社会への関与を志向したプレゼンテーション授業が学習者の動機づけに与える影響
~アルバ・エデュと山梨大学小野田准教授による論文発表~
一般社団法人アルバ・エデュ(東京都文京区、代表理事:竹内明日香)と山梨大学大学院総合研究部小野田亮介准教授は、「社会への関与を志向したプレゼンテーション授業」が学習者の動機づけに与える影響を検証し、その成果を論文として発表しました。
本研究は、主体的に社会に関与することの意義を伝え、その方法としてのプレゼンテーションの指導を行うことで、学習者が自分のプレゼンテーション能力に対する期待や、能力獲得への価値づけを高める可能性を示すものであり、プレゼンテーション指導の質を高めるための示唆に富む知見を提供しています。
研究の目的と背景
現代社会において、プレゼンテーション能力は学術やビジネスの現場でますます重要視されています。また、子ども達自身も、プレゼンテーション能力の獲得を重要視していることが報告されています。しかしながら、国内の大規模調査では「自分の考えをみんなの前で発表すること」を「得意」とする子どもの割合が50%以下であり、学校段階を経るごとに低下する傾向が示されています。これらの知見は、社会的にプレゼンテーション能力が高く価値づけられ、子ども達もその重要性を強く認識していながら、「自分はプレゼンテーションが得意だ」と思えるような実践が十分に広まっていないことを示唆しています。こうした問題意識のもとで、アルバ・エデュでは主体的に社会に関わることの意義と、その方法としてのプレゼンテーションの価値を明確化した授業を実践し、その能力の獲得に関する動機づけに着目しながら、効果を検証しました。
【実施概要と研究結果】
実践1:プレゼンテーションの価値伝達と基礎的な方法指導
対象:小学5・6年生、中学1年生計184名
内容:「主体的に社会に関与することの意義」を具体的に伝え、そのための効果的な方法としてプレゼンテーションを位置づけた上で、「考える」「伝える」「見せる」の3観点からプレゼンテーションのコツを指導しました。参加した学習者は、そのコツを基にグループ演習を通じてプレゼンテーションの内容を練り上げ、自分の興味をもとにして自由にプレゼンテーションを行いました。
· 調査項目と結果:学級風土に対する認識を統制した上で、
(1)社会への関与態度と、(2)プレゼンテーションに対する期待・価値の変化を検証しました。その結果、授業を通して、学習者の社会への関与態度およびプレゼンテーションに対する期待と価値の評価のいずれもが向上する傾向が確認されました。
【実践2:質の高いプレゼンテーションの追求】
対象:中学1年生99名
内容:実践1よりも発展的な内容として、論理的な構成やストーリーテリングを駆使することで、聞き手を説得する効果が高まることを体験させながら伝えました。さらに、使用する資料のビジュアル性によって印象が大きく変わることを具体例と共に説明し、ICTを用いたプレゼンテーションの内容を実際に構想させた上で、質の高いプレゼンテーションを行うための指導を実施しました。
調査項目と結果:授業を経験することで生じた(1)社会への関与態度の変化と、(2)プレゼンテーションに対する期待・価値の変化との関連を検証した結果、授業を通して社会への関与態度を高めた学習者ほど、自分のプレゼンテーション能力に対する期待を高める傾向が示されました。実践2の授業内容は実践1よりも発展的であったため、プレゼンテーション能力に対する期待が低下することも懸念されましたが、社会への関与を達成するための方法としてプレゼンテーションの方法を学ぶことで、動機づけが維持・促進される可能性が示されたといえます。
【研究の示唆】
社会に主体的に関わることや、そのためのプレゼンテーションの価値は、しばしば「言うまでもないこと」と見なされますが、本研究の結果は、その自明とされがちな価値をあらためて明確かつ具体的に伝えることの重要性を示唆しています。この教示によって形成された社会への関与態度は、「好きなことを自由に話すプレゼンテーション」から、「説得力を高めるための方法に沿ったプレゼンテーション」への質的転換の際に、学習者の動機づけを維持・促進することに貢献すると考えられます。社会への関与態度は、あらゆる教科で促進することが可能であることから、今後は教科横断的な指導の方法やその効果について検討することも重要な試みになるだろうとの指摘が示されています。
<論文情報>
論文名 : 社会への関与を志向したプレゼンテーション授業が学習者の動機づけに
与える影響
著 者 : 小野田 亮介、 蝦 真理子、 竹内 明日香
発表雑誌 : 日本教育工学会論文誌
掲載日 : 2024年10月20日
DOI: https://doi.org/10.15077/jjet.47132
URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/48/3/48_47132/_html/-char/ja
助成: JSPS科研費JP21K13691、JP24K06497、および日本財団助成事業「全国
の教育現場への話す力を高めるプログラム導入事業」
■アルバ・エデュの取組
アルバ・エデュでは、子どもたちが「話す力」を身につけ、自分の未来を切り拓くための教育プログラムを63,000人の先生、子どもたちに提供してきました。公教育の中に、心理的安全性を確保しながら、失敗を恐れずに意見を発信できる場を創出し、子どもたちが積極的に自己表現できるようサポートしています。
子どもが意欲的に話せるようになるためには、興味を持った分野についての思考を広げ、深めるための問いかけをしていくこと、さらに子どもが発表をした内容について即座に価値付けをすることが必要です。しかしながら、先生が学級全員の支援をするには限界があり、思うように授業で話す力を伸ばせていないというお声を伺ってきました。
そこで、アルバ・エデュでは日本財団から助成を受け、生成AIを組み込んだ「対話型アプリ」を開発、文部科学省「令和6年度次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進」(最先端技術及び教育データ利活用に関する実証事業)にも採択されています。
【本件に関する問い合わせ先】
一般社団法人アルバ・エデュ
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11 花和ビル 308号
Email:info2@alba-partners.com
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