シンガポール国立大学NUSエンタープライズ、アジア初のVC支援『NUS VCプログラム』を始動
ディープテックスタートアップ支援に向け、総額1億5,000万シンガポールドル(約1億1,600万米ドル)を拠出
シンガポール国立大学(National University of Singapore、以下NUS)の起業支援部門であるNUS Enterprise(NUSエンタープライズ)は、総額1億5,000万シンガポールドル(約1億1,600万米ドル)を拠出し、アジア初となるベンチャーキャピタル支援プログラム「NUS VCプログラム」の立ち上げを発表しました。

アジアでは、ベンチャーキャピタル(以下 VC)投資が急減しており、投資額は過去10年で最低の850億シンガポールドル(約660億米ドル)となり、資金調達が難航する状況が長期化しています。2023年以来、市場全体で5%の減少が見られ、2024年のアーリーステージ投資額は380億シンガポールドル(約290億米ドル)未満にとどまっています。日本国内でも同様の傾向が見られ、スタートアップへの投資額は2022年の8,736億円をピークに、2023年には約6,440億円と前年比26%減少しました。特に、ディープテック分野においては、シードからシリーズAのフェーズにおける資金調達の難易度が高まっており、企業価値(バリュエーション)の見直しや、調達期間の長期化などが課題となっています(出典:「Japan Startup Finance 2023」)。
こうした環境下、NUSはテック系スタートアップが直面する深刻な資金およびメンタリング不足に対応するため、「NUS VCプログラム」を立ち上げました。
「NUS VCプログラム」の目的
NUS VCプログラムは、NUSエンタープライズに所属する有望なベンチャー、特に、研究者がその研究室成果をグローバルベンチャーへと転換する事業家支援プログラムである「National Graduate Research Innovation Programme(National GRIP)」から誕生したスタートアップを対象に、初期段階のテックイノベーションへの支援を強化することを目的としています。National GRIPは、研究室で生まれた技術成果を、グローバルで競争力のある市場対応型ベンチャーへと転換する力をイノベーターに提供するプログラムです。
「NUS VCプログラム」の特長
本プログラムは資金面だけではなく、専門性も担保した上で構成されており、主に以下の2つの施策を実施いたします。
1) 今後3年間で、アーリーステージのディープテック投資において優れた実績を持つVCに対し、NUSエンタープライズは5,000万シンガポールドル(約3,900万米ドル)を出資します。ディープテックスタートアップは、これらのVCから効果的な成長に向けた体系的かつ実践的な支援(ハンズオン、専門知識、ネットワークへのアクセスなど)を受けることができます。初期のVCパートナーには、25年にわたり世界中で革新的技術系ベンチャーを支援してきたマルチアセット型投資プラットフォーム「Granite Asia*」と、高度治療法に特化したライフサイエンス専門投資会社の「4BIO Capital*」が参画しています。
2) NUSエンタープライズは、NUS関連のスタートアップに特化した独立運用型の投資ファンドに、1億シンガポールドル(約7,800万米ドル)を拠出し、一部の有力VCパートナーと柔軟に共同出資できるようにいたします。
研究室から市場への移行においては、継続的かつ戦略的な支援が不可欠となります。NUS VCプログラムは、こうした初期フェーズにおけるベンチャー成長ニーズに応えるもので、National GRIPの枠組みを補完します。現在、National GRIPでは、1社あたり最大25万シンガポールドル(19万4,000米ドル)のシード資金を提供していますが、NUS VCプログラムはその後の成長加速に焦点を当て、外部資金調達に向けた準備を支援します。
*NUSエンタープライズが「Granite Asia」および「4BIO Capital」を含むVC企業と共同で開発した体系的支援施策

Granite Asia(グラニット・アジア)、シニア・マネージング・パートナ、ジェニー・リー氏(Ms Jenny Lee) および ジクソン・フー氏(Mr Jixun Foo) コメント
「NUSは、アジアでも最も意欲的なディープテックのパイプラインを構築しており、グローバルな意義を持つ革新的アイデアの発信拠点となっています。このパートナーシップは、ディープテックがどのように事業化・拡大できるかを示す新たなモデルです。世界トップクラスの研究に、長期的な資本、深い実行支援、そして当社のグローバルネットワークを組み合わせることで、シンガポール発の次世代を担う変革的テクノロジーの加速を目指します。」
4BIO Capital(フォーバイオ・キャピタル)、マネージング・パートナー、ディマ・クズミン氏(Dr Dima Kuzmin) コメント
