酸素濃度16.4%の「低酸素×低強度運動」で、高齢者のメンタルヘルス・睡眠・血圧・酸化ストレスに良好な変化

〜会津若松発(立命館大学×会津インターナショナルスイミングスクール):高齢者向け低酸素プログラムの1年間介入結果を、国際学会「欧州スポーツ科学会(ECSS 2025)」で口頭発表〜

株式会社会津インターナショナルスイミングスクール

株式会社会津インターナショナルスイミングスクール(本社:福島県会津若松市、代表取締役:白井 武男)は、立命館大学スポーツ健康科学部・後藤一成教授らと共同で、酸素濃度16.4%(標高約2,000m相当)の低酸素環境における低強度運動プログラムの1年間の継続効果を、高齢者を対象に検証しました。
その結果、抑うつ傾向の低下、睡眠の質の向上、収縮期血圧(最高血圧)の低下、酸化ストレスと抗酸化能バランスの変化など、心身の健康に関わる複数の指標で良好な変化が確認されました。

低酸素環境下での低強度運動プログラム参加者

本研究の内容は、2025年7月にイタリアで開催された欧州スポーツ科学会(European College of Sport Science, ECSS)の学会大会において口頭発表され、高齢者を対象とした1年間の低強度運動介入の事例として紹介されています。

運動実施時の酸素濃度表示(16.4%)

本リリースのポイント

  • 会津若松市在住の高齢者27名を対象に、週2回・1年間の低強度運動プログラムを実施

    低酸素群:酸素濃度16.4%の環境で運動(15名)

    通常酸素群:通常の酸素濃度の環境で同一プログラムを実施(5名)

    コントロール群:運動教室に参加せず、通常生活を継続(7名)

  • 低酸素群・通常酸素群で、老年期うつ病指数の低下や精神的健康スコアの向上、睡眠の質の向上を確認

  • 低酸素群では、収縮期血圧(最高血圧)が129±17 mmHgから120±11 mmHgへ有意に低下(p=0.015)

  • 運動を継続した2群で、酸化ストレスと抗酸化能バランスの良好化を確認

  • 「きつすぎない運動」と酸素環境の工夫により、高齢者の心身の健康指標が幅広く望ましい方向へ変化しうる可能性を示した

低酸素環境下での運動実施風景(低強度運動)

研究の背景

日本では、高齢化の進行とともに、

  • うつ・不安などのメンタルヘルスの悪化

  • 認知機能の低下

  • 睡眠の質の低下

  • 高血圧や動脈硬化など生活習慣病、およびそれに関わる酸化ストレスの増大

が社会課題となっています。

一方、低酸素環境を用いたトレーニングは、アスリートだけでなく一般向けジムでも導入されつつあります。しかし、高齢者を対象に、酸素濃度を制御した低酸素環境下での「低強度運動」を1年間継続した場合の影響を検証した研究は多くありません。

そこで当社は立命館大学と共同で、
「酸素濃度16.4%の低酸素環境における低強度運動」が、高齢者の心身の健康にどのような変化をもたらすか
を検証しました。

研究方法

対象と群分け

  • 対象:福島県会津若松市在住の高齢者 27名

  • 期間:1年間

  • 群分け:

    低酸素群(15名):酸素濃度16.4%の環境で運動プログラムを実施

    通常酸素群(5名):通常環境で同一プログラムを実施

    コントロール群(7名):運動プログラムには参加せず、日常生活を継続

運動プログラム

  • 心拍数90拍/分未満を目安とした「低強度」の運動

  • レッドコード(天井から吊るしたサスペンション)を用いた軽運動

  • 主に座位・立位での全身運動、バランス運動を組み合わせた内容

  • 実施頻度:週2回、1回約60分、1年間継続

評価項目

介入前と1年後に、以下の項目を評価しました。

  1. メンタルヘルス

    老年期うつ病評価尺度(GDS-15)・ 健康関連QOL(SF-8)

  2. 認知機能

    ミニメンタルステート検査(MMSE)

  3. 睡眠

    PSQI(ピッツバーグ睡眠質問票)

    アクチグラフ(3軸加速度計)による客観的評価(睡眠効率・中途覚醒時間など)

  4. 血圧

    収縮期血圧(SBP)・ 拡張期血圧(DBP)

  5. 酸化ストレス・抗酸化能

    d-ROMs値(酸化ストレス)・ BAP値(抗酸化能)

