JARO2024年度審査状況 ゲーム・コミックなどで性的・暴力的などの広告表現への苦情が増加
公益社団法人日本広告審査機構(JARO)

◆ 総受付件数は10,796件・前年比99.3%、前年並み
◆ 苦情 業種別:不快な広告への苦情急増で、オンラインゲーム、電子書籍が上位
◆ 苦情 媒体別:インターネット上の不快な広告への苦情増
◆ 苦情対応状況 広告主への情報提供は苦情685件
◆ 「見解」発信は25件 うちインターネットが22件を占める
◆ 性的・暴力的な広告への苦情が増加
◆ 多数の苦情が寄せられるのは一部の広告主
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1 苦情受付状況
総受付件数は10,796件・前年比99.3%、前年並み


2024年度にJAROが受け付けた総数は10,796件(前年比99.3%)で、前年並みとなった。
苦情は8,450件(96.8%)、277件減とやや減少し、後述のとおり上位の業種に変化があった。称賛は28件(同147.4%)ですべてがテレビCMである。件数は少ないが、以前から良かった旨の意見が寄せられており、2017年度に「称賛」という分類項目を新設した。
照会は1,727件(同112.8%)と大きく伸び、化粧品や医薬部外品、保健機能食品などが大きく増加し、医院・病院、医療機器などの相談も増加した。
苦情の上期・下期別件数推移を見ると、2020年度以降、上期のほうが多い傾向が続いていたが、2024年度は下期(4,355件)が上期(4,095件)を上回った。
また、2024年度は性的・暴力的な表現や、見た目が不快・気持ち悪いといったインターネット上の広告に対する苦情が増加した。この傾向は、後述する業種別、媒体別のデータにも表れている。
苦情の上期・下期別件数推移を見ると、2020年度以降、上期のほうが多い傾向が続いていたが、2024年度は下期(4,355件)が上期(4,095件)を上回った。
また、2024年度は性的・暴力的な表現や、見た目が不快・気持ち悪いといったインターネット上の広告に対する苦情が増加した。この傾向は、後述する業種別、媒体別のデータにも表れている。
苦情 業種別:不快な広告への苦情急増で、オンラインゲーム、電子書籍が上位


苦情の業種別件数では、1位オンラインゲーム、2位電子書籍・ビデオ・音楽配信、3位医薬部外品という順位になった。上位2業種は表現が不快だとする苦情が多数寄せられ、それぞれ前年比162.5%、155.0%と増加した。2022年度から1位だった医薬部外品は減少した。
オンラインゲームは性的な表現や猟奇的な表現などへの苦情が増加した。そのほか、著名キャラクターへの類似性、オプトアウトしても繰り返し表示されることなどもあった。広告主別に見ると1位が184件と突出、2位は36件で、いずれも海外事業者である。
電子書籍・ビデオ・音楽配信は、406件中322件が電子コミックだった。性的な表現への苦情が215件寄せられたほか、暴力的表現が不快という苦情も見られた。

医薬部外品は2022年度から1位だったが、育毛剤やシミへの効果をうたったものなどが減少し、3位となった。美容健康商品はインターネット上の広告・表示を中心に2018年度ごろから苦情が増加し始め、コロナ下をピークに減少に転じていたが、医薬部外品についてはその後も著しく不適切な表示への苦情が続いていた。健康食品については今期、精力増強をうたう広告の性的表現に86件の苦情が寄せられ、4年ぶりに増加した。
通信販売は1社の苦情が143件を占めており、大幅な割引やポイントがもらえるなどとうたっているにもかかわらず、広告に条件が書かれていない、広告がオプトアウトできない、広告ビジュアルが不快、などさまざまな苦情が寄せられた。
詐欺と思われる事例の苦情もあり、有名メーカー製、大学との共同開発などとうたった偽物の通販が81件寄せられた。海外の事業者によるもので、商品はポケットwi-fi、スマートウォッチ、壁掛けクーラーなどさまざまで、購入すると劣悪品が届く。また、投資詐欺の苦情も46件あり、著名人の画像を使った虚偽の記事風見出しやトーク番組画像を使い、LINEの友達登録に誘引するものである。
苦情 媒体別:インターネット上の不快な広告への苦情増


苦情の媒体別上位は、前年度と変わらず、インターネット、テレビ、ラジオの順となった。インターネットは前年比107.2%と増加したが、他の媒体は減少となった。
インターネットの内訳は、①オンラインゲーム(428件、前年比222.9%)、②電子書籍・ビデオ・音楽配信(357件、155.2%)、③医薬部外品(286件、77.5%)、④医院・病院(260件、185.7%)、⑤健康食品(保健機能食品以外)(197件、129.6%)だった。内容では、不快な表現やオプトアウトなどの手法に関するものが増加した。
テレビの苦情件数は全体として前年比88.2%と減少した。内訳は、①団体(170件、126.9%)、②医薬品(111件、79.9%)、③買取・売買(107件、85.6%)、同率③加工食品(107件、102.9%)、⑤自動車(101件、112.2%)だった。前年度にオンラインゲームや買取・売買のテレビCMに苦情が多数寄せられていたが、今期は苦情が集中するCMが多くなかったため減少となった。
ラジオの内訳は、①相談業務(53件、58.9%)、②団体(26件、81.3%)、③健康食品(保健機能食品以外)(19件、475.0%)、同率③医薬品(19件、172.7%)、⑤買取・売買(16件、55.2%)だった。健康食品については特定の企業に15件寄せられた。
苦情対応状況 広告主への情報提供は苦情685件


