イタリア・ビエッラの織物文化〜ラグジュアリーファッションの原点に迫る〜
大阪・関西万博のイタリア館に行う「ピエモンテウィーク」に合わせて「ウールの首都」ピエモンテ州ビエッラ市の魅力を紹介

合同会社G.I.Libera(本社:石川県かほく市内高松コ43-1、代表取締役:池島範彦、ピエモンテ出身の執行役員:スガイ・マッシミリアーノ)は大阪・関西万博のイタリア館に行う「ピエモンテウィーク」に合わせてピエモンテ州ビエッラ市の地域活性事業として、歴史やファッション、グルメ、自然などの様々な内容を、日本へ告知します。シリーズの第1弾は、ビエッラの織物文化についてご紹介します。
聖なる水が育む、イタリア・ビエッラの織物文化




イタリア北西部ピエモンテ州に位置するビエッラは、「ウールの首都」として世界にその名を轟かせています。アルプスの山々に抱かれたこの地は、古くから上質なテキスタイル産業の中心地として栄えてきました。その卓越した技術と品質は、単なる地場産業の枠を超え、世界的なラグジュアリーファッションを支える揺るぎない礎となっています。
ビエッラで織られる生地の歴史は、中世にまで遡ります。雪解け水が流れ込む豊富な水源、特にアルプスからの清らかな水は、ウールの洗浄や染色に不可欠な要素であり、この地の繊維産業の発展に決定的な役割を果たしました。この「聖なる水」が、カシミヤやビキューナといった最高級の天然繊維が持つ本来の柔らかさや色合いを最大限に引き出し、他では真似のできない風合いを生み出しているのです。

何世紀にもわたり、この地では代々職人の技が受け継がれてきました。原毛の選定から紡績、染色、製織、そして仕上げに至るまで、全工程において磨き上げられた高度な専門知識と、ディテールへの徹底的なこだわりがビエッラ製のテキスタイルを「Made in Italy」の象徴たらしめています。


伝統と革新が生む、世界最高峰のラグジュアリー
現代のビエッラ織物産業は、長い歴史を持つ家族経営の企業群によって支えられています。エルメネジルド・ゼニア (Ermenegildo Zegna)やロロ・ピアーナ (Loro Piana)、ヴィターレ・バルベリス・カノニコ (Vitale Barberis Canonico)など、世界的に有名な数々の高級テキスタイルブランドがビエッラを本拠地とし、その製品は世界のトップデザイナーやテーラーから絶大な信頼を得ています。

彼らの成功の秘訣は、伝統技術の厳格な継承と、最新技術への積極的な投資という、一見相反する二つの要素を融合させている点です。昔ながらの手作業による繊細な感覚を守りながらも、最新の機械を導入することで、生産効率と品質のさらなる向上を実現しています。この絶妙なバランスこそが、ビエッラがグローバルな競争の中で「最高峰」の地位を維持し続ける理由です。

現在、世界の高級アパレルブランドの多くが、コレクションにビエッラ産の生地を採用しています。この地で織られた一反の布が、ニューヨークやパリのランウェイを飾り、世界のファッションをリードしているのです。ビエッラのテキスタイルは、単なる素材ではなく、ラグジュアリーの代名詞であり、着る人の人生を豊かにする芸術作品といえるでしょう。
ビエッラと日本を結ぶ「ものづくり」の魂
ビエッラ織物の職人技と日本の「ものづくり」の精神には、驚くほどの共通点があります。日本の「ものづくり」は、単に良い製品を作ることにとどまらず、素材への敬意、緻密な技術の追求、そして細部にわたる完璧さを目指す哲学です。この概念は、イタリア語の「Arte di Fare (作る技術)」あるいは、ビエッラの職人が持つ「Artigianalità (職人技)」の根幹と響き合います。

特に、愛知県一宮市の尾州(びしゅう)産地のような日本有数の織物産地とビエッラは、ウールや天然繊維に対する深い理解と、世界最高水準の生地を生み出す情熱という共通点があります。
ビエッラの職人が何世紀もかけて培ってきた「一つのことに魂を込める」姿勢は、日本の職人が大切にする「ものづくり」の精神そのものです。この共通の価値観があるからこそ、ビエッラのテキスタイルは日本の高級アパレル市場においても高い評価と人気を得ているのです。

もう一つ、石川県かほく市に拠点を置くカジグループは、日本の繊維産業において、独自の技術と多角的な事業展開で存在感を放つ企業です。その事業は、伝統的な繊維加工から、最先端の機械開発、さらには自動車分野へと幅広く進化を遂げています。
ビエッラとカジグループは、単なる生地の生産地・生産者というだけでなく、「自社の専門技術を深く掘り下げ、それを制御・革新する力を自前で持つ」という共通の哲学を持っています。ビエッラは最高級の生地生産という伝統を、カジグループは繊維から機械、そして自動車部品へと、それぞれの形で「ものづくり」の極致を体現しているといえるでしょう。


ビエッラは今も、その清らかな水と揺るぎない職人技をもって、世界中の人々の生活を豊かにする「糸」を紡ぎ続けています。これは、古都の静かなる情熱が、海を越え国境を越えて、人々の心と世界を結びつける壮大な物語なのです。
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