ホスピタリティ・テック系スタートアップSECTION Lが、2億5000万円のプレシリーズAラウンド資金調達を完了
インバウンド回復に伴い、長期滞在の宿泊市場に新しい風を吹き込むホテルブランドを拡大していきます。
長期滞在型ホテルのオペレーター、株式会社セクションL(本社:東京都千代田区、代表取締役:Howard Ho 以下、SECTION L)は、プレシリーズAラウンドで、株式会社董花、株式会社DGインキュベーション、株式会社プロフィッツを引受先とする第三者割当増資による、資金調達を実施しました。2021年に完了したシードラウンドと合わせ、総調達額が3億6千万円に達しました事をご報告いたします。
- 社会背景:日本の宿泊業界に必要とされるホテルカテゴリー
宿泊日数の長期化意欲
日本政策投資銀行の調査によると、訪日旅行時の平均宿泊日数は伸び傾向にあり、中でも欧米豪からの訪日客は10泊以上の滞在が予想されています。
宿泊日数の長期化は世界的なトレンドでもあります。長期滞在に適した宿泊施設を多く掲載する大手予約プラットフォームのAirbnb Inc.は、コロナ禍で低迷した大手グローバルプラットフォームの中で最も早い回復を遂げました。同社が公表しているデータによると、2022年第一四半期における1週間以上の長期滞在の予約数は、2019年の第一四半期比2倍に増加し、全予約の半分が1週間以上の長期滞在の予約となりました。
この背景には2020年を境に数多くのグローバル企業(特に欧米のITベンチャー並びに大手IT企業)がリモートワークを半永久的に解禁した事があげられます。その結果、出張と旅行を融合させた長期滞在トラベラーが増加し、キッチンや家具家電が完備されている宿泊施設への需要が増加しました。国際労働機関(ILO)は、将来的に約6億人(世界の労働人口の6分の1)がリモートワークを行うと算出しております。
訪日高収入者層の増加
日本政策投資銀行の調査によると、高収入者層(年収約1,200万円以上)の訪日客は増加傾向にあり、特に2021年の欧米豪からの訪日客は約23%(5分の1以上)が高収入者層となりました。同行の分析によると、高収入者層の約58%(過半数)の日本での一泊当たりの宿泊費は200米ドル以上(約28,000円)とされています。ホテル業界において客室単価が2万円を越える宿泊施設は、アップスケール(高価格帯)カテゴリーに当てはまります。
アップスケールカテゴリーでの長期滞在施設の不足
年間約300万人の訪日高収入者層が、アップスケールカテゴリー以上の宿泊施設に滞在を希望している中、日本国内では長期滞在に適した当カテゴリーの宿泊施設が供給不足とみられます。例えば東京都内における高価格帯かつ、キッチンやランドリーを各部屋に備えているアパートメントホテルとブランドサービスアパートの総部屋数は約4,000室とされています。これは約18万部屋ある東京都内の宿泊施設の約2.2%のみとなります。
- SECTION Lの実績
快適な長期滞在ができるよう、全部屋にキッチンやランドリーを備えたホテル、SECTION L Ginza Eastを2020年7月に開業し、2021年3月にはSECTION L Asakusa Eastを開業しました。以来都内の宿泊マーケットを大きく上回る稼働率と客室単価を維持しています。
不動産投資家への価値提供
近年海外の機関投資家から人気を集める日本の賃貸住宅不動産の期待利回りは、NOI(純利益)ベースで3~4%となっています。一方SECTION Lが運営を手掛ける施設のNOI利回りは、宿泊市場が低迷した2021年でも、賃貸住宅並びにホテルを越える約5~7%を達成しました。
- SECTION Lブランドの戦略
GOP率(営業利益率)はホテル業界でも最も重視されている因数の一つです。業界的に最も高いと言われてきた宿泊特化型ホテル(ビジネスホテル等)のGOP率は約50%とされていますが、SECTION Lが運営する施設のGOP率は70%以上を達成しています。その要因としては、下記ブランドの強みを活かした高単価顧客の獲得(=売上げの増加)と、自社開発のソフトウェアを用いた運営の効率化(=費用の圧縮)を同時に追及したホテル経営を実現していることがあげられます。
1. 考え抜かれたデザイン
北欧の高級家具ブランドや日本のローカルアーティスト等と協業し、居心地が良くも唯一無二の空間作りに徹底しています。SECTION Lが宿泊客に行っているアンケートでは、4割以上の回答者がSECTION Lを選んだ上位3つの理由として「デザイン性」と答えています。
2. 運営効率重視だけではなく、宿泊客に価値を提供するテクノロジー
宿泊業界では従来の運営効率化ソフトウェアはコスト削減を目的とし、顧客体験(UX/UI)が疎かになっているケースが多くみられます。そこで、UX/UIに重きをおいたソフトウェアの開発と、宿泊者にとって喜ばれるシティーガイドやコミュニティ機能を実装しました。その結果リピーター(多くが直予約客)の獲得に成功しています。
3. グローバルスタンダードのサービス
SECTION Lは多様な宿泊客に高水準のサービスを提供する為に、多様なバックグラウンドや世界的にも一流とされているホテルブランドでの経験を持つ運営チームを形成しています。また、長期滞在ならではの不安やストレスが起きにくいような顧客体験とプロダクト設計を行うことで、主要の予約プラットフォーム(OTA)において、アワードの受賞やトップクラスのレビューを維持しています。
