【開催レポート】教育現場における国際交流実践 ~オンラインと対面事例から学ぶ、多様な国際交流~

教育未来創造会議における「教育の国際化推進」へ、有識者が先進的な実践事例を紹介

一般社団法人HelloWorld

2025年1月22日(水)、一般社団法人HelloWorldは北海道大学と共同で、ウェビナー「教育現場における国際交流実践 ~オンラインと対面事例から学ぶ、多様な国際交流~」を開催しました。

2023年4月に内閣総理大臣を議長とする教育未来創造会議で示された提言では、「教育の国際化推進」に向けて、2033年までに中学・高校等において、対面での国際交流を50%、オンライン交流を100%実施する目標が掲げられています。

ウェビナーでは本提言を念頭に、4名の専門家・教育関係者にご登壇いただき、国・学校・教育委員会などそれぞれの視点から、国際交流を進めるためのポイントや施策について、具体的な事例を含めてお話しいただきました。

本レポートでは、内容をピックアップしてお伝えします。


1.教育未来創造会議における国際交流目標達成に向けて

岡嶋 美和 氏

文部科学省 総合教育政策局 国際教育課 課長補佐

教育、文化、スポーツ、科学技術を通じた安心安全な社会と国際平和への貢献を志し、2015年に入省。国際会議の開催や著作権法の改正に携わった後、2年間アメリカに留学。帰国後は省内の教育部署の連絡調整に従事し、2023年4月から現職。海外の日本人学校等や国内の外国人児童生徒等教育、そして子供たちの国際交流・留学を担当し、子供たちが世界とつながることで、さらに可能性を広げられる環境整備に向けて試行錯誤中。

<国の掲げる目標について>

教育未来創造会議で示された2033年までの国際交流の数値目標では、「日本人学生の海外派遣年間50万人、留学生受け入れ年間40万人、そして中高生の国際交流を対面50%、オンライン100%」実施する目標が掲げられています。

また、教育振興基本計画では「グローバル社会における人材育成について」の方針も示されており、特にデジタル技術を活用した国際交流の拡大が求められています。

国としても、グローバル人材の定義を語学力重視から、地球規模の課題に取り組む姿勢を重視する方向に変わってきていますが、企業に対する調査でも「グローバル事業で活躍する人材に柔軟な対応力やチャレンジ精神を求める」という結果が出ています。ビジネス社会においても、単なる語学力だけでなく、語学をツールとして活用して挑戦する主体性やグローバルを自分ごと化する力が重視されていることが分かります。

<現状と今後への期待>

実際どれぐらいの生徒が国際交流に参加しているのかをデータから見てみると、コロナもあって急激に落ち込んでいるのが現状です。子どもたちの可能性を引き出すため、各自治体・学校がオンラインでも対面でも国際交流の機会を活用して、子どもたちの視野を広げたり、新たなチャンスを得たりする後押しをぜひ行っていただきたいと思っています。

質疑応答では、国際交流の機会を広げるための補助金について質問があり、オンラインおよび対面の交流支援策として「留学環境整備事業」「国境を越えた高校生留学促進事業」などが紹介されました。


2.オンライン国際交流およびスピーキング練習の実践事例

山本 康太 氏

文京区立第九中学校 英語科教員

2019年より現任校にて勤務。日頃よりICTやAIを活用した授業実践を行っている。今年度は第1学年主任、学習進路主任、ICT教育推進リーダーを担当。そのほかに文部科学省委託事業英語教育推進リーダー、マイクロソフト認定教育イノベーター、ミライシードDXエデュケーターなどを務める。WorldClassroomを活用した英語科の授業実践で令和5年度文京区教育委員会研究奨励費丹羽教育研究費を受賞。

<オンライン国際交流の取り組み>

第九中学校では、昨年度、中学3年生がアメリカのメンフィス大学の学生や近隣のホームスクールの生徒との国際交流を実施。今年度はWorldClassroomを活用し、中学1年生がインドネシアやフィリピンの中学生と国際交流を実施しました。事前準備として、生徒同士で質問を考え、グループに分かれて会話練習を行いました。

その他、オンライン交流ならではの準備としてWi-Fi品質の確認なども行っています。オンライン交流の場合に最も教員の負荷となるのは相手校とのマッチングかと思いますが、WorldClassroomなど外部サービスを活用することは有効だと感じます。

当日の国際交流ではHelloWorld株式会社のファシリテーターが司会進行し、全体で各校の教員からの自己紹介やアイスブレイク活動のあと、グループに分かれて自由にQ&A形式の交流を行いました。

インドネシア側の生徒から日本の美しい場所を教えてと言われた生徒が、実際に教室の窓から見えるスカイツリーを画面越しに見せて紹介しているといった場面が多くあり、交流を深める中で、好きなアニメなど共通の話題もあったりと、多くの発見があった時間となりました。

生徒のアンケート結果では、

  • 「英語を話すことの大切さを実感した」

  • 「ジェスチャーを使うことで、うまくコミュニケーションが取れた」

  • 「今後も国際交流の機会が欲しい」

といった肯定的な意見が多く、オンライン交流が英語学習のモチベーション向上に寄与していることが示されました。

<EdTechツールを活用したスピーキング練習の効果>

WorldClassroomを活用した音読・スピーキング練習では、音声認識技術やスコアリング機能を使って、発音矯正やスピーキングスキルの向上が見られています。

都立入試のポイントとなるESAT-Jでは、平均スコアが76.1点となり東京都平均よりも10.8ポイント上回る結果となりました。上位層であるAとBの評価のみで82.4%を占め、中・下位層が少ないという結果で、平均的に能力が上がっていることがわかります。