JAROでは苦情を基にさまざまな対応を行っている。2024年度は、広告主への情報提供を11回(苦情685件)行った。会員企業については会員専用ページを通じて当該社の苦情1,562件を情報提供した。業務委員会および分科会で審議した結果である「見解」発信は25回(24社)、委員会審議を経ずに事務局から出される文書発信は11回(11社)などとなった。(見解発信の詳細は次ページ)
2 「見解」発信状況
「見解」発信は25件 うちインターネットが22件を占める

2024年度は25件の「見解」発信を行い、業種では医薬部外品8件(前年度9件)が多く、健康食品(保健機能食品以外)、化粧品など美容健康系商品が上位となった。苦情受付件数ではこれらの業種は減少傾向にあるが、著しく不適切なものは依然として苦情が寄せられている。
医院・病院は3件あった。糖尿病治療薬をダイエット目的で処方するというGLP-1ダイエットの医療機関とサイト運営事業者、医療ダイエットが12カ月0円などとうたう医療機関に対するもの。
「見解」対象の媒体はインターネットが22件を占めた。インターネットが最も多い状況は2011年度から続いている。そのほかテレビCM、ラジオの生コマーシャルが1件ずつあった。
3 2024年度のトピックス
性的・暴力的な広告への苦情が増加

性的・暴力的・猟奇的な表現については毎年苦情が寄せられるが、特に苦情の多い場合には、広告主に対し苦情件数や内容などを情報提供している。2024年度は性的な広告表現への苦情が増加したため、広告主4社(苦情件数144件)に情報提供を行い、業種として苦情の多かったオンラインゲーム、電子コミックの業界団体にも2025年4月に情報提供を行った。
705件のうちインターネット上のものが604件を占めた。業種で多かったのは、電子書籍・ビデオ・音楽配信215件(ネット上のものは210件)、オンラインゲーム97件(同89件)、医院・病院94件(92件)、健康食品(保健機能食品以外)86件(同81件)などである。
寄せられた苦情を見ると、表現が不快だというものだけでなく、子どもが見てしまうことの懸念や、子どもを含め誰でも閲覧するような場(ウェブサイトやプラットフォーム)で表示されること、非表示にしたりプラットフォームに苦情を入れてもたびたび表示されることなどの苦情も見られた。
寄せられた苦情例
▼「スマートフォンでディズニー映画について調べていたところ、性的な漫画の広告が表示された。広告主へ不適切であると伝えてほしい」(電子コミック)
▼「普通のサイトに、股間をあらわに腰を振る未成年と思われる少女の広告が出る。性加害を表現する広告を載せないようにしてもらいたい」(オンラインゲーム)
▼「子どもと見ていた動画共有サイトで、男性器増大の広告がいきなり出てきて困った。22時以降ならまだしも昼間は子どもと見ているので不適切だし教育上良くない」(クリニック)
▼「動画共有サイトで女性の裸や下着姿、男性器のイラストなどを表示する広告が出た。とても不快で不適切。小学生の娘が見てしまい動画共有サイト運営元と広告主は謝罪してほしい」(健康食品)
また、性的表現以外でも、オンラインゲームと電子コミックには恐怖感を与える表現やグロテスクな表現にも苦情が多く、広告主1社に対して情報提供を行った。苦情は「血が飛び散るシーンが気持ち悪く、怖い」「人殺しの場面を何度も見せられる」「穏やかなゲームアプリなのにグロテスク・ホラー的なゲームの広告が出てくる」「子どもが遊ぶアプリで流れるのでやめてほしい。大人が見ても気分が悪くなる」など。情報提供した時点(12月)で対象となった苦情数は121件だったが、2024年度全体で当該広告主の広告への苦情は184件に上った。
多数の苦情が寄せられるのは一部の広告主

2024年度の苦情8,450件のうち、広告主が特定できた苦情(※)は7,919件で、これを広告主別に見ると2,945事業者になる(平均2.69件/事業者)。このうち、苦情の多い広告主上位50社(全事業者の1.7%)の苦情件数は2,165件(苦情全体の27.3%)だった。上位100社(3.4%)の苦情件数は2,979件(37.6%)、上位300社(10.2%)は4,366件(55.1%)。
一方、苦情が年間1件の広告主は2,058事業者で広告主全体の約7割、苦情全体の約4分の1を占める。
非常に多くの広告主に対して苦情が寄せられるが、ごく一部の広告主に苦情が集中し、その他の多くの広告主は数件程度となっている。
※広告主が特定できないものは、広告主名が不明なもの、広告全般を指すもの、特定の業界を指すものなど。
JARO 2024年度審査状況はこちら(フルバージョンPDF)
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