- 各投資家からのコメント
株式会社中島董商店(株式会社董花 親会社) 代表取締役社長 中島 周
「この度、SECTION Lの資金調達に参加し、将来協調して成長発展することを楽しみにしております。弊社はキユーピー(株)、アヲハタ(株)の創業会社として、幅広くお客様の家庭及び外食場面での食体験の価値を創り、食文化とホスピタリティーの発展に寄与する企業です。今後SECTION Lと協働する機会を楽しみにしています。」
株式会社董花 代表取締役社長 高橋 篤子
「社会での価値観が目まぐるしく変わっていく中で、弊社の中核事業である不動産賃貸事業も、付加価値をいかに付与して、使用していただく方に「感動」をお届けできるのかが課題になってきていると思います。そのような環境の中、ホテル運営の経験豊富な、情熱のある経営メンバーの方々との事業に関わらせていただける機会をいただき、大変光栄です。実務の面でも、具体的な案件で積極的に連携させていただきたいと思っており、今後の展開を非常に楽しみにしております。」
株式会社DGインキュベーション 取締役 CIO 前川 雅彦
「コロナ禍でも高いパフォーマンスを維持してきた、プロフェッショナルが集うユニークなチームの「ホスピタリティ溢れるコミュニティを創造する」という理念に共感し、今回、当社が運営するOpen Network Lab・ESG1号投資事業有限責任組合(通称:Earthshotファンド) より出資いたしました。持続可能な社会の実現を目指し、同社が運営するホテルでは 使い捨てアメニティの削減や、ダイバーシティ&インクルージョンの観点を持った組織づくりにも積極的に 取り組んでおります。今後のインバウンド需要の回復と合わせて、サスティナブルな SECTION Lでの体験が国内外問わず、より多くの人々に届けられることを期待しております。」
株式会社プロフィッツ代表取締役 田中 慎一郎
「当社は「不動産投資 × 社会的利便性」を両立させ、どちらのリターンも創出する不動産投資会社です。SECTION Lの「フレキシブルな発想と実行力・ボーダレスで広い事業視野・またそれを形成するDiversifyされたチーム」に大きな期待とワクワク感を感じております。相互の理念に共に共感し、新たなAlternative Livingの領域およびサステナブルな投資を共に創出できる事に喜びを感じております。」
- 今後の展開
アセットライトなビジネスモデルの継続
日本国内の宿泊施設オペレーターやホテルブランドは所有直営方式もしくは賃貸借直営方式(マスターリース方式)での展開が主流とされてきました。これらの運営方式は固定費が重く、リスクが高いビジネスモデルでもあり、特に宿泊市場が低迷したコロナ禍では多くのホテルが閉業を余儀なくされました。SECTION Lは本社における運営費用と賃料や初期投資が発生しない、アセットライトな運営委託方式(MC方式)を採用しております。今後も運営委託方式で、国内外の不動産機関投資家及びデベロッパーに価値提供していきながら、事業拡大を行って参ります。
テクノロジーの洗練化
ホテル業界はアナログな業務が多く、人件費が最大の費用項目とされています。エンジニアリングチーム拡大に伴い、省人化ソリューション・ソフト及びゲストコミュニティ・プラットフォーム「InterSection」をバージョンアップして参ります。将来的にはテクノロジーのみをサービスとして不動産オーナーや、オペレーターに提供することも視野に入れています。
ダイバーシティー経営の徹底
多様性を企業理念に掲げるスタートアップとして、海外からの人材を積極的に採用しております。今回の資金調達を経て、不動産・事業開発チームと、エンジニアリングチームの拡大を行いました。現在SECTION Lのチームは10カ国の人材と50:50の男女比率で構成されております。
開業予定の施設
東京都内で2022年第4四半期〜2023年第1四半期にかけて、中央区3拠点、港区1拠点、文京区1拠点、台東区1拠点にて SECTION L ブランドの宿泊施設の開業を予定しています。直近数年間は、国内外の不動産機関投資家及びデベロッパーと協業し、東京都内での拡大に注力します。ブランドアセットを構築し、将来的には海外でMade in Japanのホテルブランドとしての展開を目指しています。
- 株式会社セクションLについて
URL: https://www.section-l.co
【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
担当者:北川旭洋(Co-Founder / 取締役)
連絡先: development@section-l.co
【出所】
Airbnb Inc. https://news.airbnb.com/airbnb-2022-summer-release-highlights/
日本政策投資銀行 https://www.dbj.jp/upload/investigate/docs/2a5c75afe31a119370edd1022e67ee43.pdf
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