明治から大正期まで足尾銅山の輸送の主力を担った「馬車鉄道」の現地調査を実施。一次史料と位置を見比べながら、山中では緑色に浮かび上がる小道を、沢沿いでは石組みの橋台を確認しました。

足尾銅山の歴史的遺産を観光資源へと光り輝かせるため、宇都宮大学地域デザイン科学部と日光市足尾町の地元の有識者らが力を合わせて現地調査を実施して参りました。2022年9月1日、2日のルポタージュ。

  宇都宮大学地域デザイン科学部が、日光市足尾地域の方々の知識を継承し、著しい人口減少と超高齢化の時代の地域の発展に挑みます。このたび、栃木県の支援も受けつつ、宇都宮大学地域デザイン科学部と日光市足尾町の有識者らが力を合わせて、山中や川沿いでの調査に取り組んで参りました。
  2022年9月1日には日光市(神子内エリア)の調査を、そして、9月2日には足尾から群馬県みどり市方面(原から沢入エリア)の調査をそれぞれ実施しました。
 山中に鮮やかな緑の小道が浮かび上がっていて、まるで、タマムシの光り輝く背中のラインのようでした。さらに、川沿いには大きな石組みの橋台が残っていました。
  •  足尾銅山閉山後の日光市足尾町の地域振興の経緯
 足尾町は、明治期から昭和の時代において日本の近代化をけん引した大銅山の城下町として発展しました。昭和48(1973)年の足尾銅山の閉山、そして、平成の市町村合併を経て現在の日光市足尾町となりました。町はこれまで、地域再生のために、地域の歴史、文化、産業遺産、そして自然を活かしたまちづくりに奮闘してきました。
 現在、著しい人口減少と超高齢化が引き起こす様々な問題に直面しながらも、日光市役所、足尾の有識者らやNPOなどの地元組織、古河機械金属株式会社、そして、宇都宮大学地域デザイン科学部が力を合わせて地域の再生に力を注いでいます。
 足尾銅山の近代化をけん引した馬車鉄道の遺産については、不明な点も多く、一次史料研究から現地における調査まで地道な取り組みが行われておりました。本年度は、栃木県の支援も受けることができたため、現地調査に着手しております。地域の方々と大学とが、知識の継承と融合で地域の発展に挑んでおります。
  • 9月1日と9月2日における馬車鉄道跡の現地調査の概要
 2022年9月1日と9月2日に、それぞれ、図で示した「神子内エリア」と「原から沢入エリア」で調査を実施して参りました。9月1日は足尾地域の有識者1名と宇都宮大学3名で実施し、9月2日は足尾地域の有識者3名と宇都宮大学3名で実施して参りました。

 

9月1日と9月2日の調査エリア9月1日と9月2日の調査エリア

 
  • 2022年9月1日、山中に鮮やかに浮かび上がる緑色の小道と化した軌道敷跡を確認(神子内エリア調査)
 「馬車鉄道」の軌道敷の跡が山中で鮮やかな緑色に浮かび上がっているのを確認できました。まるで、タマムシの光り輝く背中のラインのようでした。
 明治期から大正期にかけて、足尾銅山の北東側や日光駅からは、銅山の操業に必要な物資、燃料や薪なども運ばれていました。この軌道跡沿いでは運搬中にこぼれ落ちたであろうコークスなども確認できました。

 

馬車鉄道の跡は山中で鮮やかな緑色に浮かび上がる小道と化していました(9月1日の調査での撮影)馬車鉄道の跡は山中で鮮やかな緑色に浮かび上がる小道と化していました(9月1日の調査での撮影)

 

この道の幅は約2.4メートル以上はあった。詳細調査を進められれば様々なことが明らかとなることなると思います。この道の幅は約2.4メートル以上はあった。詳細調査を進められれば様々なことが明らかとなることなると思います。

 

 

 

道沿いに転がっているコークスを発見!ちなみに学生が来ている黄色いTシャツは地域デザイン科学部のTシャツです。道沿いに転がっているコークスを発見!ちなみに学生が来ている黄色いTシャツは地域デザイン科学部のTシャツです。

沢沿いの左岸側に橋台跡を確認沢沿いの左岸側に橋台跡を確認

 

 

沢沿いの右岸側に50cm以上の大きさの石で組まれた橋台跡を確認沢沿いの右岸側に50cm以上の大きさの石で組まれた橋台跡を確認


 また、沢沿いでは、沢を跨ぐために橋が必要となりますが、50cm以上の大きさの石で組まれた橋台の跡も確認できました。

 