「NUS VCプログラムは、アジアにおける初期段階のテック・イノベーションにとって大きな前進です。投資と専門家による支援を組み合わせることで、有望なスタートアップの成長を加速させ、この地域のイノベーション・エコシステムを強化します。当社としても、この革新的な取り組みでNUSと連携できることを楽しみにしており、共に学びながら未来の治療法を創出する企業の成長を支援していきます。」
NUS学長 タン・エンチェイ教授(Professor Tan Eng Chye) コメント
「この地域ではVCの活動が縮小していますが、アジアの大学として初の試みである新たなNUS VCプログラムは、極めて重要な推進力になると考えています。研究ベースのスタートアップは、従来型スタートアップよりもはるかに長い研究開発サイクルを必要とするなど、特有の課題を抱えており、現在の慎重な投資環境においては特に脆弱です。本プログラムは、資金、戦略的パートナーシップ、そして専門的なベンチャー知識を結集することで、研究室から市場への道のりをより強固で持続可能なものにします。」
NUSシニア・バイスプレジデント(イノベーション&エンタープライズ) タン・シアン・ウィー博士(Dr Tan Sian Wee) コメント
「National GRIPは、ディープテックスタートアップが着実に根を張るための重要な第一歩です。VCプログラムは、将来有望なスタートアップとグローバルに接続された投資家を結びつけることで、スケールアップと商業的成功に向けたより完全な道筋を実現します。多くのスタートアップが、初期の技術革新段階から現実社会での実装段階に移行できずに苦しんでいる現状を踏まえると、こうした取り組みは不可欠です。」
NUSエンタープライズは「NUS VCプログラム」を通じて、世界水準の実績とネットワークを有するトップVC企業との直接連携を通じて、メンタリング、投資家からのフィードバック、市場参入支援、資金調達ネットワーク、事業運営のガイダンスなど、総合的かつ高度なサポートを提供します。
■シンガポール国立大学(NUS)について
シンガポール国立大学(National University of Singapore, NUS)は、教育・研究・起業支援においてアジアを代表する総合大学です。シンガポール国内に3つのキャンパスと16の学部・学科を構え、世界100か国以上から集まる4万人超の学生にアジアの視点と専門性を活かしたグローバルな学びと挑戦の場を提供しています。また、世界20か国以上と連携し、起業家教育に力を入れるべく「NUS Overseas Colleges」プログラムを展開しています。
NUSは、学際的かつ実践的なアプローチを通じて、産業界・政府・学術機関と連携しながら、エネルギー、都市・環境の持続可能性、疾病の予防と治療、高齢化社会への対応、先端材料、金融システムのリスクマネジメント、アジア研究、AI・データサイエンス・サイバーセキュリティなど、世界とアジアが直面する課題解決に取り組んでいます。
公式サイト: https://nus.edu.sg
公式LinkedIn:https://www.linkedin.com/school/national-university-of-singapore/
■NUS Enterpriseについて
NUS Enterprise(NUSエンタープライズ)は、シンガポール国立大学(NUS)の起業支援部門として、学内外のイノベーションとアントレプレナーシップ推進を担う組織です。実践的な学び、産業界との連携、起業支援体制、グローバルネットワークを組み合わせることで、世界に通用する起業家精神と人材の育成を目指しています。大学発の技術を産業界と結びつけ、スピンオフの創出や市場投入を支援するほか、新興国を含む各地域におけるエコシステム形成にも貢献しています。
公式サイト:https://enterprise.nus.edu.sg
公式LinkedIn:https://www.linkedin.com/company/nusenterprise/
■National GRIPについて
National GRIP (Graduate Research Innovation Programme)は、シンガポールの国立大学群(AUs)およびA*STAR研究機関における最先端の研究成果を、市場対応型のディープテック・スタートアップへと転換する国家プロジェクトです。シンガポールをグローバルなイノベーション拠点として確立するという戦略的ビジョンのもとに設立された本プログラムは、科学的発見とその商業的応用の間にある重要なギャップを埋める役割を果たします。
本プログラムは、シンガポール国家研究財団(NRF)が主導し、シンガポール国立大学(NUS)および南洋理工大学(NTU)といった国内屈指の学術機関との連携により運営されており、シンガポールが誇る世界水準の研究基盤と人材育成体制を土台に展開されています。
National GRIPの詳細については、nationalgrip.sg をご覧ください。
公式サイト:https://nationalgrip.sg/
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