金沢大学ほか地域の産学官金連携によるプロジェクトを通じ、天神経営が石川県加賀市の事業承継後の組織拡大に貢献 — 福岡から地方企業支援へ
事業承継後の挑戦:天神経営によるジョブ型定置網採用の展開と人事体制の再構築で求人応募者数が2.5倍に
取り組みのポイント
1.中小企業診断士としての事業者支援経験を活かし、事業・組織の構造分析を実施
2.本体・子会社含め35名の全社員に面談を実施し、個々人の性格・思考性を分析
3.新卒・中途の採用に重点を定め、新たな採用手法として”ジョブ型定置網採用”を導入
プログラムを通じた主要成果と取り組み
福岡市に本拠を置く株式会社天神経営(代表取締役:角田紘一)は、金沢大学ほか地域の産学官金連携による「共創型企業・人材展開プログラム」に参画し、加賀市の伝統ある金属加工業の事業承継に伴う人事課題解決に対応しました。この取り組みでは、新たに「ジョブ型定置網採用戦略」を導入し、応募者数を2.5倍に増加させる成果を達成しました。
※共創型企業・人材展開プログラム https://ikoc.net/kyoso_kanazawa/
取組みの背景
天神経営は、地方企業の事業承継と持続可能な発展を支援するため、金沢大学ほか地域の産学官金連携による「共創型企業・人材展開プログラム」に参画しました。日本の中小企業は、高齢化と後継者不足により事業承継の問題に直面しています。経済産業省の報告によると、事業承継を迎える企業の約半数が後継者問題を抱えており、その解決策として外部からの人材確保による第三者承継が注目されています。今回、天神経営 代表取締役の角田が研究員として関与した加賀市で金属加工業を営む株式会社新家製作所も、2020年に現社長の山下氏への第三者承継を実現していました。
新家製作所の抱える課題
山下社長は就任後、積極的な採用を進め、従業員数を10人から20人へと倍増させることに成功していました。次なる課題として、ベテランからの技能承継と、これを引き継ぐ若手・中堅人材の確保を目指すとともに、人事業務の経営者依存からの脱却を含めた新たな体制構築を目指しており、天神経営 代表取締役の角田がプログラムを通じて研究員として現地に赴任し、その課題解決と構想実現に向けた支援を行いました。
事業・組織の診断と全社員面談
今回の支援では、現状把握として会社全体の傾向や個々人の性格・思考性の分析のために、独自のフレームワークを用いた事業・組織診断を行うとともに、並行して本社・子会社の総勢35名に対する全社員面談を行いました。なお、天神経営は、在籍する中小企業診断士のほか、社会保険労務士、事業承継アドバイザー、その他中小企業支援の専門化・研究者と共同で企画・開発した弊社独自の中小企業向け組織診断ツール”TASS”(Trust and Safety Survey)を用いた分析対応にも対応が可能です。
ジョブ型定置網採用戦略を導入
分析の結果を踏まえ、課題となっているものづくり人材の確保を、採用・定着・育成・評価に要素分解し、優先すべき本質的な課題を、人材確保の入口となる採用領域に定めました。課題解決に向け、専門性の高い金属加工の各工程・業務の職務内容をひとつひとつ明確に定義づけ、職務に応じた人材獲得を目指すジョブ型採用の求人を打ち出し活動を展開。また、オンラインの求人掲載媒体を用いて、求人掲載期間中の閲覧数、閲覧者のお気に入り登録数、応募数などを日次で定性的・定量的に分析しながら、求人のリライト・更新を繰り返すことで、新着求人としての露出を維持し、幅広い期間で求職者を獲得できる定置網のような採用戦略を導入しました。
成果・実績と山下社長のコメント
今回の半年間の支援を通して、高卒1名、大卒1名の2名の新卒を採用することができました。また、中途採用においても、支援前の過去半年間で応募数11名の状況から、4か月で2.5倍相当となる28名の応募を獲得し、3名を内定。また、求人活動と並行し、文書整備や選考プロセスの再定義、就業規則の改定など人事業務の経営者依存からの脱却にむけた環境整備を進めることができました。山下社長は今回のプログラムを振り返り、「若手人材の採用や人事関係の仕組みの整備が進み、今後の成長に向けた体制の基礎を築くことができました。短期間で従業員が増えたために組織的な機能が課題となっていました。今回、角田さんの『定着』に向けた取り組みの一環で、社員間の交流が活発になり、組織の自律的な動きにつながりました。これから先も見据えて、会社の規模が大きくなっていくほど業務の標準化、共有が大切だということを社員一人一人が感じたと思います。そのような意識付けに角田さんは貢献してくれたと思います。」と述べています。
角田のコメント
天神経営 代表取締役の角田はプログラムを振り返り、「これまでコンサルタントとして事業者支援にあたる際は、オーダーメイドと言いながらも、既存のパターンに当てはめるような場面も多かったように振り返っています。今回、ものづくりの現場に関わりながら、自分の取り組みを見つめ直した経験は、今後に生かすことができそうです。半年間、いち社員同様に机を並べてみなさんと働きながら課題解決に取り組むことで、より一層当事者意識を持って業務にあたることができました。また、同期の研究員は、それぞれ専門性が異なり多士済々でした。新たな切り口や発見を得られたことは収穫です。また、観点や価値観の違いを感じながら、私にはない観点に触れて刺激を受けました。」と述べています。
今後の展望
株式会社天神経営は、プログラム修了を機に、北陸地域におけるビジネス展開をさらに加速し、地方創生に積極的に貢献していく方針であり、加賀地方の拠点を維持し、地域の持続可能な発展に引き続き力を尽くすことを明らかにしています。
※共創型企業・人材展開プログラム 令和5(2023)年度研究員成果物
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