渋谷のNPO法人フリースクールまいまいが手話イベントを実施しました。
「知らない」という壁を取り払う企画第一弾としてデフリンピック選手を招致。
NPO法人フリースクールまいまい(所在地:渋谷区、代表:鴻池友江。以下、フリースクールまいまい)は、2023年12月9日に「デフリンピック選手との交流会」という、手話通訳付きで誰でも参加できるイベントを渋谷区幡ヶ谷の区民会館で開催しました。
注釈:デフとは耳の聞こえない人のことを指します。デフ+オリンピックでデフリンピックです。2025年に東京でデフリンピックが開催されることが決まっています。パラリンピックよりも古い歴史のある大会ですが、日本で開催されるのは今回が初となります。
<団体が目指すもの>
フリースクールまいまいは、「青少年の健全育成」に加え、「保健・医療又は福祉の増進」「学術、文化、芸術又はスポーツの振興」「環境保全」「人権」「国際協力」「まちづくり」「雇用機会の拡充」など幅広い社会課題に対して、民間だからこそ出来る問題解決への柔軟な動きを模索・実践しています。
代表の鴻池が長年に渡り身を置いてきた児童福祉の業界から覗く世の中は、「社会的に与えられた、あるいは求められているだろうと自らが考えてしまう、その役割をこなすために本来の”自分らしさ”を押し殺し、他者や世間の理想に添い、心身をすり減らして八方塞がりになっている状態」の方々が多数居るように見えていました。
母親は「良き母であるために」「我が子が世間から”良い子”という評価を受けなければならない」と感じ子どもに世間の評価に合った言動を求め、子どもは親の求める社会的な価値観に添うように学び、例えば「成績が伸びている」のように成果が上がっているうちは面白いけれど、ひとたびそのレールに乗れない自分に気づき始めると大きな不安と葛藤に苦しみます。
人に求められ、それに応えようとするこのやり取りは一面から見ると好ましいものであり、作用する力の大きさは言わずと知れたものがあります。一方で、別の角度から見ると自分が認められるには「それしかない」と感じてしまう所に大きな落とし穴があります。
このような、他者の目線に縛られる生き方を私たちの誰もが多かれ少なかれしていて、それは「前へ倣え」「右向け右」の公教育の長い歴史からの影響が大きいように考えています。いつしか、「隣の人と同じことを言わなければ、やらなければ、仲間外れになる」といった恐怖心に支配され、誰が何を言わなくても生まれながらにして手かせ足かせを引きずって歩いている、とういうのが今の社会を生きる人の在り様なのではないでしょうか。
この問題の解消は、人権、国際、健全育成など、団体が定款に掲げた数々の目的と合致することであり、全ての基本と言っても大げさではないでしょう。そこで、もっともっと「誰もが違いを認め合える世界を作る」を目指して今回のような企画を打ち出しました。
<今企画の概要・詳細>
企画第一弾は分かりやすく、耳が聞こえない方の代表として、デフリンピックの選手にお越しいただきました。耳が聞こえない状態というのは、この世の中で圧倒的多数の健聴者が使う音声でのコミュニケーションを使えない、という意味でマイノリティといえるでしょう。でも、音声に代わる手話やITを駆使した文字のやり取りなどを通じてとても円滑で心豊かなコミュニケーションをとることが出来ます。相手の発する情報をキャッチするために、視野がとても広く、結果として周囲の人の状況に気づくのが早いです。それは彼らの持つ素晴らしい力と言えるでしょう。そして、手話が言語として認知されやすくなってきたことや、IT
技術の進歩とともに、少数者の世界で過ごさざるを得ない状況ではなくなったことは大きな要因と考えられますが、今彼らは、ろう者の世界に閉じこもるのではなく、もっと幅広い方たちと繋がり、彼ら自身の世界を広げるためにも自分たちのことを語ってくれます。
語ってくださったのは水泳(背泳)の金持義和選手、そして陸上(棒高跳び)の佐藤湊選手です。
金持選手は補聴器を付けるとどのくらい聞こえるのか、口の形だけでは読み取れない単語がある、ということを具体的な例を挙げて教えてくださいました。
佐藤選手は伝わらないことが相手にどう伝わるか、諦めない気持ちの大切さを教えてくださいました。またご自身のダブルマイノリティとしての言葉を発信し続けることの想いを語って下さり、私たち、聞いた人がいかにその次の誰かにバトンを渡していけるのか、重要な役割を与えられたように思います。
手話通訳の佐藤晴香さんと保科隼希さんが状況を細やかに把握し、手話の読み取りと音声を手話に変換する作業を柔軟に対応してくださり、手話の分からない人にも、音の聞こえない人にも不自由のない素晴らしいひと時が過ごせませした。
選手のお二人が語る競技の魅力、そして世界大会へのチャレンジの喜びと大変さなどを聴いて、会場の方からは「応援したい」「関わりたい」という言葉が多く出てきました。
一般的にはいわゆるマイノリティーと言われるかもしれない方たちですが、彼らと共にいる時、筆者はワクワクこそすれ、そこにネガティブな気持ちは存在しません。また、彼らと過ごす時、自分にはまだ分からない手話が飛び交っていれば、こちらは完全にマイノリティになります。このような実体験をさせていただくことで、私たちはいかに何も知らないか、知らないことを怖がっているか、ということを目の当たりにします。
そして、もっともっと、今まで知らなかったことを知りたい、と思うようになるのです。「知る」ことはコミュニケーションに繋がり、互いの間にあった壁が取り払われることになります。こうして、認め合い、違いが持つ壁という障害がなくなっていくのです。
今まで自分がいかに狭い世界の価値観に縛られて苦しんでいたのか、それに気づき、心が軽くなるよう、お手伝いをしたい。それがフリースクールまいまいの願いです。
このイベントに参加した方からは「自分の言いたい事が伝わらなかった時、すぐ諦めてしまいがちだつたのですが、なんとか伝えようとする努力は大切だと思いました。」「佐藤さんからは自分自身の誇りや楽しむ気持ちを感じ、手話表現で通じることが大事だということが分かり、金持さんからは、デフリンピックを通してもっとできることがあることを知り、自分にはまだまだ見つけるべきことがあるきっかけになりました。」といった感想が届きました。
フリースクールまいまいは日常的にも様々な方に渋谷の居場所に来ていただき、世の中のほとんどの人は「同じ」じゃない、ということを皆さんに肌で感じてもらえるよう、この場に来てくださる方を募集しています。まだ多様な生き様を毎日垣間見るまでには至っていませんが、いつしか自然に「色々な人がいるんだな」「みんな素敵」「それぞれで良い」「自分はこれで良い」と、誰もが思える土壌を作っていける、そんな温かな場所になることを目指して、今日も活動を続けています。
そして誰もが「知らないこと」を怖がらず、「知りたい!」と思えるようになるために、チャレンジの気持ちにそっと背中を押すような企画を継続していきます。
<団体の情報>
NPO法人フリースクールまいまい
設立(登記):2002年9月5日
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