  6. 体力 握力、長座体前屈、10m障害物歩行、上体起こし、開眼片足立ち、2分間腿上げ

解析は、介入前後で全ての測定データが揃っている参加者を対象として実施しました。

主な研究結果

1. メンタルヘルス(抑うつ傾向・QOL)

  • 低酸素群・通常酸素群で、老年期うつ病指数(GDS-15)の低下と、精神的健康に関わる指標の向上を確認。

  • ECSSでは、低酸素群とコントロール群の比較解析を行い、低酸素群でGDSスコアが有意に低下したことを報告しました。

2. 睡眠の質

  • 主観的な睡眠の質(PSQI)は、低酸素群・通常酸素群で向上。

  • アクチグラフによる客観評価でも、睡眠効率の向上や中途覚醒時間の短縮など、睡眠の質の向上を示す結果が得られました。

3. 血圧(低酸素群)

  • 低酸素群において、収縮期血圧(SBP)が129±17 mmHgから120±11 mmHgへ有意に低下(p=0.015)

  • 拡張期血圧(DBP)も低下傾向を示し、高齢者にとって負担の少ない低強度運動であっても、血圧コントロールに寄与しうることが示されました。

4. 酸化ストレス・抗酸化能

  • 低酸素群・通常酸素群の双方で、酸化ストレス指標(d-ROMs)の低下と、抗酸化能(BAP)のバランスの良好化を確認。

  • 加齢に伴い酸化ストレスは増加し、抗酸化能は低下するとされますが、今回の結果は、無理のない運動プログラムでも、このバランス改善に貢献しうることを示しています。

5. 認知機能・体力

  • 認知機能(MMSE)は、いずれの群でもスコアが向上する傾向を示しました。

  • 低酸素群では、上体起こし回数や10 m障害物歩行など、一部の体力指標で有意な向上が確認されています。

今後の展望

株式会社会津インターナショナルスイミングスクールと立命館大学は、今回の結果を踏まえ、以下の取り組みを進めていく予定です。

  • 低酸素環境および通常環境での単回・短期介入が認知機能に与える影響の詳細な検証(タブレットを用いた新たな認知機能検査の導入)

  • 高齢者が「きつすぎない運動」で心身の健康を維持できる、地域密着型・低酸素トレーニングモデル(会津モデル)の構築

  • 科学的根拠に基づいた安全な低酸素運動プログラムを全国に展開するための、指導者育成や他施設との連携

コメント

立命館大学スポーツ健康科学部 教授 後藤 一成

高齢者を対象に、低酸素環境下で 1 年間継続的に検証できた点は非常に希少で、国際学会でも評価されました。健康づくりには低強度運動に加え、人と関わる環境(通う場)が重要です。また、低酸素環境が運動効果を高める可能性があります。一方、今回の研究では群間の人数差といった限界もあるため、低酸素の効果を明確にする追加研究を進めたいと考えています。

株式会社会津インターナショナルスイミングスクール

取締役 白井 由美

本研究は、低酸素(酸素濃度16.4%)という環境要因を組み合わせた低強度運動を、高齢者が1年間継続した場合の変化を検証したものです。

睡眠、メンタルヘルス、血圧、酸化ストレスなど、健康に直結する指標で良好な変化が確認され、地域の現場から“科学的根拠”を積み上げられたことは大きな成果です。一方で群間の人数差などの限界もあるため、今後はより厳密な比較設計で追加研究を進めます。得られた知見をもとに、現場で再現できる形に整理し、安全性と科学的根拠を両立したプログラムとして磨き上げていきます。

問い合わせ先

株式会社会津インターナショナルスイミングスクール(本社:福島県会津若松市、代表取締役:白井 武男)は、スイミングスクール事業を中心に、地域の健康づくり・運動支援に取り組む企業です。近年は、立命館大学スポーツ健康科学部・後藤一成教授らとの共同研究として、酸素濃度16.4%(標高約2,000m相当)の低酸素環境下で行う「低酸素×低強度運動プログラム」の効果検証にも取り組み、地域発の実践データを学会発表へとつなげています。取材・掲載、共同研究、プログラム導入等に関するお問い合わせは、下記窓口までご連絡ください。

株式会社会津インターナショナルスイミングスクール

担当:白井 由美


TEL:0242-33-1155 MAIL:yumi.s@aizuinter.jp 

WEB:https://www.aizuinter.jp/
所在地(本社):福島県会津若松市花畑東2-58

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会社概要

URL
-
業種
教育・学習支援業
本社所在地
福島県会津若松市花畑東2-58
電話番号
0242-33-1155
代表者名
白井 武男
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年04月