持続可能な農業”放牧”から学ぶ~~ニュージーランド北海道酪農協力プロジェクト WEBセミナーVol.03実施レポート公開~

2021年6月23日 ニュージーランド政府、フォンテラジャパン株式会社、ファームエイジ株式会社が主体となるニュージーランド北海道酪農協力プロジェクトにて、放牧酪農に関するWEBセミナー「放牧酪農WEBセミナー Vol.03」を開催致しました。2021年開催の最終回となった本セミナーは酪農家、関係団体など、北海道のみならず全国の方にご参加いただきました。人数は過去最高で、定員50名のところ80名を超える方々にご参加いただきました。
トピックは、ニュージーランド(以下NZ)における最高レベルの放牧草管理をメインに、NZコンサルタントからのアドバイスを実施し、それらを交えてディスカッションを行いました。参加者からは、多くの質問が寄せられ、活気にあふれた90分になりました。
■(はじめに)放牧の原理原則 放牧草の管理 ファームエイジ株式会社 小谷栄二


今回お話しいただくガビン・シース博士からは、放牧の原理原則である最高品質の放牧管理技術についてお話をしていただきます。博士には、弊社が20年以上開催協力している「グラスファーミングスク-ル」の講師として長年ご協力いただいており、毎年道内各地の牧場を訪れ、指導を行っていただきました。今日は、その最も基本となる部分についてお話していただく予定です。

■最高の放牧草管理について ガビン・シース博士

1.放牧における草の需要と供給の関係性
・放牧において、家畜の摂食する量(需要)と草の生長量(供給)の把握が重要
・NZでは季節分娩のため、分娩時と乾乳期は必要となる草の量は少なくなりつつも、
 5-9月は余剰な草が残ってしまう
・ポイントはこの余剰となる草をいかに早く察知し、どのように管理していくか

2.フィードバジェット
・NZでは「フィードバジェット」という手法を用いて放牧地の管理を行っている
・牧草の生長量、家畜が採食する量、頭数などを基に、1haあたりの需要と供給が成り立っているかを
 計算することができる
・仮に需要が供給を下回っていれば、余剰分の草が発生するので、これらを察知し、
 いかに早く決断できるかが重要
・決断を的確にすることで、品質の良い草地を維持することができる

3.牧草の高さと生長量
・理想的な高さは5-20cmとされている 但し草種や地域差があるため一概には言えない
・高さが短すぎると生長が悪くなり、長すぎると枯死している葉が増え、
 エネルギー効率が悪い草地になってしまう

4.放牧計画
・放牧前後の草量に応じて、ローテーションに必要な日数を把握する
・地域差や草種の違いによって計算より早まったり、遅くなったりする

5.放牧草の状態と品質の関係
・草の状態や品質は季節によっても異なる
・緑葉が多い春はエネルギーや消化率も高いが、季節が進むにつれ低下する
・消化率が下がると摂食できる量自体も少なくなり、エネルギー不足に陥るリスクがある

■ディスカッション


【放牧草の管理技術について】 北海道足寄町 ありがとう牧場 吉川さん
・最近の変化について

以前は、放牧前と後の草量をライジングプレートメーターで測定していたが、今は細かい数値判断ではなく、長靴を使って、丁度良さそうなところに放牧するよう意識している。今年は借用地が借りることができず、頭数を少し減らした。放牧圧が高めだが、結果的にその影響もあってか、草の品質が良くなったと感じる。

【放牧草の管理技術について】 北海道天塩町 高原牧場 高原さん
・最近の変化について

昨年は土壌凍結でペレニアルライグラスがだいぶ減った。追播はしているが定着が弱い。そのためオーチャードグラスが優先してしまい、プレートメーターの測定値がずれてしまっている。

■質疑応答

Q1:余剰分はどのぐらいのタイミングで決定する?
A1(高原):プレートメーターの測定値が、放牧地の数値よりも大きく上回ったときに判断しています。長すぎると固い茎が残ってしまうので。あとは実際に歩いて、見た目でも判断するようにしています。

アドバイス(キース):まず数値として把握することが大切です。例えば、家畜が必要とする餌の量として乾物収量で20kg必要な場合、家畜が15kgしか食べていないようであれば、残り5kgを補助飼料などで補う必要性が出てきます。畜舎だけにいる場合はそのような飼料だけで賄っていきますが、放牧もしている場合、放牧草の栄養価を上げることで、飼料が無くても補うことができるとわかると思います。ですから、数値をきちんと把握することで明確な判断を下すことができる、もっというなら草をお金に換算した考えができるということです。

