「NEO-Commons」始動 ― 都市社会での新しいコモンズの創出を目指して

NEO-Commons株式会社、2025年4月2日に設立。真に持続可能な社会の実現を目指す。

NEO-Commons株式会社

2025年4月2日付けで、NEO-Commons株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役:保科宏樹)が設立された。当社は、都市化した社会における新しいコモンズの創出を通して、持続可能な社会の実現に貢献することを目指す。目先の取り組みは、微生物の視点に立って農家を支援する、6月中に開始予定の土壌改良サービスだ。【ホームページ:https://neo-commons.com/

本事業が取り組む社会課題と背景

本事業が取り組む社会課題は、気候変動問題です。

多種多様な業界で前向きな取り組みがされている一方で、温室効果ガス排出削減量は目標値とのギャップが大きく、既に今世紀中頃には産業革命以前と比べて世界の平均気温の上昇を1.5℃以内に抑えるという目標は達成できない可能性が高いことがわかりました [1]。

これから私達は、沢山のものを失っていくことになるのです。

気候変動問題が人類にとって大きなリスクであることが明白にわかっているにも関わらず、世界は破滅への歩みを止められないのは何故でしょうか?

それは、資本主義という成長に依存した経済が持つ病的な性質だと言えます [2]。

確かに、低所得国において、貧困に起因する多くの問題を解消するため、資本主義経済は大変有効です。

しかし、経済発展を遂げた国においては、もはや成長への依存は「社会を豊かにする」という経済の本来の目的とはかけ離れた、限りある地球の資源や私達自身の生活を脅かす「癌」の様なものなのです。

したがって、破滅的な未来を避けるためには、持続可能で成長に依存しない経済を目指す必要があります。

そのために必要なシステムが、「コモンズ」です。

成長に依存した経済では、真に持続可能な社会は築けない

「循環型社会 = 持続可能な社会」

と捉えられる風潮があります。

しかし、私たちは循環型社会の実現は必要だが、それだけでは足りないと考えています。

というのも、物質循環で賄えるのは、最大でも既存の需要と同程度の量であり、増加分は新しい資源を必要とするからです。

ましてや、際限のない指数関数的な物質消費を賄うことは不可能であり、持続可能な社会の実現において決定的要因とはならないのです。

真に持続可能な社会が実現されるためには、指数関数的な物質消費を全てのセクターでやめなければなりません。

つまり、成長に依存しない社会を実現しなければならないということです。

成長に依存しない持続可能な社会に必要なシステムが「コモンズ」

では、成長に依存しない社会とはどのようなものでしょうか?

そのヒントは、現在の資本主義社会の形成にあります。

工業化以前の社会には、世界中の至る所に豊かな自然環境や地域コミュニティといった「コモンズ」が存在し、持続可能な社会が営まれていました。

しかし、力を持った個人や団体によるコモンズの囲い込みによって、市民は持続可能な社会を営めなくなりました。

資本主義的経済の実現により、社会は急成長を遂げ、私たちは物質的な豊かさを手に入れることができました。

しかし、現在は再び持続可能な社会を実現しなければなりません。

かつての持続可能な社会にコモンズが存在したことは、成長至上主義の社会を脱却するためには、失われたコモンズを再生し、人々の生活の拠り所を創る必要があることを意味するのではないでしょうか。