  • 2022年9月2日、一次史料とほぼ同じ位置に橋台跡を確認(原から沢入エリア調査)
 昨日と同様に、足尾行政センター(足尾公民館)内で出発前に打ち合わせを行いました。これまでの宇都宮大学の研究成果(一次史料から得られた馬車鉄道の建設の経緯や、計画図など)をもとに遺産の位置を確認し、地元の有識者3名と馬車鉄道の知識を融合させて現地調査に臨みました。

遺産位置確認のための事前打ち合わせ。学生たちは地元の有識者らから地域の歴者文化を受け継ぎつつ調査に入りました遺産位置確認のための事前打ち合わせ。学生たちは地元の有識者らから地域の歴者文化を受け継ぎつつ調査に入りました


 地域デザイン科学部の調査で発見された一次史料の計画図の記載とほぼ同じ位置で橋台の跡を確認しました。

渡良瀬川左岸側に残る橋台を確認渡良瀬川左岸側に残る橋台を確認

 

 

 下の写真の右側は馬車鉄道の南端ターミナルとった沢入地区(群馬県みどり市)の渡良瀬川右岸です。足尾鉄道にその座を譲ることになった馬車鉄道の敷設のレベル(高さ)を確認しました。
 写真奥の赤い橋梁(現在の沢入橋)のレベルの左岸側に、現在は「わたらせ渓谷鐵道」が通っています。さらに下流には草木湖(草木ダムの湖、ダムの竣工は1976年)がありますので、その建設の影響を受けて変化をしているはずです。 
 沢入地域の方々から、昔の地域の絵図や写真などの情報がいただけたら、さらに詳しいことが判明するのではと思います。皆様のお力添えを頂けたら大変有難いです。

 

 

沢入橋の上流右岸側から眺めて馬車鉄道のレベルを確認沢入橋の上流右岸側から眺めて馬車鉄道のレベルを確認

沢入駅前(わたらせ渓谷鐵道)前での撮影で本日は調査終了でした沢入駅前(わたらせ渓谷鐵道)前での撮影で本日は調査終了でした

 

 足尾銅山の近代化を支えたインフラの代表格であった「馬車鉄道」。明治24年に古河から最初の申請が出され、翌年に敷設許可が下りました。そして「日光駅から細尾間」、「地蔵坂から足尾銅山内」、「足尾銅山から群馬県の東村の沢入間」で馬車鉄道が完成しました。
 これまでの宇都宮大学地域デザイン科学部の文献調査により明らかとなってきた馬車鉄道の敷設計画図(一次史料)をもとにして、このたびの2022年9月1日での調査では、「地蔵坂から足尾銅山内」の部分の神子内と呼ばれるエリアでの調査を、そして9月2日の調査では「足尾銅山から群馬県の東村の沢入間」の現地調査を進めました。

 「足尾鉄道(現在のわたらせ渓谷鐵道)」が敷設される前は「索道(ロープウェイ)」とともに足尾銅山の輸送手段の主力をなした「馬車鉄道」。宇都宮大学地域デザイン科学部はこの地域の大切な遺産を継承し、地域の発展を願い地域とともに歩みます。

 自然豊かな中山間地域が人口減少と超高齢化で苦しむこの時代。「地域の方々」と「宇都宮大学地域デザイン科学部」が「知の継承と融合」で地域の再生に挑みます。地域や社会に対して果たすべき役割を意識し、宇都宮大学は今後とも貢献して参ります。

 次回のルポでは、学生たちが「日光駅から細尾間」の遺構に迫る様子をお伝えできると思います。

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 このたびの活動においては栃木県の「令和4(2022)年度大学地域連携活動支援事業」で採択を頂き、支援を頂いております。

■栃木県/令和4(2022)年度大学地域連携活動支援事業について
https://www.pref.tochigi.lg.jp/a01/daigaku/daigaku-chiiki-renkei.html

 また、日光市および足尾行政センター、古河機械金属株式会社、足尾銅山の世界遺産登録を推進する会、地元の有識者の方々のお力添えを頂きながら進めている調査研究活動です。

 なお、地域の方々との交流に際しは、新型コロナウィルスの蔓延防止について十分な配慮をしつつ進めて参ります。
 現地での調査においては「安全専一」で進めております。「安全第一」のもととなっている「安全専一」。これも足尾銅山の近代化の文化です。

■宇都宮大学 地域デザイン科学部
http://rd.utsunomiya-u.ac.jp/
 
■古河足尾歴史館
https://www.furukawakk.co.jp/ashio/ashio/

■トロッコ館情報
https://www.furukawakk.co.jp/ashio/news/

■足尾銅山の世界遺産登録を推進する会
https://ashiodozanworldheritage.net/free/profile

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会社概要

URL
https://www.utsunomiya-u.ac.jp/index.php
業種
教育・学習支援業
本社所在地
栃木県宇都宮市峰町350
電話番号
028-649-8172
代表者名
池田 宰
上場
未上場
資本金
-
設立
1949年05月