型電源システムVPP(Virtual Power Plant) が注目を集めています。これは小規模の発電システムや蓄電池システムをネットワークで繋ぎ、需給バランスをとって電力の安定供給を図る電力給配電システムです。同社は以上述べた様々な独自技術を基に、今後工場や地域の排熱を利用し、この分散型電源システムにおける熱電発電システムとして、多くの方々の協力を得てその構築に貢献することを、将来の展望としています。

★記事;http://e-thermo.co.jp/pr20250609.pdf
【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社Eサーモジェンテック R&D阪大拠点
TEL:06-6170-5535
E-MAIL:inq@e-thermo.co.jp
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