量子関連特許、日本が世界第3位にランクイン
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量子技術は約80%の企業で主要な企業活動となっていない
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米国および欧州特許条約(EPC)加盟国全体に次いで、日本は量子関連特許の数で世界第3位にランクイン。2005年から2024年にかけて1,519件の国際パテントファミリー(IPF)を出願済で、国別のIPF出願件数では第2位
【ミュンヘン/パリ、2025年12月17日】
量子技術は、防衛からヘルスケアに至るまで幅広い応用分野を持ち、計算、通信、そして世界の測定方法を変革する可能性を秘めています。世界の量子市場は2035年までに約930億ユーロに達すると予測されています[1]。欧州特許庁(EPO)と経済協力開発機構(OECD)が本日発表した新しい調査によると、量子技術の状況は、企業の新規参入の増加、投資の増大、イノベーションの力強い成長に伴い急速に拡大していますが、技術の規模拡大と商業化に関する課題に直面しています。
国連の「国際量子科学技術年(IYQ)」にあたる2025年に発表された本報告書は、EPO特許・技術観測所の隔年作業計画の一部で、特許出願活動、投資、スキル、サプライチェーン、政策にわたる量子エコシステムの包括的な分析を提供しています。
EPO長官のアントニオ・カンピーノスは次のように述べています。「量子技術は計り知れない可能性を秘めていますが、依然として開発の初期段階にあります。この調査とドラギ報告書が強調しているように、EUは米国のような主要国と比較した場合、量子への投資を増やす余地があります。基礎研究を商業化するためには、民間部門からの資金提供が必要であり、各国政府はこれを優先事項とすべきです。」
この調査によると、量子分野における国際パテントファミリー(IPF [同一の発明について複数の国で出願された一連の特許出願])の数は、この10年で5倍に増加しました。報告書は、主要な3つのサブセクターとして、量子通信、量子コンピューティング(シミュレーションを含む)、量子センシングを特定しています。量子通信は2022年まで最大のIPF数を占めていました。しかし、量子コンピューティングはこの期間中にIPFの最も大きな成長を見せており、2005年以来ほぼ60倍に拡大し、量子エコシステムにおいて最大の分野になる見込みです。
全世界で、イノベーターは2005年から2024年の間に合計で約9,740件の量子関連IPFを生み出しました。米国が首位で、欧州、日本、中国、そして韓国と続いています。欧州における量子特許出願のトップ3ヶ国は、ドイツ、英国、フランスでした。報告書で事例研究として紹介されているフランスのC12やPASQALといったダイナミックなスタートアップが出現している欧州ですが、多くは資金調達と規模拡大において課題に直面しています。
現在の量子エコシステムは4,500社以上の企業で構成されており、量子技術に特化しているコア企業は1,000社未満(20%弱)です。コア量子企業は通常スタートアップであり、初期段階の投資と公的資金に大きく依存しています。ノンコア企業(80%)は量子関連特許の大部分と雇用創出を占めており、商業化に最も適しています。
欧州は、コア量子企業の世界で最も密集したクラスターの1つを擁しており、英国(量子企業の46%がコア企業)、オランダ(38%)、フランス(30%)と続いています。これは、コア量子企業の割合が低く、巨大テクノロジー企業の存在感がより大きい米国(20%)とは対照的です。
日本は、米国および欧州特許条約(EPC)加盟国全体に次いで、量子関連特許の数で世界第3位となっています。 日本は2005年から2024年の間に1,519件の国際パテントファミリー(IPF)を保有しており、国別のIPF出願件数では第2位です。これらの特許の大多数は量子通信(826件)であり、次いで量子コンピューティング(454件)、量子センシング(235件)となっています。日本は2020年から2024年における世界のIPFの13%を占めていますが、この割合は2015年から2019年の16%から減少しています。
さらに、2005年から2024年の期間において、量子通信、量子コンピューティング、および量子センシングの各分野における世界の出願件数上位20社・機関の中には、多くの日本企業・機関が名を連ねています。具体的には、東芝、NEC、NTT、三菱、日立、富士通、ソニー(ソニーグループ)、セイコーエプソン、リコー、日本航空電子工業(JAE)、京都大学、そして東京工業大学が含まれています(詳細は付録の図1を参照)。
東芝は、2005年から2024年の量子関連IPFs(国際パテントファミリー)の出願件数において、IBM、LG、Intel、Microsoftと並び、世界のトップ5出願者の一つとなりました。IQM FinlandやRobert Boschのような欧州企業も、それぞれコンピューティングおよびセンシングの分野でトップ出願に名を連ねています。量子IPFにおけるトップ5の大学はすべて米国からであり、MITとハーバード大学が先行しています。CNRSは、トップ20出願者の中に登場した唯一の欧州の公的機関です。
本調査によると、量子イノベーションにおいて公的研究機関、スタートアップ、大企業間の連携がますます重要になっています。この分野はまた、重要部品のグローバルサプライチェーンにおける集中の増大と依存性の高まりを含む課題に直面しています。量子企業はまた、高度に複雑な技術的スキルの供給を確保するとともに、商業化の取り組みを支援するために必要な、よりソフトなスキルの統合を促進する必要があるとしています。
[1] McKinsey & Company, Quantum Technology Monitor, 2025
詳細情報
・ EPOディープテックファインダー(DTF)
・ EPOとOECDがパリで主催するハイブリッドイベント:Scaling up quantum innovation
欧州特許庁(EPO)について
欧州特許庁(EPO)は、6,300人のスタッフを擁する欧州最大級の公的機関です。ミュンヘンに本部を置き、ベルリン、ブリュッセル、ハーグ、ウィーンに事務所を構えるEPOは、欧州における特許協力の強化を目的として設立されました。EPOの集中化された特許付与手続きにより、発明者は最大46カ国で質の高い特許保護を受けることができ、約7億人の市場をカバーしています。EPOはまた、特許情報と特許検索の世界的権威でもあります。
OECDについて
経済協力開発機構(OECD)は、「より良い生活のためのより良い政策を構築する」ことを目指す国際機関です。60年以上の経験と洞察に基づき、平等と福祉に裏打ちされた、繁栄と機会を育む政策を形成しています。OECDは、政策立案者、利害関係者、市民と緊密に連携し、証拠に基づいた国際標準を確立し、社会的、経済的、環境的課題に対する解決策を見出すことに取り組んでいます。経済実績の向上や気候変動対策の強化から、教育の強化や国際的な脱税対策まで、OECDは公共政策におけるデータ、分析、ベストプラクティスのための独自のフォーラムおよび知識ハブとして機能しています。その核となる目的は、国際標準を設定し、その実施を支援し、各国がより強く、より公平で、よりクリーンな社会への道を築くのを助けることです。
付録;図1

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