【クリエイター実態調査レポート②】約半数がインボイス未登録・判断保留。契約書締結率は36.6%まで低下。~数字から見る、クリエイターの「取引環境の変化」と課題~
〜協同組合日本イラストレーション協会(JILLA)、「2024年度クリエイター実態調査」第2弾を発表〜

協同組合日本イラストレーション協会(JILLA)は、2014年から隔年で実施している「クリエイター実態調査アンケート」が調査開始から10年の節目を迎えたことから、2025年に2014年から2024年までの調査結果を比較・分析し、この10年間でクリエイターを取り巻く環境がどのように変化したのかを取りまとめた【調査レポート①】を2026年7月24日に発表した。
今回発表する【調査レポート②】では、「クリエイターの経理・事務・福利厚生」および「仕事環境」に焦点を当て、制度変更がクリエイターに与えた影響や、働き方・意識の変化を分析した。
2024年11月に本格施行された「フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」や、2023年10月に導入されたインボイス制度など、フリーランスを取り巻く制度は大きく変化したが、本調査では約半数のクリエイターがインボイス未登録または判断保留であることや、「常に契約書を交わす」と回答した割合が36.6%まで低下していることが明らかになった。一方で、今後身に付けたいスキルとして「営業力」が制作スキルを上回るなど、クリエイターの関心にも変化が見られる。また、自由回答では画像生成AIへの危機感や無断学習への懸念が最も多く寄せられ、クリエイターを取り巻く課題が多様化している実態が浮き彫りとなった。
2024調査で見出された「5つの主要ポイント」
1.契約書締結率が大幅に低下:受注時に「常に契約書を交わす」と回答した割合は36.6%となり、2022年調査(55.8%)から大きく減少。「たまに交わす」が47.1%で最多となり、「交わさない」(16.3%)も増加している。
2.インボイス登録率は49.9%:「登録するつもりはない」(33.6%)、「登録予定」(16.5%)を合わせると、約半数のクリエイターが未登録または判断保留の状態にあることが分かった。
3.制作スキル以上に「営業力」への関心が高まる:今後身に付けたいスキルでは、「営業力(交渉・マーケティング)」が379件、「営業力(告知・宣伝・SNS)」が363件となり、制作技術以上に仕事を獲得し続ける力への関心が高まっている。
4.フリーランス法の認知度は73.5%:2024年11月施行のフリーランス法について、「知っている」は73.5%と高い一方、「知らない」は26.5%となり、さらなる周知の必要性も見えてきた。
5.画像生成AIへの危機感が自由回答で最多:自由回答では、「無断学習への懸念」や「価格交渉力のさらなる低下」を危惧する声が多く寄せられ、画像生成AIがクリエイターの大きな関心事となっていることが分かった。
■ 調査結果の詳細
「クリエイター実態調査」グラフで見るクリエイターの現実
1. 事務・経理・法律:インボイスへの戸惑いと、契約書締結の低下
-
契約書締結の現状:受注時に契約書を「常に交わす」と回答した割合は、2022年調査の55.8%から2024年調査では36.6%まで大きく低下。「たまに交わす」が47.1%で最多となり、「交わさない(16.3%)」も増加傾向に。フリーランスを取り巻く法整備が進む一方で、現場における取引内容の明文化(書面化)が十分に定着していない実態が浮き彫りになった。2024年11月に施行されたフリーランス法を契機に、適正な取引慣行の定着が期待される。

-
インボイス登録状況:インボイス制度への対応について、「登録した」は49.9%と約半数にとどまった。「登録するつもりはない」(33.6%)と「登録する予定」(16.5%)を合わせると、約5割のクリエイターが依然として未登録または判断保留のステータスにあることがわかった。

フリーランス法の認知度は73.5%:調査開始の1ヶ月前(2024年11月)に施行されたフリーランス法について、「知っている」は73.5%と高い水準を示した一方、「知らない」という回答も26.5%存在し、4人に1人以上は制度を認知していない結果となり、取引適正化に向けた制度整備が進む一方、現場では取引条件や業務内容を明文化する慣行が十分に定着していないことがうかがえる。制度の周知にとどまらず、取引内容の明示方法や相談先を含めた実践的な支援が求められる。

2. スキル・働き方:営業力への関心が高く、制度改正を背景に法律知識への関心も再び上昇。副業は約半数に。デジタルデバイスはiPad Proが増加
-
今後身に付けたいスキル:今後身に付けたいスキルでは、「営業力(交渉・マーケティング)」(379件)が最も多く、「営業力(告知・宣伝・SNS)」(363件)が続いた。営業・販路開拓に関するスキルへの関心が依然として高いことがうかがえる。
一方、「法律知識(下請法・著作権法等)」は、2014年調査の13.6%から2022年調査では4.4%まで低下したものの、2024年調査では6.9%へ上昇した。2023年のインボイス制度導入や2024年のフリーランス法施行など、事業環境や制度の変化を背景に、法務に関する知識への関心が再び高まっていることがうかがえる。
この10年間を通して見ると、クリエイターが身に付けたいと考えるスキルは、営業・発信力に加え、制度や市場環境の変化に応じた知識へと関心が広がっており、事業者として継続的に学び続けることの重要性が高まっていることが示唆される。

