役職定年で失われる50・60代の活躍機会――AI時代に、積み重ねてきた知見が循環する社会を目指して起業
役職定年で役割が限定され、年収も低下する50・60代。一方、就職氷河期の採用抑制で管理職層が手薄な企業も。両者のギャップを埋めるサービスを展開する株式会社NOWAL代表に聞く、起業の理由

株式会社NOWAL(本社:東京都品川区、代表取締役:池田幸平)は、役職定年を機に活躍の機会が限定される50・60代の人材と、その経験を必要とする企業をつなぐため、2025年10月に設立された。
AIの進化によって仕事のあり方が大きく変わる一方、長年の実務を通じて培われた経験や知見を、いかに次の価値創出につなげていくかが問われている。日本では、役職定年によって役割が制限され、年収が低下する人材がいる一方、就職氷河期の採用抑制などを背景に、管理職層の不足に悩む企業も存在する。
経験を活かしたい人材がいる。その経験を必要とする企業もある。それでも、両者が十分につながっていない。NOWALは、こうした人材のミスマッチに着目し、2026年3月に役職定年層に特化した転職・採用支援サービス「NOWAL CAREER」を開始した。
■背景|役職定年と管理職不足。日本社会が抱える需給のミスマッチ
大手企業を中心に、50代半ばを迎えた管理職が、それまでの役職を離れる「役職定年制度」が運用されている。HR総研の調査によると、従業員1,001人以上の企業の57%が、役職定年を制度・慣行として運用している(※1)。役職定年は、組織の新陳代謝や次世代への役割の継承などを目的とする制度である。一方、NOWALが役職定年経験者にヒアリングを行う中では、担う役割が限定され、年収も低下したという声が聞かれる。
役職は変わっても、その人が積み重ねてきた経験や専門性まで失われるわけではない。
一方、企業の採用現場では、経営・事業の重要ポジションを担う人材の確保に課題を抱える企業が存在する。就職氷河期に新卒採用を抑制した影響で、現在の40代後半~50代前半の管理職層が手薄になっているという声も聞かれる。しかし、定年までの期間や組織の年齢構成などを理由に、50・60代の人材が採用候補から外れるケースもある。人材不足が課題となる一方で、すでに社会の中に存在する豊富な経験や知見が、十分に活かされていない。
(※1)HR総研「働き方改革(多様な働き方)の実施状況に関するアンケート」(2020年4月実施)
■起業の原点|「昨日まで頼りにされていた背中が、急に小さく見えた」
NOWALを立ち上げた背景には、代表・池田幸平が自身の親世代を通じて感じた問題意識がある。
定年や役職定年を迎え、それまで組織の中で担ってきた重要な役割を離れる。長年にわたり仕事に打ち込み、周囲から頼られてきた人が、役割の変化をきっかけに自信や自己効力感を失っていく。
そうした姿を目にしたことが、起業を考える原点となった。「昨日まで頼りにされていた背中が、
急に小さく見えたように感じました。