Q2:春から夏にかけて余剰分の草があると思いますが、秋から冬にかけて減ってきたときの管理はどのようにされていますか?
A2(吉川):ローテーションの期間を長くしています。うちは基本的に兼用地主体なので、採草した後に放牧しているとローテーションが40日ぐらいになります。
A2(高原):放牧地に施肥をしています。ゆっくりきく肥料をお盆過ぎぐらいに全牧区に施肥しています。9-10月はそれでなんとか回しています。11-12月は余剰でできたサイレージをサイレージフィーダーで、放牧地に撒いて牛に与えています。その時は牧区を広げて調整しています。
アドバイス(ガビン):先ほど、草の高さは5-20cmが推奨されるというお話をしましたが、場合によっては20cmに近いほうが牛の食べる草量としては多くなることがあります。理由は緑葉の多さや草種にもよるためです。ですから、草の高さに関して理想値はありますが、牧草の生長や、品質がどのようになっているかという観点から考える必要があります。

Q3:草の高さに関する判断基準はありますか?
A3(高原):葉っぱが最大限かなと思った時ですかね。オーチャードグラスとかは伸びすぎると茎がでてきて固くなってしまうので、牧草を手で持った時にちぎりやすいと思うタイミングにしています。

Q4:ペレニアルライグラスが冬枯れしてしまったということですが、乳量に影響は出ていますか?
A4(高原):昨年はだいぶ下がってしまいました。今年はそこまでではないですが、そのような状況を見越して、採草の前にトッピングをして、再生しやすいように施肥を行うようにしました。
A4(吉川):うちの場合は、オーチャード主体の草地で、放牧密度もそれほど高くありません。ですから、10cm程度の草高が理想といわれても、短すぎると感じます。20cmぐらいがうちの牧場は理想かなと思います。ただ、どうしても糞の周りは株化しやすい印象がありますね。

Q5:どの草においても5-20cmの草高が目安になりますか?
A5(ガビン):あくまで理想と捉えてください。NZですとペレニアルライグラスが主体になりますが、ご自身の牧場の草種にあわせて判断してください。例えば、20cm以上になると、枯れていく葉が多くなり、草種によっては出穂してきます。そうなると草の栄養価や消化率が下がり、結果的にパフォーマンスが落ちてしまいます。ですから、地域や草種によって、どのタイミングが草のパフォーマンスを最適に発揮できるかを、判断基準としていただければと思います。

■(まとめ) 日本および北海道における「放牧」の今後について キース ベタリッジ


初回から、持続可能な農業として「放牧」という手段があることを提示してきました。これからの農業において、自給飼料をどのように賄っていくか、家畜福祉をどのように考えていくか、さらには機械の使用、作業員の労働環境も考えていくことも重要になっています。この先、日本において「放牧」が所得が高い経営手段だけでなく、ライフスタイルの選択肢として確立していけば、新規就農者が増えていく可能性もあると感じています。また、放牧から生まれたグラスフェッドミルクも科学的根拠の中でも、栄養価が高いとされていますので、消費者に対する良い効果もあるでしょう。

最後に、NZの農家さんはコンサルタントとのアドバイスを基に決断を行いますので、このようなサポート体制も今後日本で必要になってくるでしょう。

■今後の展望、予定
今後も実践的な「放牧」の学びの場として、日本の農業を良くしていくための「サステナブルな取り組み」として、このような機会が提供ができればと考えています。HP、SNS上などでご案内差し上げます。
また、記事についてご不明点などございましたら、以下の問合せ先までご連絡ください。

・連絡先:ファームエイジ株式会社 担当:高田(タカダ)
TEL:0133-22-3060 FAX:0133-22-3013
HP:https://farmage.co.jp/
・ファームエイジについて:持続可能な農業「放牧」を普及するため、35年以上にわたって活動する「放牧の専門家集団」。放牧のためのフェンス、牧道などの全体設計、販売から「グラスファーミングスクール」及び放牧セミナーの企画に至るまで、コンサルティングも含めた放牧に関する総合ソリューションを展開。
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