-
副業の理由:副業をしている理由(複数回答)では、「本業の収入だけでは生活できない」が20.9%で最も多く、「スキマ時間を生かせるから」が18.5%、「本業のスキルを活かせるから」が17.1%と続いた。副業は収入補完だけでなく、専門性を生かした働き方としても定着しつつある。

-
仕事の場所とドローイング環境:仕事の場所については、2014年の調査開始以来、「自宅事務所」が高い割合を占めており、2024年度調査でも80.5%と、在宅を拠点とする働き方が定着している。またデジタルで作画を行うクリエイターは全体の62.5%で、その使用デバイスは従来のWACOM製ペンタブレットなどに加え、「iPad Pro」の利用が30.1%まで増加した。制作環境のモバイル化・多様化も進んでいる。

3. 福利厚生と不安:「健康」「休暇」は改善傾向も、尽きない将来の不安
-
休暇と健康診断の改善:「十分に休暇が取れている」と回答した割合は34.3%となり、前回の2022年調査(16.8%)から大きく回復(2020年調査の31.6%と同水準)。健康診断を「毎年受けている」割合も46.6%に増加(2022年は29.3%)しており、休暇の確保や健康管理に対する意識が高まっていることがうかがえる。

-
根強い不安と業界団体への期待:仕事や生活における不安では、「いつ収入が減るか不安」(17.0%)、「何歳まで働けるか不安」(16.6%)が、2014年調査から一貫して上位を占めている。また、「単価が変わらない・安い」(11.3%)という声も多く、継続的な収入の確保や適正な報酬に対する不安が依然として根強いことが明らかとなった。

-
業界団体に期待すること:業界団体に期待することでは「地位向上に向けた提言活動」や「業務・トラブル相談窓口」など、実務的な支援を求める声が多く寄せられ、クリエイターを支えるセーフティネットへの期待の高さが明らかとなった。

4. 【自由回答】生成AIへの危機感が顕在化 国への要望はインボイス制度の見直しが最多
-
自由回答で最も多く寄せられたテーマは「生成AI」: 最も多かったのは、生成AIによる無断学習と著作権侵害への懸念だった。また、「クリエイターの社会的な立場の弱さ」や「単価の下落」といった従来からの課題に加え、AIの普及による価格競争の激化や買い叩き(価格交渉力の低下)を危惧する声も目立った。一方で、「AIを制作ツールとして活用し、新たな働き方を模索したい」といった前向きな意見も見られ、生成AIに対する受け止め方は一様ではないことがうかがえる。
-
国への要望:国に対しては、インボイス制度の廃止・見直しを求める声が最も多く寄せられたほか、健康保険や厚生年金などフリーランスの社会保障の充実を求める意見も多く見られた。制度改正への対応に加え、個人事業主として働くクリエイターの生活基盤を支える制度への期待の高さがうかがえる。
調査から見えてきたこと
本調査からは、この10年間でクリエイターを取り巻く仕事や働き方、経営環境が大きく変化していることが明らかとなった。
【調査レポート①】では、従来の出版社や広告代理店を中心とした受注構造に加え、SNSやデジタルプラットフォームを活用した一般企業や個人との直接取引が広がり、市場の多様化が進んでいることが明らかになった。
【調査レポート②】では、主たるクリエイティブ業務に加え、インボイス制度やフリーランス法への対応、副業への取り組みなど、フリーランスとして事業を継続するために求められる知識や対応が増え、経営環境が一層複雑化している実態が浮き彫りとなった。
また、制作スキルだけでなく営業力や情報発信力が重視される一方、契約書締結率の低下や将来への不安、画像生成AIへの危機感など、新たな課題も明らかとなった。
JILLAでは今後も継続的な調査を通じて、クリエイターを取り巻く環境変化を把握するとともに、実態に基づく情報発信と課題の可視化に取り組み、クリエイターが安心して創作活動を続けられる環境づくりに貢献していく。
なお、次回のクリエイター実態調査(回答募集)は、2026年12月実施の予定である。
■ 調査概要
レポート名:2024年度クリエイター実態調査結果報告書(レポート②)
実施主体:協同組合日本イラストレーション協会(JILLA)
調査対象:クリエイティブ関連に携わる国内の小規模事業者(個人・法人)
調査期間:2024年度クリエイター実態調査アンケート2014年〜2024年(隔年・継続調査)
有効回答数:2024年調査では、1,090名(男性343名/女性704名/答えたくない43名)
■ 本件に関するお問い合わせ
[団体名] 協同組合日本イラストレーション協会(JILLA)
[連絡先] https://jilla.or.jp/contact
[担当部署] 調査研究事業
報告書のお取り寄せについて
■ PDF版 (無料)
内容:本調査の全文(46ページ)
「実態調査アンケート報告書 PDF版 希望」と書いて、下記URLよりお申し込みください。
https://jilla.or.jp/contact
■ 印刷版 価格:17,600円(16,000円+税10%)
内容:本調査の全文|有識者コメント|付録:画像生成AIについての意識調査の全文|60ページ
「実態調査アンケート報告書 購入希望」と書いて、下記URLよりお申し込みください。
https://jilla.or.jp/contact
すべての画像
