【第2回】「カネ忠」から「WMATCHA&CO.」へ

一度途絶えた300年の文脈を、いま再び引き継ぐ「Re-founder」としての選択

WMATCHA&CO.合同会社

途絶えていた家業の記憶

京都府和束町。美しい茶畑が広がるこの地には、先人が長きにわたり紡いできた歴史の地層があります。私の実家である竹谷家も、記録として残っているだけでもおよそ300年前から、この土地に根ざしてきた家系です。

かつては「カネ忠」という屋号を掲げ、茶農家として地域と共に生きる営みを続けていた時代がありました。しかし、時代の変化や産業構造の変遷のなかで、代々続いてきたその茶農家としてのバトンは、私の代になる前に一度、完全に途絶えていました。

WMACTHA&CO. の前身となる「カネ忠」の茶箱

幼い頃の私にとって、実家に大切に受け継がれてきた家紋やかつての屋号は、どこか遠い過去の歴史に過ぎませんでした。お茶の家を継ぐという具体的な意識を持つこともなく、私は自分の情熱の赴くままに、アメリカンフットボールという全く別のフィールドへと飛び出していきました。

世界への憧れから、起業家精神との出会い

16歳からアメフトの世界に没頭し、19歳で日本代表選手に選出されたとき、異国の地で日の丸を背負って世界の強豪と真っ向からぶつかり合う経験をしました。150人近い巨大な組織のなかで、個人としてどう規律を持ち、全体にどう貢献するかを考え続けた日々。そこで私が強く魅了されたのは、「国を背負って世界で活躍する生き方」そのものの、圧倒的なかっこよさでした。

アメリカンフットボール部時代の竹谷(右)

その後、アメフトのフィールドから離れ、サンフランシスコ州立大学へ留学しました。実際に異国で暮らすなかで、私の内面には静かな変化が訪れました。外の世界から日本という国を客観的に見つめ直すことで、それまでは意識することもなかった「日本人としての自分」という確かな帰属意識が、深く芽生えていったのです。

それと同時に、シリコンバレーの最前線で理想を追い求める起業家たちの姿に出会ったのも、この留学時代のことでした。彼らが放つフロンティアスピリットは、かつてアメフトの現場で感じた「世界に挑むかっこよさ」と激しく共鳴し、私の起業家精神を強く刺激しました。

大学修了後、ニューヨークや東京で投資・コンサルティングの仕事に携わるようになっても、私の胸の奥には常に、あの頃に出会った起業家たちのような「自分の人生を賭けて、本質的な価値を創り出す生き方をしたい」という渇望が、一つの消えない消し炭のように残り続けていました。

足元のフロンティアに向き合う

そして、世界的な抹茶(MATCHA)ブームの到来をビジネスの最前線で目撃したとき、点と点が突如として繋がりました。 海外の人々が日本の緑茶の精神性に新しい価値を見出している。その光景を見た瞬間に脳裏に浮かんだのは、かつて和束で途絶えてしまった、あの「カネ忠」の記憶でした。

世界に打って出るためのフロンティアは、他でもない、自分の足元に眠っているのではないか。先人が守り、そして途絶えさせてしまった「あの土地と歴史」に向き合うことこそが、自分の生きるべき道なのではないか。その直感に従い、私はコンサルティングや投資の世界でのキャリアを一度横に置き、京都へとUターンする決意を固めました。

帰国後、私を待っていたのは「家系としてのつながりはあれど、技術や知識はゼロ」という厳しい現実でした。一度途絶えた文脈を取り戻すため、私は和束の生産者の方々の元へ通い、一から教えを乞うところから始めました。土の匂い、季節の移り変わり、お茶作りの精緻な設計。現場で泥臭く学び直すプロセスを通じて、私は単なる「新米の起業家」ではなく、この土地の歴史のバトンを預かった「継承者」であるという当事者意識を、深く肌で感じるようになりました。

私が自らを「Founder(創業者)」ではなく、「Re-founder(再創業者 / 再定義者)」と名乗る理由は、ここにあります。 私は、過去の伝統とは全く無関係な、新しいビジネスをゼロから立ち上げたわけではありません。先人が遺してくれた精密な設計と、竹谷家の文脈を、現代の、そして50年先の世界の文脈に合わせて「もう一度創り直す(Re-found)」役割を担っているのだ、と思い定めています。

一人でやるのであれば、小さく、しかし美しく家業を守りながら継続していく道もありました。それでも「WMATCHA & CO.」という組織を創り、社会へ向けて持続可能な新しいモデルを提示しようとしているのは、途絶えた伝統をただ博物館に閉じ込めるのではなく、現代人が心から愛着を持てる形でシームレスに翻訳したいからです。

歴史の壮大なスケールの中で、私たちはほんの一時の当事者に過ぎません。しかし、「カネ忠」の精神を受け継ぎ、「WMATCHA & CO.」として再び動き出したこの歩みは、50年、100年先へ本質的な文化を繋ぐための、確かな一歩であると確信しています。

WMATCHA&CO.合同会社

HP:https://linktr.ee/wmatchaco

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会社概要

URL
https://linktr.ee/wmatchaco
業種
水産・農林業
本社所在地
京都府相楽郡和束町大字石寺小字大屋垣内8番地
電話番号
-
代表者名
竹谷俊哉
上場
未上場
資本金
150万円
設立
2025年01月