日本の資産運用会社16社の気候変動への取り組みランキング発表
~1位アセットマネジメントOne、2位日興アセットマネジメント、3位野村アセットマネジメント~
民間金融機関のESG方針の格付けや実際の投融資のケース調査などを行ってきた国際青年環境NGO A SEED JAPANと「環境・持続社会」研究センター(JACSES)は、日本の大手資産運用会社16社(大手金融グループの運用会社を選定。また、外資系を除く。)について、排出削減目標、化石燃料に関する方針の有無、エンゲージメントや議決権行使に係る方針や実施状況等に関して、25項目で評価し、気候変動への取り組みスコアリングを実施しました。
結果、アセットマネジメントOneが1位、日興アセットマネジメントが2位、野村アセットマネジメントが3位となりました。
2024年3月4日に、調査結果のドラフトおよび評価方法を16社に送り、3月29日までフィードバックを受け付けました。
評価対象企業と結果の概要は以下の通りです。
【調査対象とした日本の大手資産運用会社(点数順)】
アセットマネジメントOne株式会社(1位)
日興アセットマネジメント株式会社(2位)
野村アセットマネジメント株式会社(3位)
三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社(4位)
しんきんアセットマネジメント投信株式会社(5位)
ニッセイアセットマネジメント株式会社(6位)
大和アセットマネジメント株式会社(6位)
りそなアセットマネジメント株式会社(8位)
三菱UFJアセットマネジメント株式会社(9位)
農林中金全共連アセットマネジメント株式会社(9位)
明治安田アセットマネジメント株式会社(11位)
三井住友DSアセットマネジメント株式会社(12位)
SOMPOアセットマネジメント株式会社(13位)
東京海上アセットマネジメント株式会社(14位)
SBIアセットマネジメント株式会社(15位)
SBI岡三アセットマネジメント株式会社(15位)
【スコアリング結果の概要】
本調査によれば、日本の大手の運用会社を中心に、Net Zero Asset Managers Initiative(NZAMI)への署名や2050年ネットゼロ宣言が行われているものの、2030年ポートフォリオ温室効果ガス排出削減目標において、50%を超える野心的な削減目標を設定している会社はありませんでした(Q4)。NZAMIの署名機関には、「2030年にCO2排出を50%削減するという世界的な要請の『公正な負担』と整合する目標の設定」が求められています。歴史的排出責任のある日本には「公正な負担」すなわち50%を超える削減が求められ、日本の運用会社も同様であると言えます。
なお、アセットマネジメントOneと野村アセットマネジメントは、2030年目標に「SBTポートフォリオカバー率」(SBT認定済みの企業が投資先に占める割合)を用いています。しかしながら、この指標は2030年時点の実際の排出削減量又は比率を示すものではないため、上記の2030年削減目標値(%)を問う質問(Q4)で加点できませんでした。
この2030年の排出削減目標達成に向けては、石炭・石油・ガスの採掘や発電関連事業者への投資を制限・除外する何らかの方針を持ち、企業に事業転換を促すことが必要ですが、そのような方針を持っていたのは、アセットマネジメントOneとSOMPOアセットマネジメントのみでした(Q5~Q9)。
気候変動対策としての有効性が疑問視されるバイオマス発電や水素・アンモニア発電関連事業者については、どの会社も方針を持っていませんでした(Q10・Q11)。バイオマス、水素・アンモニアの発電利用の問題点[1]については、注釈のリンク先をご参照ください。
また、パッシブ運用が大きな割合を占める日本の運用会社にとって、エンゲージメントや議決権行使を通じて大量排出事業者(石炭・石油・ガスや発電セクターの企業を含む)の行動強化を求めることが肝要ですが、現状、それを支える十分な方針を備えているところは少なく、エンゲージメントの実施規模・実施状況もほとんどの会社で明らかにされていません。気候変動関連エンゲージメントの実施規模(会社の数)を開示しているのは、三菱UFJアセットマネジメントとりそなアセットマネジメントのみでした(Q17)。
議決権行使においても投資先企業の排出削減努力の強化を促すことが必要ですが、現状、議決権行使基準において、パリ協定の目標と整合する排出削減目標設定や事業計画の策定・開示を求めているのは、アセットマネジメントOne、大和アセットマネジメント、日興アセットマネジメント、野村アセットマネジメント、三井住友トラスト・アセットマネジメントに留まりました(Q21・Q22)。
化石燃料の使用削減・撤退を促す文言があったのはアセットマネジメントOneのみでした(Q23)。
なお、運用会社によっては、投資先企業に求める経営の在り方(ESG課題への取り組み)を別途明文化・公表し、それに基づいて投資先へのエンゲージメントを行い、改善が見られない場合に取締役選任議案に反対すると述べているところもあります。大和アセットマネジメントと野村アセットマネジメントについては、それらの文書も議決権行使基準の一部として参照しました[2]。
2023年の株主総会で国内外の環境NGO等から日本のメガバンクや商社、電力会社に対して提出された、気候変動対策の強化を求める株主提案についても、全て賛成したのはしんきんアセットマネジメント投信の1社のみで、平均して30%の賛成率に留まりました(Q24)。
今後、資産運用各社には気候変動関連株主提案に、より積極的に賛成することが望まれます。
[1] 【NGO共同声明】石炭火力発電のバイオマス混焼および専焼化はグリーンウォッシュ 気候変動を加速させ、森林生態系を破壊する(2023年4月11日)https://kikonet.org/content/24105
【ファクトシート】水素・アンモニア燃料 ─解決策にならない選択肢 https://beyond-coal.jp/documents/documents-factsheet-ammonia/
[2]大和アセットマネジメント「当社が求める投資先企業のあるべき経営の姿(ベストプラクティス)」
https://www.daiwa-am.co.jp/company/managed/Bestpractice_202302.pdf
野村アセットマネジメント「投資先企業の望ましい経営のあり方」 https://www.nomura-am.co.jp/special/esg/pdf/vote_policy.pdf?20231124
【詳細】
・別紙1)資産運用会社の気候変動への取り組み状況調査(2023年度) 質問・評価項目一覧
・別紙2)各社結果一覧表(2024年3月29日時点版)
別紙データ(PDF, Excel)下記サイトに掲載したリンクから閲覧・ダウンロードください。
URL:https://aseed.org/240331_assetmanagers_climate_pressrelsease
※3月29日までに以下の資産運用会社からフィードバックを受け取りました。
〈フィードバックの有った資産運用会社〉
アセットマネジメントOne株式会社、りそなアセットマネジメント株式会社、農林中金全共連アセットマネジメント株式会社、三井住友DSアセットマネジメント株式会社、SOMPOアセットマネジメント株式会社
※三菱UFJアセットマネジメント株式会社からはフィードバックを受けていません(3月31日時点)が、当団体の再調査の結果、ドラフトスコアの誤りが判明し、一部の質問項目で評価を更新しています。
以上
※この調査・プレスリリースは 2023 年度独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて実施・作成しています。
特定非営利活動法人 A SEED JAPAN https://www.aseed.org/
(ESGウォッチプロジェクト ウェブサイト:https://www.aseed.org/esgwatch/)
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