基礎医学医療研究に向けた助成金 「第10回 生体の科学賞」の授賞式が3月5日(木)に開催。授賞者は深水昭吉氏(筑波大学 生存ダイナミクス研究センター 特命教授)

公益財団法人金原一郎記念医学医療振興財団(代表理事:澁谷正史)は2026年2月17日(火)、第10回 生体の科学賞を筑波大学 生命ダイナミクス研究センターの深水昭吉氏に授与することを決定しました。授賞金額は500万円。授賞テーマは「アルギニンメチル化酵素による細胞内外連結型恒常性維持の新機構(A Novel Mechanism of Intracellular–Extracellular Coupled Homeostatic Regulation Mediated by Arginine Methyltransferases)」です。
生体の科学賞とは
生体の科学賞は、1949年創刊の雑誌「生体の科学」の理念に基づき、基礎医学医療研究領域における「独自性」と「発展性」のあるテーマに対し、毎年1件の対象研究に500万円を助成しています。長年に渡り研究に専念される研究者を応援し、持続的で、卓越した、日本の基礎医学・生命科学の発展を目指し、助成を行っています。若手研究者への研究費助成が増加し、中堅以降のキャリアを持つ研究者の助成金取得が困難さを増している昨今で、生体の科学賞は年々その価値を高めています。
受賞者紹介
深水 昭吉(ふかみず あきよし)1959年9月5日生
所属 筑波大学 生存ダイナミクス研究センター
役職 特命教授
授賞理由(選考委員著)
神経体液性因子による心血管系の調節は、生体の恒常性維持において中枢的な役割を担っています。深水昭吉博士は、その代表的因子であり、高血圧や心不全をはじめとする多様な疾患の病態形成に深く関与するレニン・アンジオテンシン系に着目し、マウス遺伝学の黎明期より高血圧ならびに妊娠高血圧症候群のモデルマウスを開発することで、心血管内分泌系の病態解明と治療戦略の基盤構築に多大な貢献を果たしてこられました。さらに、一酸化窒素合成酵素を阻害し血管収縮を惹起する炎症性メチルアルギニンの生成経路を解明し、その中核を成すアルギニンメチル化酵素依存的な心血管系および神経系の恒常性制御機構を明らかにされました。本研究は、博士が近年見出された、本酵素の新たな分子動態を端緒として、生体恒常性に関わる新規機構の解明と心血管治療への応用展開を目指すものです。深水博士が今後も基礎から応用に至る本領域の研究を通じて、我が国の医学生命科学の発展に寄与されることを祈念し、第10回「生体の科学賞」を授与いたします。
研究目的
生体の恒常性は、個々の細胞内反応のみならず、細胞間・組織間、さらには全身レベルでの情報伝達が精緻に統合されることで維持されている。神経系、免疫系、代謝系、循環系といった異なる生体システムは相互に影響し合い、外的環境や内的ストレスに応答しながら動的な均衡状態を保っている。このような多階層的制御の破綻は、慢性炎症や加齢関連疾患の発症につながることが知られている。本研究は、タンパク質修飾という細胞内反応が、どのようにして細胞外・全身レベルの恒常性制御へと翻訳されるのか、その分子基盤を明らかにすることを目的とする。
これまで、転写制御やシグナル伝達を担う翻訳後修飾酵素は、主として細胞内で機能する因子として理解されてきた。しかし近年、細胞ストレスや損傷に伴い、修飾タンパク質の分解産物などの細胞内分子が細胞外へ放出され、免疫応答や組織恒常性に影響を及ぼす現象が注目されている。これらの分子は、細胞障害の指標であると同時に、周囲の細胞へ情報を伝えるシグナルとして機能する可能性が示されており、恒常性制御の理解は新たな段階を迎えている。
アルギニンメチル化酵素(PRMT)は、タンパク質中のアルギニン残基をメチル化することで、遺伝子発現制御、シグナル伝達、細胞分化や老化など多様な生命現象に関与する酵素ファミリーである。申請者らはこれまで、PRMTを中心としたアルギニンメチル化ネットワークが、心血管系や神経系の恒常性維持、炎症応答や寿命制御に深く関与することを明らかにしてきた。特に、アルギニンメチル化によって生じる代謝産物が全身循環を介して生理機能に影響を及ぼすという知見は、細胞内修飾と個体レベルの制御を結びつける重要な概念を提示している。
一方で、これらの研究は主として「細胞内で完結する修飾反応」という枠組みで理解されてきた。本研究は、この従来の理解を超え、アルギニンメチル化を細胞内外を貫く恒常性制御機構として捉え直す点に特徴がある。近年、PRMT1の活性変化が加齢性炎症応答や組織恒常性と密接に連動し、細胞外環境に影響を及ぼし得る可能性が示唆されている。これらの知見は、アルギニンメチル化が細胞内と細胞外を橋渡しする恒常性制御因子として機能するという、新しい概念「二階層性のプロテオスタシス」を提示するものである。
本研究では、PRMT1を中心として、細胞がストレスや環境変化に直面した際に生じる細胞内反応の変化が、どのように細胞外応答や細胞間相互作用へと連結されるのかを明らかにする。さらに、免疫細胞や組織恒常性を担う細胞群への影響、炎症応答や組織リモデリングとの関係を解析することで、恒常性破綻が慢性炎症や加齢性疾患へと進展する分子基盤の理解を深める。細胞内分子反応と全身応答を結ぶ制御原理を明らかにすることは、生命システムを統合的に理解する上で重要な意義を有する。本研究を通じて、細胞内外を結ぶ新しい恒常性維持機構の概念を提示し、「生体の科学」における生命システム理解の深化に貢献することを目指す。
生体の科学賞 授賞式
第10回生体の科学賞 授賞式は2026年3月5日(木)に株式会社医学書院(所在地:東京都文京区本郷1-28-23)にて開催されます。ご参加希望の方は、下記財団事務局までご連絡ください。
近年の生体の科学賞 授賞者(所属先、役職は授賞当時)
2024年 第8回
氏名 月田 早智子(つきた さちこ)
所属 帝京大学 先端総合研究機構
役職 教授
賞金 500万円
研究テーマ 生体機能システム構築基盤としての上皮バリア研究の新展開
2025年 第9回
氏名 中尾 光善(なかお みつよし)
所属 熊本大学発生医学研究所
役職 教授
賞金 500万円
研究テーマ エピゲノム機構による細胞制御と病態の分子基盤
公益財団法人金原一郎記念医学医療振興財団について
・所在地:東京都文京区本郷1-28-24 IS弓町ビル10階
・代表者:澁谷正史(代表理事)
・創立:1986年12月2日
・主な活動内容:基礎医学医療に関する研究に対する助成、基礎医学医療に関する学会や研究会の海外派遣に対する助成、基礎医学医療に関する研究を行う外国人留学生に対する助成、基礎医学医療に関する研究成果の出版に対する助成 等
・公式サイト:https://www.kanehara-zaidan.or.jp/
・問い合わせ:info@kanehara-zaidan.or.jp または 03-3815-7801
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