あなたの周りにいませんか、暴走老人は? 『脱!暴走老人 ~英国に学ぶ「成熟社会」のシニアライフ』(谷本真由美)を刊行しました。
現在の、そして、未来の日本の高齢者たちへ
ぼうそう-ろうじん【暴走老人】店員や駅の係員に無理難題を言って困らせたり、並んでいる列に割り込んできたり、若い人を怒鳴りつけたりする高齢者のこと。
ロンドンと日本を往復して暮らす著者は、日本では銀行の窓口で文句をつけているお年寄りや、電車の中で傘がぶつかったと言い掛かりをつけて、若者と殴り合いになりそうになっている年配者などを見かけて驚くことが少なからずあると言います。
高齢者の犯罪は20年前の約20倍
2017年に法務省が発表した「犯罪白書」によると、刑法犯全体は減少するなか、65歳以上の高齢者の犯罪は20年前の約20倍に増えています。また、私鉄やJRなど34社による「鉄道係員に対する暴力行為」についての同年の報道発表によると、加害者の年齢でもっとも多かったのが60代以上で、全体の23.3%を占めています。
私たちが日ごろ目にするこうした老人の「暴走」は決して気のせいなどではないのです。
日本は多くの国に比べて豊かで、インフラは整備されており、治安の良さはおそらく世界トップレベル、と大変恵まれている国なのに、なぜ高齢者は暴走してしまうのでしょうか。
経済的、社会的に疎外されている高齢者が少なくない
著者はまず、日本の高齢者の置かれている状況を分析し、彼らが孤独で苛立ちを募らせてしまう背景には、老人特有の性質や彼らが置かれた個々の状況だけではなく、この国の社会全体のあり方が関係していると指摘。日本は世界で最も高齢化が進んでいるにもかかわらず、いまだに若い年代を中心とした施策が多く、実は経済的、社会的に疎外されている高齢者が少なくないと警鐘を鳴らします。
その一方で、ヨーロッパの老人が暴走しないのには、町のつくりやインフラ、家族関係や老人が楽しめる場所が多いことなどが関係していると言います。
【イギリスは老人が暮らしやすい】
ロンドンの新型バスは広く、車椅子やベビーカー、電動カートごと乗車でき、段差もないために車椅子の高齢者がひとりで移動できる。手前の方の座席は、足腰の悪い高齢者が座りやすいように低くなっている。
【高齢者を代表する団体が多い】
英国には高齢者の立場や生活の向上に貢献する非営利団体がたくさんあり、企業より影響力が強いケースもある。写真は高齢者のために活動するイギリス最大の非営利団体、Age UKのウェブサイト。(https://www.ageuk.org.uk/)
日本では年をとることをネガティブに捉える風潮がありますが、欧州の高齢者は「老い」という自然の摂理を素直に受け入れつつも、年齢を気にせずに自分のやりたいことを各々楽しんでいるそうです。
イギリス人の資産形成のノウハウを紹介
ただし、欧州でも高齢化が進み、公的年金の状況が年々厳しくなっているため、かなり早い時期から個人で老後資金を準備する人が多いといいます。戦後の不況を経験し、物価も高いので、お金に対する意識は日本よりはるかに高いそうです。本書の後半の章では、老後を楽しく過ごすためにイギリス人が行っている資産形成のノウハウも詳しく紹介しています。
最後に、著者はこう締めくくります。
「もし街なかで暴走する老人を見かけたら、何が彼にそうさせてしまっているのかということも考えていただきたいのです。 これは実は若い人にとっても大変重要なことです。なぜなら、やがて現在の若者たちも高齢になり、厳しい状況に置かれる可能性が高いからです。つまり、現在暴走している高齢者のことを考えることは自分たちのためでもあるのです」
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