Whateverが日本酒テイスティングサービス「YUMMY SAKE」に出資
Whateverは、AI×ブラインドテイスティングで好みの日本酒がわかるサービス「YUMMY SAKE」に出資致しました。
「YUMMY SAKE」は、スマートフォンを活用して簡単なブラインドテイスティングを行い、その人に合った味覚のタイプを判定するサービスです。代官山に新しく出来た次世代日本酒ムーブメントのコアコミュニティ「YUMMY SAKE COLLECTIVE」と、吉祥寺「未来日本酒店 KICHIJOJI」で体験できます。
店内でご紹介する日本酒の多くは、東京都内で一般に流通している大手銘柄・有名銘柄だけではなく、クラフトマンシップ溢れ、新しい酒造りにチャレンジする蔵元の希少な銘柄を中心としたセレクトです。詳細についてはウェブサイトをご確認ください。
https://yummysake.jp/
弊社プログラマーの貴田達也がサービス立ち上げ時より開発に関わっており、その縁と、何よりもサービスの将来性に可能性を感じて、今回の出資を決めました。今後は、サービスを広め、皆様に受け入れていただけるように、サポートをしていこうと思います。
私と YUMMY SAKE が関わった経緯は、もともと前職の R&D 部署で現 YUMMY SAKE 社の中島さん達と一緒に、身内で日本酒を飲んで、あーだこーだ言いながら、アルゴリズム担当として「味覚をコンピュータでうまく解釈するには?」という課題に挑みはじめたところから始まります。同じ味覚でもジュースなどと比べると、嗜好品の一種である日本酒は、人によって感覚の差異が大きくでやすい飲み物だな、なんだこれは、と思ったのを覚えています。
視覚や聴覚の情報をコンピュータで扱う経験はあったのですが、味覚の情報処理は右も左もわからぬままはじめ。「まずアルコール度、日本酒度などの数値成分でクラスタリングしてみるか」と挑戦して「成分は人間の感覚と全然違うやん」と挫折したところからはじまって。「Spotify はなぜこんなに言語化しにくい音楽的感覚をうまく学習できてるのか?」と論文を漁ったり、大学の醸造科の教授に味覚センサのお話を伺いに行ったり、いろいろな試行錯誤していました。そんな折に、利酒師のそのさらに上位資格である「酒匠」というなんだかすごそうな資格を持たれている、現 YUMMY SAKE 社長の山本さんに出会いました。
現状の YUMMY SAKE の AI のアルゴリズムでは、その酒匠・山本さんを中心とした様々な利酒師の経験を元に、初心者にもわかりやすいよう、日本酒を 12 のタイプにオノマトペで分類しています。その裏側では、日本酒度、アルコール度などの化学成分指標とは全く異なる「日本酒の味を人間がどう感じるか?」をデータ化するための複数種の独自の評価指標を設定しています。その独自指標に基づいて、様々なプロ利酒師の方に、100 本以上の日本酒をテイスティングして頂いた「日本酒の味覚成分データベース」をつくり、今回の YUMMY SAKE の AI を構築しています。
利酒師の方の日本酒感覚はコンピュータサイエンスの観点でも本当にやばいです。利酒師はディープラーニングでよく訓練されたモデルのような性能を持っているな、と感じたエピソードがあります。YUMMY SAKE のサービスを体験して頂く際、10 本の日本酒をテイスティングキットとしてお客さんに飲んで頂きます。あまたある日本酒から、お客さんの味覚を診断する最適なテイスティングキット 10 本の組み合わせをコンピュータがセレクトするには”組み合わせ最適化問題”を解かなくてはなりません。それはパソコンの 10 桁のパスワードをクラッキングする作業とやや近く、とにかくたくさんパソコンを回し続けて、やっと最適なものが見つかる問題です。
そこで、私は一晩パソコンを回し続け、その中で局所最適解として見つかった 10 本を選び、利酒師の方に「この 10 本どう思いますか?」と連絡したのです。すると、利酒師の方から「この酒を外して、あの酒を入れたほうがよくない?」とすぐにレスが返ってきて、その組み合わせのバランスのよさを再評価したところ、一晩パソコンを回し続けたテイスティングキットより、利酒師が一瞬で Slack で回答してきたテイスティングキットのほうがバランスがよい、ということがありました。利酒師には、日本酒を味覚でマッピングした潜在空間が見えているのでしょうか。
ということで、そんな利酒師のやばいノウハウを存分に注ぎ込んだ YUMMY SAKE の AI を体験してみてください。そして、「人が日本酒をおいしいと感じる多様な感覚を AI に学ばせる」という課題への挑戦ははじまったばかりです。人の嗜好は多様で、客観的な正解はありません。利酒師の日本酒感覚はやばいですが、利酒師が重要視する味覚特性とは異なる軸を愛されてる方もいらっしゃると思います。そんな領域へも挑戦したいと思っています。まだまだ発展途上なので、今後のYUMMY SAKE にもご期待下さい。
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