長年培ってきた経験や知見があるにもかかわらず、それを発揮する機会がなくなり、自信や自己効力感が失われていく。その姿を見て、役職を離れたからといって、その人の価値まで失われるわけではないのに、と強く感じました」
池田は、前職のリクルートで約13年間、法人営業や新規事業開発に従事する中で、人材市場にも課題を感じていた。若手・中堅層を中心に多様な転職支援サービスが提供される一方、50代以上の転職希望者からは、「十分な支援を受けられなかった」という声を耳にすることも少なくなかった。人材紹介会社が採用決定の可能性や採算性を踏まえ、若手・中堅層への支援を優先することには一定の合理性がある。しかし、その結果として、豊富な経験を持つ人材が企業と出会う機会を十分に得られていないとすれば、そこには解決すべき課題があるのではないか。
実際に起業を検討する中では、人材紹介会社を経営する先輩や前職の同僚から、「シニア向けの人材紹介はもうからないから、やめたほうがよい」と忠告されることもあったという。こうした言葉から、池田はシニア層の転職支援を事業として成立させることの難しさを改めて認識した。一方で、採算性を理由に支援の機会が限られているのであれば、そこにこそ新たな仕組みをつくる余地があると考えた。
「経験を求めている企業も、これまでの経験を活かして働きたい人も、確かにいる。それなのに、従来の人材サービスでは、両者を十分につなぎきれていない。そこに、まだ解決できていない価値があるのではないか。だったら、自分がその仕組みをつくろうと考えました」
こうした問題意識から、池田は2025年10月に株式会社NOWALを設立した。
■取り組み|大手企業で培われた知見を、必要とする企業へ
NOWALは、2026年3月より、大手企業の役職定年層に特化した転職・採用支援サービス「NOWAL CAREER」を提供している。業界をリードする大手企業で経営・事業・組織の中核を担ってきた50・60代の人材と、その経験を必要とする企業をつなぐサービスである。サービス開始以降、独自のネットワークを通じて人材の登録が進み、すでに採用決定の事例も生まれている。直近では、大手総合電機メーカーで役職定年を経験した技術職の人材が、長年培ってきた専門性を評価され、別のメーカーの重要ポジションで採用が決まった。一つの企業で役割を終えたとしても、それまで培ってきた経験が、別の企業で新たな価値を生み出す可能性がある。
■目指す社会|積み重ねてきた知見が循環し、活き続ける社会へ
50・60代の人材が持つ価値は、専門性だけではない。人を動かしてきた経験、組織を変えてきた経験、事業上の難しい局面を乗り越えてきた経験など、長いキャリアだからこそ培われる知見がある。
こうした知見が企業にとって価値を持つ一方で、企業が採用において年齢を考慮する背景には、定年までの期間や組織の年齢構成など、さまざまな事情がある。そのうえで、池田は採用における「活躍期間」の捉え方に、一つの問いを投げかける。
「企業の方から、『少なくとも10年くらいは活躍していただきたい』というお話を伺うことがあります。もちろん、長く働いていただけることは大切です。ただ、10年前と今とでは、必要とされる事業も、人材も、大きく変わっています。変化の激しい時代に、10年先の事業環境を正確に見通すことは容易ではありません。だからこそ、『何年働いていただけるか』だけではなく、『この3~5年で、どのような価値を発揮していただけるか』という視点も、もっとあっていいのではないでしょうか。」
社名の「NOWAL」は、「NO WALL」に由来する。年齢などによって生まれる「見えないキャリアの壁」を越え、これまで培ってきた経験や知見を、次のステージでも活かせる社会をつくりたいという想いが込められている。




NOWALが目指すのは、単に50・60代の転職を増やすことではない。一つの企業で役割を終えたとしても、それまで培ってきた経験や知見が失われることなく、企業の垣根を越えて循環し、必要とされる場所で新たな価値を生み出し続ける社会の実現である。
■代表者プロフィール
株式会社NOWAL 代表取締役 池田 幸平(いけだ こうへい)
2013年に株式会社リクルートマーケティングパートナーズ(現:株式会社リクルート)へ入社。約10年間、法人営業に従事し、地方の中小企業から上場企業まで、幅広い顧客のマーケティング活動を支援。2023年、同社の新規事業提案制度「RING」で、約500件のエントリー案件の中から最終5案に選出。その後、新規事業開発室にてHRサービスのPMとして、新規事業の企画・市場検証・サービス開発・事業推進に従事。2025年10月、株式会社NOWALを設立。2026年3月、大手企業で培われた豊富な経験・専門性を持つ50・60代と、そのスキル・経験を必要とする企業をつなぐ「NOWAL CAREER」を立ち上げる。

■会社概要
会社名:株式会社NOWAL
代表者:代表取締役 池田 幸平
設立:2025年10月
所在地:東京都品川区東品川4-12-6 品川シーサイドキャナルタワー4F
事業内容:有料職業紹介事業(許可番号:13-ユ-319059)
公式サイト:https://nowal.co.jp
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