文化庁の文化観光振興事業、奈良市の登録有形文化財建築「藤間家(とうまけ)住宅」で始まる
長期滞在促進による高単価化やオーバーツーリズム対策。奈良市の歴史的建造物に宿泊し、東洋絵画の修復と金継ぎを学ぶ外国人向け滞在プログラム。
◆滞在プログラムの概要
一般社団法人高畑トラストが、奈良市の文化財建築「藤間家住宅」を拠点に、海外からの参加者を対象としたアーティストインレジデンス(滞在制作)プログラムを提供します。藤間家住宅は、江戸時代の終わり頃、奈良市高畑町で春日神官の住居として建てられました。このプログラムでは、海外の参加者が伝統的な日本文化に触れ、東洋絵画の修復や金継ぎの専門知識を学び、異文化交流を通じてその技術を深く理解することを目的としています。中長期滞在を通じて、日本独自の修復技術を学ぶプログラムは、観光都市のオーバーツーリズム対策としても有効な高単価コンテンツとして、歴史建築の維持管理費に還元されます。滞在期間中、参加者は文化財修復工房を訪れ、地元の職人から技術を学びながら、伝統的な修復技法の実践的なスキルを身に付けます。帰国後はそれを活かして各国で文化財の持続可能な保存と継承に取り組むことを目指します。
◆装潢(そうこう)修理技術を学ぶ修復レジデンスプログラム
国の選定保存技術である「装潢(そうこう)修理技術」を海外に発信する修復レジデンスプログラムです。参加者は藤間家住宅に2週間~1ヶ月の期間滞在し、日本独自の文化財である「装潢文化財」の修理理念と技法を学びます。装潢文化財とは、掛軸や屏風、折本などに仕立てられた美術品を指し、これらの修復技術は日本固有の技術です。古来より日本の美術品や文化財は海外に多く流出しており、世界中の美術館に所蔵されていますが、それを扱える人材が不足していることが課題です。このプログラムを通じ、日本の伝統的な技術の国際的普及に貢献するとともに、海外からのニーズの増加など、伝統技術の継承を促進します。
◆金継ぎを学ぶレジデンスプログラムと1日ワークショップ
日本独自の修復技術として海外でも注目を集める「金継ぎ」の理論と技法を学ぶレジデンスプログラムです。金継ぎは、欠けた陶器の修復箇所を装飾的に仕上げることで新たな美を生み出す技法で、世界的にも「KINTSUGI」として知られています。この技法は、欠けた部分を美の一部とする日本独自の美意識に基づき、現代のサステナビリティやアップサイクルの概念とも共通しています。本プログラムでは、最大1ヶ月の滞在プログラムや、外国人観光客が1日のみでも参加できるワークショップを通じて、参加者にこの技法の奥深さを伝えます。
募集用ウェブサイトはこちら
◆文化庁 令和6年度「文化資源活用事業費補助金(全国各地の魅力的な文化財活用推進事業)」について
一般社団法人高畑トラストが採択された文化庁による本補助事業は、文化財の保存と活用に向けた再投資を目的としています。インバウンド観光客の旺盛な知的好奇心を満たし、文化財の高付加価値化を図ることを目指しており、奈良県からは高畑トラストと宗教法人華厳宗元興寺の2団体が選ばれました。事業の伴走支援を担当する大阪成蹊大学の辰巳清准教授は「伝統技能の維持に必要な道具や材料に対する海外からの新たなニーズの形成と、関係人口の増加など、事業がもたらす効果に期待できる」とコメントしています。
【参考】令和6年度「全国各地の魅力的な文化財活用推進事業」の詳細はこちら
【滞在プログラム】
① 装潢修理の基礎理論と実践 ~掛軸~
② 実践する装丁 ~屏風の構造理解と制作~
③ 修復と創造 ~金継ぎ~
期間 2025年10月以降、4週間及び2週間の滞在プログラムを定期的に実施
※金継ぎのみ単日ワークショップも実施
場所 藤間家住宅(630-8301奈良県奈良市高畑町1325-1)
定員 各プログラム最大4名まで
主催 一般社団法人高畑トラスト
協力 株式会社文化財保存(文化庁選定保存技術保存団体・国宝修理装潢師連盟加盟団体)
クレメンタイン ナトル(東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス修士号)
募集 2024年12月以降、ウェブサイトで募集開始予定
★それぞれの分野の専門知識を備えたインストラクターが各プログラムを担当し、参加者の滞在期間中指導を行います。参加者は藤間家住宅内または近隣のゲストハウス等に滞在しプログラムを受講します。プログラムの期間中、参加者は近隣エリアの和紙工房、表具材料店、道具店等の見学を行います。
【トライアルワークショップ】
金継ぎワークショップ in 藤間家住宅
期間 2024年11月24日(日)10:00~16:00
場所 藤間家住宅(630-8301奈良県奈良市高畑町1325-1)
参加 無料
定員 定員4名
主催 一般社団法人高畑トラスト
参加: 2024年10月24日(月)からウェブサイトにて応募受付
講師
自国イギリスのロンドンで石工、木彫を学んだ後、ヨーク大学で建築保存修復学の修士課程を修了。その後、文部科学省の奨学生として東京藝術大学に留学。大学院研究生として漆芸およびグローバルアートプラクティスの両分野で修士号を取得し、金継ぎの魅力を広く発信するための活動を続ける。
ロンドンの外務省ジャパンハウスにある金継ぎコーナー
【一般社団法人高畑トラスト略歴】
2017年、無住化により倒壊の危機に瀕していた奈良市高畑町の歴史建築、藤間家住宅の保全を目的として発足。以降、建築調査と奈良県文化資源活用補助金、朝日新聞文化財団の助成、土塀保存のためクラウドファンディングによって建築の修復を進める。発足当初から建築の活用にも力を注ぎ、改修中の歴史建築の一般公開、アート展示、講演会など様々なイベントを実施している。修復が進んだ近年では海外アーティスト向けにテーマ型滞在プログラム(アーティストインレジデンス)を企画し、2023年には日本の水性木版画や、奈良の杉・檜材をテーマにした滞在制作プログラムを実施している。
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