環境配慮型農業の実現と⾼温下での安定⽣産、地産地消野菜による地域貢献及び地域活性化をめざし、微⽣物農業資材を⽤いた⼤阪産(もん)の減肥料栽培の共同研究を開始
1.背景と⽬的
かつての⽇本の農地では、植物の⽣育に不可⽋であるリン酸が少なかったため、国内の畑地ではリン酸肥料が多く⽤いられてきました。しかし、リン酸肥料を投⼊し続けたため、現在ではリン酸が過剰に蓄積しているうえに、⽔系の富栄養化などを引き起こしています。
また⼀⽅で、このリン酸肥料の原料であるリン鉱⽯は、国内ではほぼ輸⼊に頼っているため、価格が国際動向の影響を受けやすく、2022 年に⾼騰しました。そればかりか、リン鉱⽯の加⼯と輸送には多くの化⽯燃料を使⽤するため、気候変動への影響が懸念されます。昨今の気候変動による温暖化は各地で農作物の品質低下を招き、農家経営を圧迫しかねない深刻な状況となっています。
これらの問題の対応策の⼀つとして、アーバスキュラー菌根菌(※1)を利⽤したリン酸減肥技術が古くから注⽬されています。しかし、アーバスキュラー菌根菌を圃場で複数年に渡って施⽤した例は少ないため、多くの農家は経営上のリスクを考慮して、従来の栽培⽅法を切り替えにくいという課題がありました。
この課題を解決するため、ナガセケムテックスは2023 年度に、⼤阪環農⽔研に委託して圃場栽培研究をスタートしました。
2023 年度の圃場試験ではナガセケムテックスが開発を進めている純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材(※2)を適⽤した難波葱(※3)を⼤阪環農⽔研の試験圃場で栽培し、慣⾏栽培と⽐較しました。その結果、リン酸施肥を低減しても収量は低下しませんでした。
また、本研究では試験栽培中、例年になく気温が⾼い状況が続きましたが、こうした⾼温下の環境でも平年の慣⾏栽培と⽐較して⼀定の増収効果を得ることができました。
そこで、2024 年度からは、先⾏の委託研究の再現性並びに年次変動の確認、実証を⾏うため、研究形態を単年度の受委託から、両者による共同研究へと切り替えて、継続的、本格的に進めていくこととしました。
2. 共同研究内容
この共同研究では、両者の研究担当者が知⾒を持ち寄り、純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材を施⽤した難波葱を、露地の⾼温下で、リン酸施肥を段階的に減らした圃場に定植し、収量・品質を調査します。あわせて、⼤阪環農⽔研が栽培前後の⼟壌中のリン酸を含む各栄養素を測定、ナガセケムテックスがアーバスキュラー菌根菌の定着を評価することで、難波葱栽培における純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材の有⽤性と⼟壌中の養分の蓄積・減少を評価していきます。
そして、これらのデータを複数年に渡って取得した後に慣⾏栽培と⽐較することで、リン酸施肥を何割削減できるか、そして投⼊した資材の効果が何年継続するか(再現性、年次変動)を評価していきます。
こうした研究によって、純粋培養アーバスキュラー菌根菌を利⽤した減肥栽培による環境配慮型農業を、⾼温下において安定⽣産を実現する栽培⽅法として構築・確⽴していきます。
さらに、この栽培技術を難波葱という⼤阪の特産品に適応することで、地産地消を促進して、地域貢献及び地域活性化をめざしていきます。
用語の解説
※1 アーバスキュラー菌根菌
アーバスキュラー菌根菌とは、⼟壌微⽣物(真菌)で植物の根と共⽣することで、植物側に主に無機栄養素(特にリン)と⽔分を供給し、⽣育を促進します。理想的な条件では植物の根が吸収するリン酸よりも20 倍以上のリン酸を吸収して植物に与えます。
※2 純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材:
通常、アーバスキュラー菌根菌は植物との共⽣関係でのみ増殖するために単独で増殖することが難しい状況でした。そのため、現在⼟壌改良資材として市販されている多くのアーバスキュラー菌根菌資材は植物との共⽣培養で⽣産されているものが⼀般的であり、⽣産効率が良くありませんでした。ナガセケムテックスはアーバスキュラー菌根菌の純粋培養技術により⼤量に安価に製造する開発を進めています。
※3 難波葱
2017 年3 ⽉、⼤阪府に「なにわの伝統野菜」として認証された野菜。強い⽢みと⾹りとぬめりが特徴。
※4 ⼤阪産(もん)
⼤阪府内で⽣産された農林⽔産物とそれらを使った加⼯品のこと。ロゴマークを使⽤する際は、⼤阪府への申請が必要。
3.本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
ナガセケムテックス:
(報道に関して)経営企画本部 サステナビリティ推進室 TEL:0791-63-4902
(研究に関して)機能樹脂事業部 未来PJ 室 TEL:0791-63-2772
⼤阪環農⽔研:
(報道に関して)企画部 企画グループ TEL:072-979-7070
(研究に関して)⾷と農の研究部 園芸グループ TEL:072-979-7036
※お問い合わせの際は、電話番号をお確かめのうえ、お間違いのないようお願いいたします。
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