普段のスピーキング練習の成果が国際交流で発揮されると、練習の甲斐があり、なおさらスピーキング練習にやる気が出るようになりました。また、国際交流で伝えたいことがうまく伝えられなかった場合でも、スピーキング練習に熱心に臨むようになりました。

自分が何ができないのかわかることも国際交流の大きな成果であると思います。このように、教室内でのスピーキング練習に加え、定期的に国際交流を実施することは、生徒のモチベーション向上にも大きな役割を果たしていると思います。


3.対面国際交流の実践事例 - 英語短期フィールドワークと国内ホームステイ

山本 朝彦 氏

横浜市教育委員会事務局 学校教育企画部 部長

横浜市内小学校教諭、横浜市教育委員会、西が岡小学校校長、市教育委員会教職員育成課長、教育課程推進室長を経て、現在に至る。横浜市学力・学習状況調査を改訂し、IRT理論による個の成長の分析や社会情動的コンピテンシーの研究による集団の成長の分析等、個と集団の成長を大事にした横浜市立学校のカリキュラム・マネジメントの確立と充実に向けて、様々な施策を推進している。また、本市におけるグローバル人材育成に向け、児童生徒の学びの空間として、リアル空間の更なる充実に加えて、一人一台端末やネットワークのつながりを生かして、オンラインやバーチャル空間を活用したアプローチを進めている。

<横浜市が実施する対面国際交流>

横浜市の英語教育が目指す「英語を活用しながら、あらゆる人々の多様性を尊重し、協働、共生できる人」の実現に向け、リアルでの関わりを重視しています。他方、横浜市の児童生徒数は約26万人という規模です。これを踏まえ、横浜市では2つの取り組みを行っています。

  1. 横浜イングリッシュクエスト(外国人とチームを組み、英語でミッションをクリアする活動)

2. はまっこ留学(市内在住の外国人家庭での国内ホームステイ)

特に、イングリッシュクエストの満足度は90%以上と高く、生徒が「英語を使う楽しさを実感できた」との声が多数寄せられました。

また、中学生を対象とした「はまっこ留学」は、昨年度20名の試行実施から今年度は40名定員に増員したものの、400名ちかくの応募があり、需要の高さが伺えました。

<教育委員会の役割について>

コロナ禍において、子どもたちが対面で出会い、関わる機会はほとんどなくなりました。新しい人と出会い、関わることは誰にとっても貴重な経験であり、そこから学ぶことは多いと思います。また、学校で学んだことを実社会で生かす機会、子ども自身が自分の学びを確かめるために必要であって、このように学校から飛び出して、学ぶ機会を設けることも教育委員会の役割だと考えております。コミュニケーションの基礎とも言える、聞きたい、話したい、伝えたいという気持ちが高まるようなプログラムを横浜市の教育に合わせてアレンジを加えていただきながら、実施しています。

横浜市では、グローバル教育についてのリアル・オンライン・バーチャル空間で、学びの空間を広げる施策に取り組んでいます。


4.グローバルアントレプレナーシップの実践事例

椎名 希美 氏

北海道大学 産学・地域協働推進機構スタートアップ創出本部アントレプレナーシップ教育部門 部門長/特任准教授

北海道大学医学部保健学科を卒業。救急病院で勤務する傍ら、MBA(経営管理学修士)を取得。その後、株式会社リクルートキャリアにて営業職に従事し、小樽商科大学の非常勤講師等を経て、2020年より産学・地域協働推進機構にて勤務。道内の様々な大学にてアントレプレナーシップの醸成に取り組む。2023年にはチームで小中高校生を対象に年間4,000人を超える方々に教育を届けている。自身でも北海道商品の開発やSNSマーケティングを行うベンチャー企業等を立ちあげている。博士(商学)

<アントレプレナーシップ教育の役割>

活躍が求められるグローバル人材として、語学力やコミュニケーション能力といったものだけではなく、「主体性・積極性」「創造性」「リーダーシップ」「多文化理解」を育む能力・資質が重要視されてきており、これらを育むアントレプレナーシップ教育が解決策の一助になると考えています。アントレプレナーシップというのは日本語だと起業家精神と訳されますが、決して起業家になるためだけの教育ではなく、起業家的な思考を、体験を通じて身につけていくという教育であると捉えています。

<具体的な取り組み>

北海道エリアでは、19大学4高専とコンソーシアムを組んで、小中高校生、大学生大学院生または指導者の方々に向けて、教育プログラムを協力しながら提供しています。

例えば、

  • まちなかイングリッシュクエスト(北海道大学バージョン)

  • アントレまちなか留学(沖縄での起業家ワークショップ&ホームステイプログラム)

を実施し、特に「異文化理解」「挑戦心の向上」「実践的な英語使用の場」として有効であることがアンケート結果からも示されました。

さらに、アントレまちなか留学に参加した高校生が、自ら国際交流プログラムを企画・運営する団体を立ち上げるなど、学びの継続性が生まれています。

地域ごとの独自のグローバルアントレプレナーシップ教育が生まれ、それが全国的に広がっていくことで日本全体の力となります。ぜひ一緒に未来のリーダーを育てていくことができればと思います。


セミナー後のアンケートでは、多くの参加者が「自校での実践に活かしたい」「より多くの事例を学びたい」との意見を寄せており、教育関係者の関心の高さがうかがえました。

本セミナーが、より良い国際教育の実現に向けた第一歩となることを期待しています。

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会社概要

一般社団法人HelloWorld

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URL
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業種
教育・学習支援業
本社所在地
沖縄県沖縄市中央1-7-8
電話番号
-
代表者名
野中 光
上場
未上場
資本金
-
設立
2023年10月