第2回 「生物多様性モニタリング」を実施
生物多様性の保全からネイチャーポジティブへ
ユアサ木材株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:福住 勉、以下当社)は、北海道標茶町(しべちゃちょう)にある自社林において8月8日(火)、第2回 「生物多様性※1モニタリング」を実施致しました。
このモニタリングは、当社が2023年4月3日付けで始動した環境省主催の「自然共生サイト」認定取得に向けたプロジェクトの一環で行われ、自社林における生態系またはそれを構成する生物の現状把握を主目的として、参加者は当社他、標茶町役場、標茶町森林組合、北海道立総合研究機構林業試験場(以下、関係団体)など計6名で実施されました。
※1「生物多様性」とは、生き物たちの豊かな個性とつながりのことであり、1992年の生物多様性条約により(1)生態系の多様性、(2)種の多様性、(3)遺伝子の多様性と定義されております。
第1回 「自然共生サイト認定取得に向けた情報交換会議」は4月28日(金)に標茶町役場にて行われ、関係団体と、生物多様性モニタリング実施に向けた情報交換や「自然共生サイト」認定の意義などを協議・確認するとともに、森林の現地視察を行なっております。
標茶町社有林の概要
森林立地は湿地に囲まれた針広混交林であり、湿地にはハンノキ・ヤチダモといった高木種と、ホザキシモツケ※2(写真1)・カラコギカエデといった低木種が優占し、二次林にはシラカンバ・ミズナラが、人工林としてトドマツが植栽されております。その他在来樹種として15種以上の植生が確認されました。
写真1:ホザキシモツケ
※2 バラ科の落葉低木である。北海道では道東地区に分布し、本州でも栃木県奥日光や長野県霧ヶ峰などで分布が見られるが非常に稀である。1997年の環境省レッドリストには絶滅危惧2類に指定されていた(現在は解除)。
標茶町社有林の特徴:絶滅のおそれがある昆虫が生息している可能性が高い湿地
社有林は、森林経営計画に基づいた適切な森林管理によって豊富な生物多様性が守られ、特に湿地部分に成林しているハンノキ林床には、広くホザキシモツケの群生が認められました。ホザキシモツケが唯一の寄主植物であり近隣で生息が確認されているシベチャキリガ※3が生息する可能性が高く(写真2)、シベチャキリガは北海道レッドリストで準絶滅危惧種に指定されており、絶滅が危惧されております。
また、林縁にはナガボノワレモコウが広く生育しており、ナガボノワレモコウを寄主植物として利用し近隣で生息が確認されているゴマシジミ北海道・東北亜種※4も生息している可能性が高いことがわかりました(写真3)。
ゴマシジミ北海道・東北亜種は環境省レッドリストで準絶滅危惧種に指定されており、絶滅が危惧されています。
写真2:シベチャキリガ
写真3:ゴマシジミ
※3 シベチャキリガ Perigrapha circumducta (Lederer)
北海道レッドリスト(2016):準絶滅危惧種(Nt)
北海道のみ分布する。標茶町(しべちゃちょう)で飯島一雄氏によって発見され和名はこの産地に因む。
4月下旬から6月が成虫期
※4 ゴマシジミ北海道・東北亜種 Phengaris teleius ogumae
環境省レッドリスト(2020):準絶滅危惧(NT)
北海道・東北に分布する。平地~低山地の湿原、草原などに生息。
7月下旬から9月が成虫期
今後の展開
森林は、国土の保全、水源涵養、地球温暖化の防止、生物多様性の保全、木材等の林産物供給など多面的機能を有しており、このような「生態系サービス」が人間社会に多大な恩恵をもたらしていることから「緑の自然資本」とも呼ばれております。この恩恵を未来につないでいくため、私たちユアサ木材は今回のプロジェクト達成を目指し、地域社会での自然と人間との共生による持続可能な社会の実現に貢献するため、自然資本や生物多様性に配慮した事業活動を推進していきます。
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