都市化した社会での新しい「コモンズ」

持続可能な社会にはコモンズが重要になると考えられますが、豊かな自然環境が失われた都市部では、かつての様なコモンズを再構築することは難しいと考えられます。

したがって、「都市化した社会での新しいコモンズとは何か」ということを考え、創っていくことが必要です。

そのために、本事業は立ち上げられました。

本事業のスコープ

コモンズの創出と持続可能な社会の実現に向けて、本事業では以下の取り組みをスタートさせていきます。

微生物視点に立った農家向けの土作り支援

近年、欧米を中心に「持続可能な食糧生産の実現」の重要性が広く認識されつつあります。

特に農業分野では、二酸化炭素の排出量の削減を含め、環境負荷の小さい農業を実現する必要があります。

この様な農業の基礎となるのが有機農業です。

しかし、化学肥料や農薬を使用する慣行農業と比べ、有機農業は一般的に難しいと言われます。

その一つの要因は、有機農業で十分な収穫を得るためには、土壌を肥沃にする必要がある点です。

化学肥料は、予め作物が吸収しやすい形の分子に合成されているため、施肥後に水と反応することで迅速に作物の栄養として吸収されます。

ところが、有機農業では、こうした化学肥料は使用できず、有機肥料が用いられます。

有機肥料は化学肥料とは異なり、微生物による分解を経なければ作物の栄養として吸収されません。

化学肥料と有機肥料それぞれの施肥後、植物が吸収する過程の違いを表す概略図。化学肥料とは異なり、有機肥料では植物が栄養として吸収するためには微生物による肥料の分解が必要となる。

つまり、有機農業を成功させるためには、豊かな土壌微生物環境が必要ということです。

これまでは、その様な土壌微生物環境を実現するためには長年の試行錯誤の末となることが一般的であり、再現性の低さが課題でした。

そこで、本事業では、従来の土壌分析技術では難しかった土壌微生物に関するデータも含めた分析に基づいて、土壌改良のサポートを実施したいと考えています。

これにより、

  1. 再現性の高い有機農業の実現

  2. 劣化した土壌の効率的な回復の実現

  3. 施肥設計を最適化することによる不要な肥料の削減及び収量の増加

が期待できます。

また、慣行農業を行う農家にとっても、豊かな土壌微生物環境の実現は連作障害のリスクを低減させる効果があるため、メリットは大きいです。

本事業により、低リスクで再現性が高く、安定した有機農業が拡大することで、「みどりの食料システム戦略 [3]」を実現する上でも追い風となることが期待できます。

有機農業の拡大は、コモンズの再生という点でも意義があります。

慣行農法で用いられる化学肥料や農薬の影響は、かつての状況と比較すれば大幅に減少しましたが、それでも生態系や私たちの生活に対して大きな影響を与えています。

例えば、植物が吸収できず川や地下水に流れ出たリンは、水質汚濁の原因となることで有名です。

過剰な化学肥料の削減と有機肥料の効果的な使用は、土壌の窒素・リン循環を安定させ、「水質」というコモンズを再生することに繋がります。

今後の展望

微生物視点を取り入れた最新の土壌分析技術を保有する企業と業務提携を進め、今年6月中のサービスの開始を目指します。また、コモンズという視点で活動を進める様々な団体やコミュニティとの連携を進め、持続可能な社会の実現に貢献します。

経営陣・役員紹介

保科 宏樹

代表取締役

代表取締役の保科宏樹(ほしな・ひろき)は、東京大学大学院で物理学を専攻し、博士課程を修了。個人事業で量子コンピューティング技術を用いたシステム開発などを行った後、NEO-Commons株式会社を起業。現在、3名の立ち上げメンバーと共に運営中。

脚注

[1] Pörtner, H.-O. et al., 2022: Technical Summary. [H.-O. Pörtner, D.C. Roberts, E.S. Poloczanska, K. Mintenbeck, M. Tignor, A. Alegría, M. Craig, S. Langsdorf, S. Löschke, V. Möller, A. Okem (eds.)]. In: Climate Change 2022: Impacts, Adaptation, and Vulnerability. Contribution of Working Group II to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [H.-O. Pörtner, D.C. Roberts, M. Tignor, E.S. Poloczanska, K. Mintenbeck, A. Alegría, M. Craig, S. Langsdorf, S. Löschke, V. Möller, A. Okem, B. Rama (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, UK and New York, NY, USA, pp. 37-118, doi:10.1017/9781009325844.002.

[2] ジェイソン・ヒッケル, 資本主義の次に来る世界, 東洋経済新報社, 2023年

[3] 農林水産, みどりの食料システム戦略トップページ, https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/

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会社概要

NEO-Commons株式会社

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URL
https://neo-commons.com/
業種
サービス業
本社所在地
東京都世田谷区太子堂 4丁目18番15号 マガザン三軒茶屋2 3F-3
電話番号
090-9244-3811
代表者名
保科宏樹
上場
未上場
資本金
100万円
設立
2025年04月